フレイグラント・オーキッズ!~香蘭の乙女たち~

[学園・青春]

273

28,339

40件のファンレター

時は昭和十一年春、所は横浜の名門基督教女学校――香蘭女学校。
一年生の春野こず枝は、五年生の小野寺房子さまが級友の林鏡華さんと〈エス〉の関係――つまり、〈姉妹〉の契りを結ぼうとする現場を目撃してしまう……。
フレイグラント・オーキッズ(Fragrant Orchids)――香り高き蘭の乙女たちの物語。

※〈エス〉というのは、〈シスター(Sister)〉の頭文字で、戦前の女学校風俗の一つです。
※表紙イラスト及び登場人物のキャラクター画像は、あままつ様のフリーアイコンを使用させていただきました。

ファンレター

1話~15話まで拝読しました

戦前の女学校の雰囲気が鮮やかに、魅力たっぷりに描かれていて、読みはじめたら一気に読んでしまいました! この時代は、もう着物に袴ではなくて、洋装の制服で通学していたのですね。
創世記や出エジプト記から随所に引用されていて、それも現代では滅多に見ることのない文語訳聖書で、新鮮に感じました。(日本の教会では、今は新共同訳聖書が一番多く読まれているので)「乙女はエバの裔なれば」の回で引用されていた聖書箇所、今まで好きじゃなかったんです。歴史的に「アダムはだまされませんでしたが、女はだまされて、罪を犯してしまいました」(パウロ)とか、「男は女によって堕落したのであり、女が男に従順でなければならない」(アンブロシウス)とかの解釈がまかり通って、女性蔑視、男性の女性支配を正当化する論理として利用されてきました。20世紀以降、フェミニズム神学や女性の牧師を認める教派も出てきて、解釈も変わりつつありますが…。しかし、本作では「好奇心いっぱい」という意味で、「エバの裔」という言葉を使っています。こず枝さんの明るい魅力と合わさって、ネガティブな意味ではなく、ポジティブな意味で伝わってきます。この聖書解釈、自由で軽やかで、とっても素敵だと思いました! 好奇心って悪いものじゃない、女性の好奇心があったおかげで、技術が生まれ、文明が生まれたわけですからね。だから、「エバの末裔」という言葉は女性を貶めるために長い間使われてきたけれど、本作のおかげで、もっとポジティブに受け取ってよいのだ、とすごく感じました。
鏡華さんとこず枝さんは13歳、房子さんは17歳くらいなんでしょうか? 鏡華さんとは房子さんは年齢よりもずっと大人っぽいですね! 少女たちの口調が、とても女性らしくて、最近は女性言葉・男性言葉の区別があいまいになってきているから、こちらも新鮮に感じました! こず枝さん、まだ入学して2週間なのに、聖書箇所がしっかり頭に入っていて、すごい。
「エスの契り」というのは、キリスト教会で信徒同士が兄弟姉妹と呼び合うのとは違うのですか? 教会だと、「~さん」の代わりに普通に使います。佐々木兄弟、山田姉妹といった感じですね。ミッションスクールだから似た文化があったのでしょうか。教会に関係なく、ミッションスクールではない女学校でも「エスの契り」という文化があるのなら、フェミニズムで言うシスターフッド(女性同士の絆、連帯)に近いのかなぁと思ったのでした。
話が変わりますが、今日東京駅で、日本がワクチン無償提供したことに対し、台湾からのありがとうを伝えるメッセージ広告が大きく掲載されていました! びっくりして、間近で立ち止まってじっくり読みました^^ 日本人でも分かるように日本語で書いたメッセージもあって。台湾の人々って素敵だなぁと心から思いました!

返信(1)

わあ、mikaさん、こちらも読んで下さってありがとうございます!それも、こんなにたくさん読んでいただいて、とっても嬉しいです!(*^^*)
はい、そうなんです、当時は既に洋装の制服でした^^資料に拠りますと、大体昭和5年くらいまでには、ほとんどの女学校が洋装の制服になっていたそうです。セーラー服を着て、腰のところに校章の付いたベルトをするというスタイルが、少女たちの憧れの的でもあったそうです。当時の女学生というのは、選ばれた知的エリートであって、その証しである制服にも、深い愛着と誇りを持っていたんですね^^
「エバの裔」の解釈ですが、mikaさんに「自由で軽やかで、素敵」と言っていただいて、すっかり舞い上がっています!^^もちろん私の素人考えに過ぎないのですが、逆にエバがあの実を食べないままだったら、「楽園」生活も、ずいぶん退屈で、味気ないものだったろうなって…^^;;
でも、こういう考えは、ちゃんと聖書を勉強している方に叱られるかも?と思っていましたので、mikaさんに誉めていただいて、なんだか勇気百倍です(^^)
登場人物の年齢は、mikaさんの仰る通りです。満年齢でそのくらいの年という設定です(数え年だとそれより2歳くらい高くなるのですが)。当時の女学生は知的エリートだったこともあり、けっこう年齢以上に大人っぽいんですね。それは当時の少女雑誌の、読者投稿作品とかを読むとわかるのですが、私も資料を読みながら、レベルの高さに驚いてしまいました^^
それから〈エス〉の関係ですが、mikaさんが書いて下さった通り、その始まりは、おそらく「ミッションスクール」ということと関係があったのでしょうが、後に日本で独自の発展(?)を遂げて、ミッションスクールか否かに関係なく、また必ずしも「上級生と下級生」でもなく普遍化して、戦前の女学校風俗を代表するものとなってゆくんです。〈エス〉を主題にした小説としては、川端康成の『乙女の港』とか、吉屋信子の『花物語』などがあるのですが、そこに描かれる関係には、ちょっと秘め事めいた、疑似恋愛的な雰囲気があります。小説だけでなく、当時の少女雑誌の「身の上相談」にも、〈エス〉の悩みが多く寄せられていて、なかなか大変そうです。いつの時代も、乙女は悩み多きものなのかもしれません^^;
私が面白いと思うのは、例えば、『赤毛のアン』の、アンとダイアナの関係は、どれだけ親密であっても、恋愛的な雰囲気とは無縁ですよね。もしアンとダイアナの関係がシスターフッドだとすると、昭和初期に一世を風靡した吉屋信子の少女小説とかは、より恋愛的というか、ちょっとエロティックな匂いさえ漂うようで、明らかに異質なんですね。こういう西洋と日本の少女小説の違いみたいなものは、いつかエッセイで書いてみたいなあ、なんて思っています^^
最後に、東京駅に台湾からの広告が出ていたこと、教えて下さってありがとうございます!知りませんでした^^
もしかしたら、フェイクニュースの件などがあったので、大部分の台湾人の気持ちを正しく日本人に知ってもらいたかったのかもしれないですね。mikaさんのように、わざわざ立ち止まって、間近で読んで下さった方がいるのですから、その広告を出した台湾人もやった甲斐があったというものですね!(*^^*)