バイブル・スタディ・コーヒー ~スラスラ読める! 聖書入門

作者 mika

[歴史]

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バイブル・スタディの仲間たちの会話をちょっとだけ覗いてみてください。
寝ころんでスラスラ読める! 「物語」がわかれば、聖書は楽しい。
聖書を最初から最後まで読み通すのは大変です。途中でいやになってしまうことも珍しくないでしょう。
なんとなく難しそうでも、聖書のことばの向こうには、豊かな歴史と文化が広がっています。
どなたでも、実際に聖書を読んでみようというかたのお役に立てればうれしいです。


アイコンはTopeconHeroesダーヤマ様の「ダ鳥獣戯画」より使用させていただきました。

ファンレター

今回は

今回は特に重く、いろいろ考えさせられました。男子の割礼って日本ではあまり話題になりませんが、医学的にはどうなんでしょう? メリットよりもデメリットが大きいとされるからこそ、「傷害」と判断されるわけですよね?
……今、試しに「割礼」で検索してみたら、「割礼やってます」というクリニックの宣伝が入るようになってビックリ(笑)!! 日本にもあるんですね。

親の宗教を引き継ぐかどうかの問題も、難しいなと感じます。憲法で宗教の自由が保障されているぐらいだし、個人が好きにして良いと言いたいところですが、その共同体に属していればどうしても一定の責任が生じますよね。親と違う宗教を選べば、その分大変な思いをすることになるかと。
それにしても、聖書の世界でこれだけ割礼のことが取り上げられていながら、キリスト教よりも、ユダヤ教・イスラム教の伝統として重視されていったのが不思議です。
今回も勉強になりました!

返信(1)

あおぞらさん、お読みいただきありがとうございます。今回紹介した事件では、割礼を受けた4歳男児が2日後に出血を起こし、ケルン大学病院に救急搬送されたことで発覚し、「傷害」事件として医師が起訴されたそうです。医学的なメリットとしては、大人になってからの陰茎癌の発症リスクが低くなるそうですよ。新生児期に割礼を受けるユダヤ教徒が多いイスラエルでは世界で最も罹患率が低く、人口10万人あたり0.4人だそうです。罹患率が高い国では人口10万人あたり1.5~4人(全男性の10%)にもなるとのことです。

「キリスト教よりも、ユダヤ教・イスラム教の伝統として重視されていったのが不思議」というのは、わたしも思います。キリスト教徒は旧約聖書の戒律を全く守っていないですね。今回のお話で紹介したパウロの考え方が大きな影響を与えていると思います。ペテロやパウロが異邦人伝道していた時代、伝道者たちの中にはやはりユダヤ人キリスト教徒と異邦人キリスト教徒を差別する考え方があったようです。異邦人キリスト教徒に割礼を受けさせて、「ユダヤ人」と認める、という伝道者もいたことがパウロ書簡から伺えます。そうした伝道スタイルをパウロは批判し、「肉の割礼」よりも「魂の割礼」の方が大事なのだと繰り返し語っています。パウロは、「アブラムは主を信じた。主はそれを神の義と認められた」(創15:6)に着目して、アブラハムが「義」と認められたのは割礼を受ける前であることを強調しました。アブラハムはその信仰によって「義」と認められたのだから、割礼は必要不可欠ではない、と主張しています。パウロがいなければ、現代のキリスト教徒も聖書の文言通りに割礼を受けなければならなかったでしょうね。
ユダヤ教とイスラム教で割礼の戒律が守られてきたのは、ユダヤ人とアラブ人がアブラハムの肉体的な意味での子孫(イサクの子孫、イシュマエルの子孫)だからこそかなと思います。一方、異邦人キリスト教徒はアブラハムの精神的な意味での子孫である、とパウロは語っています。実際の血のつながりにこだわらないから、割礼もあくまで象徴的なもの、実際に身体に刻む必要はないという考えになるのでしょうね。

信仰継承の問題は絶対に正しい答えというのはないと思います。個人的な意見としては、割礼は子供が自己決定できる年齢まで待つべきだと考えます。
しかし、イスラエルのユダヤ教徒の家庭に生まれた子なら、長じてユダヤ教を離れるごく少数の子をのぞけば、共同体に残る圧倒的大多数の子供には利益になります。大人になってから割礼を受けると、新生児の時と比べて費用がかかります。したがって、新生児の時点で可能な将来を考えて割礼することは、功利主義的には認められるのです。
わたし個人としては、信仰は自分で選びとるものだと考えるので、子供の自己決定を尊重してほしいです。子供が成長して、自分で選択した信仰が親と同じ場合もあれば、まったく異なることもあるはずです。「家族の権利」や「共同体の権利」を優先して、そうした子供の自由な選択が奪われないでほしいと願っています。

今回の難しい話題にお付き合いいただき、ありがとうございました! 次回はアブラハム宅に御使いが訪問です。引き続きよろしくお願いいたします^^