【ブックガイド】人生は、断片的なものでできている

作者 mika

[創作論・評論]

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21件のファンレター

☆NEW!!☆アルベール・カミュ『異邦人』 #ノーベル文学賞
皆さまに、ぜひとも読んでもらいたい! と思う作品を紹介しています。
ノーベル文学賞って気になるけど、難しそう……そんな受賞作の中身もネタバレなしで解説。
現在、お題企画「戦争について考える」に参加中です。

表題は『断片的なものの社会学』(岸政彦)のオマージュです。
※表紙はAdobe StockからFranzi Drawsさまの作品を使用させていただきました。

ファンレター

ドストエフスキー『鰐』

鰐に飲み込まれたイワンの寓話。そこには進歩派インテリゲンチャが自ら鰐(=監獄と流刑地シベリア)に飛びこんでいく愚かさ、予言者ヨナのパロディー、共産主義の逆転ともとれる現象など、様々な事象を包括していると知りました。まさに鰐の腹の中のよう。でも飲む/飲まれるは鏡像になっていて……。自分には難しいので手に取ることのないような作品でしたが、mikaさんの解説がとてもわかりやすく興味深く、理解の助けになりました。mikaさん自身の思想の押しつけが無いので、ニュートラルに読み進められます。ラストの文章は考えさせられました。mikaさんの作品は、どれも本当に上質ですね……!

返信(1)

佐久田さん、お読みいただきありがとうございます! 「興味深く、理解の助け」になったと言ってもらえて、書いて良かったと思いました^^ これを機に手に取ってもらえたらうれしいです。青空文庫でも読めますよ。青空文庫では森鷗外の訳なので、言葉遣いが古めかしいですが…。
若きドストエフスキーはフーリエに共感していたので、もし若い頃にチェルヌイシェフスキーと出会っていたら、意気投合して彼の著作を絶賛したのではないか、と想像します。
チェルヌイシェフスキーの『何をなすべきか』は、当時の急進的な若者たちに「聖書」扱いされるほど流行したそうです。その作中でヒロインのヴェーラが夢見るユートピアの新ロシアは、鉄・ガラス・アルミなどで造られた巨大建築物の都市に、精神と肉体が健康な人々が生活しているんです。この未来礼賛な感じ、なんだかソ連時代のプロパガンダと似ていますよね。『何をなすべきか』はレーニンも読んで、影響を受けたそうです。チェルヌイシェフスキーが永眠する故郷サラトフに、ソ連政府が建てた立派な記念堂があります。