泡夢の記
お殿様と家臣がケンカしちゃったら?
そりゃもう、大変ですよ。国が滅びるような大問題。幕府にも内緒にしなくちゃ!
だけど今の徳島県では、本当にそういうことがあったのです。正義感の強過ぎるこのお殿様、果たして皆さまに共感してもらえるでしょうか?
主人公は、名前の残っていない側室の女性に。知られざる郷土史の一つです!
(主要参考文献)
笠谷和比古『主君「押込」の構造 近世大名と家臣団』講談社学術文庫
石躍胤央ほか『徳島県の歴史』山川出版社
徳島県史編さん委員会『徳島県史 第一巻』徳島県
同 『徳島県史 資料集』
三宅正浩「藩政改革の政治構造」『史林』史学研究会 2007
※書影は、Canvaで作成させて頂きました(作者の写真ではありません)。
ファンレター
まさに大河ドラマ! 堪能しました。今は熱いうねりの後の、静かな読後感に浸っています。
最初はピカレスクロマンかと思うほど、お楽さんの背後での操り方が巧妙でしたが、読み進めていくうちに本当に一途に愛する人のため突き進む女性の姿が見えてきて、お楽さんに対する思い入れが強くなりました。江戸時代のヒエラルヒーの下層にいるという設定が、彼女の泥臭さ、ハングリー精神、負けん気につながってきて、人物像を立体化していると感じています。困難に立ち向かう力強い精神を持つ彼女にハラハラさせられながらも、惹かれて行きました。
名場面は多々ありますが、私はお楽さんと殿が城を抜け出し阿波踊りに興じる場面が大好きです。狂乱に近い熱狂の中で、燃え上がる二人の魂が、飛び散る汗とともに目の前に見えるような気がしました。まさに阿波の物語。心に焼き付く、鮮やかなシーンでした。
また最後の創作日記を読ませていただきながら、今までのシーンが蘇り、「ああ、終わりなんだ」と思うとさみしくなりました。まだ夏なのに心の中に秋風が吹く思いです。人物をどうやって造形していったか、どうやって物語を正史と合わせていったかなど面白い上に勉強になりました。パズルがはまるように虚構と現実があてはまっていくくだりはまさに圧巻でした。つばめさんは歴史に埋もれた『お楽さん』に呼ばれたのかもしれませんね。
ああ、ロスになっちゃいそうです。でも、つばめさんの作品はまだまだあるから大丈夫。
私は歴史物は戦争が無いと読まない人でしたが、これを読んで歴史物の面白さを教えていただいた気がします。
これからもどんどん書いてくださいね!
返信(1)
あの阿波踊りの場面は、史実とは何の関係もないけれど、どうしても外せなかったシーンです。仰る通り、あれがあるから阿波の物語になるんですよね。「心に焼き付く」と言って頂いて、こんなにうれしいことはありません。また、確かに私はお楽に「呼ばれた」のかもしれません。歴史上の人物の声が聞こえるまで史料に向き合うことが、歴史小説の場合は必要かなと思っています。
私は不二原さんの執筆工程もすごく気になっているんですよ。プロットなしであのスケールの大きな物語を書いていらっしゃるのですか? 機会があったらぜひ創作論を展開して下さい^^。
また他の作品にもお付き合い頂けるとうれしいです!