【ブックガイド】人生は、断片的なものでできている

作者 mika

[創作論・評論]

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21件のファンレター

☆NEW!!☆ウィリアム・フォークナー『エミリーへの薔薇』 #ノーベル文学賞
皆さまに、ぜひとも読んでもらいたい! と思う作品をネタバレなしで紹介しています。
ノーベル文学賞って気になるけど、難しそう……そんな受賞作家の作品も3000字程度で解説。
現在、お題企画「戦争について考える」に参加中です。

表題は『断片的なものの社会学』(岸政彦)のオマージュです。
※表紙はAdobe StockからFranzi Drawsさまの作品を使用させていただきました。

ファンレター

読みます!

mikaさん、こんにちは。オルハン・バムクの紹介を有り難うございます。

こんな面白くて大切なテーマを取り上げる当事者側の作家が、(西欧中心の)世界で「評価」されるなら、世の中はまだまだ希望がありますね。ノーベル文学賞、その時は関心を持ちますが、読む前に忘れてしまい、機会を失ってしまうのです。恥ずかしながら。
フランスやドイツでのイスラーム文化受容についての話は見聞きしていますが、トルコ国内でも……。
親切の強要は困りますね。日常でも。マスク警察などもそういう面があるのでしょうねえ。

有り難うございました!

返信(1)

村山さん、お忙しいなかでお読みいただきどうもありがとうございます!

わたしがパムクの『雪』を最初に読んだのは、2012年の読書会でした。
学校におけるスカーフ着用をめぐる問題というのは、フランスでは1980年代から見られるようになり、1989年に起きた「スカーフ事件」(パリ郊外の公立中学校で、フランス生まれのモロッコ系の女子生徒二人とチュニジア系の女子生徒三人が、教室でスカーフを外すことを拒否したという理由で退学処分となった事件)をきっかけに、大きな論争となったそうです。
パムクの『雪』がフランスで評価され、権威のある文学賞を受賞したのは、フランス国内でもホットであったテーマを、まさに「当事者」の視点から取り上げていたからではないか、と思います。
フランスでは公教育の場における「非宗教性」を重んじる立場から、2004年に「公教育の場における宗教的シンボルの着用・保持禁止」を定めた法律、いわゆる「スカーフ法」が施行されて、スカーフ禁止で法的な決着が着きました。
同じスカーフ論争の結果、トルコでは公共の場や教育の場でのスカーフ着用が解禁されたので、フランスとトルコでは真逆の結論に至ったわけですね。

イスラム的スカーフを女性抑圧の道具とみなす立場の人々は、家庭の中で抑圧されている女の子たちにとって、スカーフの着用を許さない学校空間というのは抑圧から解放される「避難場所」の役割を果たすと言っています。
イランのように着用を強制されている女性たちと、移民二世、三世でフランス生まれフランス育ちの若い女性たちでは、スカーフ着用に対する意味や動機づけも全く違うのではないか、とも思うところです。

村山さんから「面白くて大切なテーマ」と言っていただけて、今回の記事を書いて良かったとしみじみ思いました。
国や地域、立場によって答えが異なる、正解のない問題だと思うので、わたし自身も説明が中立的かどうか迷いながら書きました。
お時間のある時にお手に取っていただけたら、うれしいです^^ いつもどうもありがとうございます!