もっと『闇の左手』~ゲセンへの秘密の扉~

[SF]

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15件のファンレター

私の戯曲『闇の左手』の、原作小説(アーシュラ・K・ル=グウィン著)を紹介するコーナーです。
詳しくは「はじめに」をお読みください。
(2023.12.13) ただいま整理中です。一時的にリンク切れなどご不便をかけますが、しばらくお待ちいただければ幸いです。

ファンレター

18-8から18-13まで

毎回とりとめもない感想すみません。

18-8 ああ、ドラマチックだなあ。未村さんの訳は芳醇ですね、二人の心の機微が伝わって来ます。でも心で会話出来るようになったその最初が、こんな忌まわしい記憶を惹起させるものなんて……。動揺するエストラヴェンと、戸惑うゲンリー・アイ。苦悩するエストラヴェンに、どうしていいかわからず困惑するアイの姿が目に浮かびます。
 個人的な事ですが、私は小さい時から、SFを読んでいると宇宙人などとの更新の時に相手の言葉がカタカナになるのが苦手でした。違和感が強いし、急に言語が幼くなったように感じて。長じてもカタカナ会話はどうしても「ワレワレハ、ウチュージンダ」的に心が読んでしまい苦笑いです。
 未村さんの翻訳では〈〉ですね。ちょっと嬉しいです。

18-9 「精神的な結合」をラポールにされていますね。なるほど! ここから数行は出版版でちょっと意味がわからなくて自分の読解力の未熟さだと思っていましたが、未村訳ですんなり腑に落ちました。出版版のいろいろな物をそぎ落としたようなかっちりした訳も好きですが、未村さんの訳は本当にわかりやすいです。出版版「バリヤーを上げる方法」を、うっかりバリヤーを張って相手の心の流入を防ぐ方法かと思っていましたが、バリヤーを上げるのは、御簾を上げるようにバリヤーをなくすって事だったんですね。
 「彼には僕のマインドスピーチの声」から最後までの訳がとても好きです。「彼の中の何かがびくっと身を縮める」とか自分もマインドスピーチを体験しているみたいです。

18-10 訳が脈動していますね。アイがパニクる場面とか、生き生きとしています。未村さん訳のアイはちょっと今どき感があってとても可愛いです。

18-11 エストラヴェンの長台詞の回ですね。(笑)ここでは会話を」で閉じることなく、再び「で始まっていますが、なかなか見ない表現なので最初??と思いました。(日本語でもそういう表記方法があるのを私が知らないだけかも知れませんが)空行が挿入されたり、改行されているので、何か意図があっての表現なのかなとわかりますし、読みやすいです。

18-12 ああ、このあたりは二人が腹を割って話し合う、交流の最後となるシーンですね。お互いにわかり合えたのに、これから二人に襲いかかる運命を考えると暗澹たる気持ちになります。

18-3 ヌナタク。この脚注の底に原作者が思い描いた世界が広がっていると思うとファンとしては感無量です。ル・グインさんが想起の元がわかるさりげない脚注はさすがお会いになっただけあります。

 ああ、この先は読むのが辛い。けど、待ち遠しいです。
 翻訳はエネルギーの必要な作業だと思います。
 何よりも健康第一。くれぐれもご無理のないように。

返信(1)

不二原さん、いつもありがとうございます! そうそう、「ワレワレハ」(笑)。原文では普通の会話と変わらない引用符"~"で、ちょっと字体を変えているようです(版によってたぶん違うけど)。それで「」と〈〉の使い分けにしました。

18-8:ラポールは原文がラポールなんですよ。私もこの語ははずかしながら今回初めて学びました。つねに体当たりなんだけど、でも普通の英和辞書に書いてあったんです(心理学専門用語辞典とかじゃなく)。
バリヤーですが、英語のbarrierには駅の改札や競馬のスタートの「ゲート」の意味もあるんですね(これも普通の英和辞典に載ってます)。カタカナ日本語の「バリア」だと、「バリアを上げる」というと「遮断壁を高くする」感じだけど、そうじゃなくて「ゲートを上げる」だから、各馬いっせいにスタート!みたいな、自動改札がガチャッと開くみたいな、つまり「遮断壁がなくなる」ほうですね。

18-11:カギカッコの後ろをつけない表記法、私が考えたんじゃなく、古めの本(日本語の)にはある方法です。閉じないかぎり同じ人の台詞だというしるしです。うまく機能しているといいのですが。
空行や改行はまったく私が独断で入れていて、これは越権行為なので心苦しいんだけど、ウェブだとどうしてももとの改行のままでは読みづらいというか、いまの読者さまには読んでもらえないですよね……。もし本にできる日が来たら、もとの改行や段落分けに戻すつもりでいます。

本当に、19章と20章を思うと、私もいまから泣けちゃいます(笑)。涙で訳せないかもしれません(笑)。
なんかかなり消耗しているのですが、なんの波及効果か、突然オリジナル小説も新しく書きはじめてしまいました。自分がどうなっているのかわかりません(笑)。お時間のあるときにそちらもお読みいただけたら嬉しいです。『ダブルダブル』です。