三奈乃の読書日記

[創作論・評論]

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53件のファンレター

わたし――南ノ三奈乃が読んで面白かったと思う本を紹介していきたいと思います。
純文学多めになるかな? ……と思っていたのですが、エンタメもマンガも……もうなんでもありになってきました!
※表紙イラスト/ノーコピーライトガール

ファンレター

あたりまえの日々の営みを支えるひと

ああ、南ノさんがこうの史代さんの作品を取り上げてくださってうれしいです(´;ω;`)
こうの史代さんの漫画、大好きです。こちらの『この世界の片隅に』も『夕凪の街 桜の国』も映画化されたときに出不精なわたしが映画館まで観に行きました。『この世界の片隅に』はアニメ、『夕凪の街~』は実写化でしたが、どちらもとても良かったです。

すずさんの夫となる周作さんとの出会い、あの子どもの頃の不思議な体験をよすがとして、おとなになった周作さんはすずさんを探し出したんですよね。その一途さに胸キュンですし、南ノさんが書かれているように「すずさん」と呼んで伴侶として大事に想っているのが伝わってきて、とてもすてきですよね。
前半はわりとほのぼのしていて、すずさんが船の絵を描いているのを憲兵に見つかってスパイ容疑で連行されるという、普通なら洒落にならないような事態も、すずさんの人柄を知っている家族からすればあの反応で(^^;)

「最も普通で平凡な人が、最も特別で尊い人に変わる」……本当にその通りで、それは、普通ではない状態を体験したひとからすれば、きっとなにより尊い存在なのですよね。
こうの史代さんは、好きな言葉としてジッドの
「私はいつも真の栄誉をかくし持つ人間を書きたいと思っている」
という言葉を挙げておられますが、どの作品も、いわゆる「名もなき人びと」の日々の営みを丁寧に描かれていて、とりわけ『この世界の片隅に』『夕凪の街 桜の国』の二作品は「戦争という理不尽な暴力が正義とされる時代に、あたりまえの日々の営みを支えて生きるひと」の姿が描き出されていて、読むひとの心を打つのだと思います。

今が戦後であって戦前ではないことを強く願うばかりです。

南ノさんのレビューを拝見して、あらためてこの作品を読み返したくなりました。すばらしいレビューを読ませていただき、ありがとうございます!(*´ω`*)

返信(1)

桐乃さん、お読みいただきありがとうございます!
佐久田さんに教えていただいて、桐乃さんが『桐一葉』の「第24話 『夕凪の街 桜の国』」でお書きになっているレビュー、読ませていただきました。
桐乃さんのレビュー、本当に素晴らしいです‼
桐乃さんが紹介して下さっている「だれかに『死ねばいい』と思われたということ。そう思われたのに生き延びたこと。そして、そう思われても仕方のない人間に自分がなってしまったこと」という言葉、本当にすごいですよね!
こうの史代さんは非常に研ぎ澄まされた言葉を書かれる方だと、『この世界の片隅に』の方でも、何度も溜息をつきながら思いました。でも絵柄は、桐乃さんが仰る通り「戦争ものと聞いて想像されるより、きっとずっと遥かに、ほんわかしたやわらかな絵柄」なんですよね。戦争の本質を抉るような鋭い言葉とやわらかな絵の融合が他に類を見ない、見事な化学変化を起こしていると感じます!

こうの史代さんがお好きだというジッドの言葉も、教えて下さってありがとうございます!「私はいつも真の栄誉をかくし持つ人間を書きたいと思っている」…尊い言葉であり、こうの史代さんの創作姿勢にそのままつながるものだと感じました。

桐乃さんがレターの中で触れて下さった、『この世界の片隅に』の、本編前のプロローグ的な一篇「冬の記憶」。小学校時代のすずが本当にかわいらしくて…。
周作との出会いが、人さらいの籠の中という…(笑)しかも、人さらいの正体が魔物?!…恐ろしさとユーモアの混じったファンタジーが、本当に素敵ですよね。(しかも、あのプロローグがラストにもつながっていくということにびっくりしました!)
北杜夫の『どくとるマンボウ追想記』によると、昭和初期、大人たちはよく子供に「暗くなっても外で遊んでいると、人さらいに連れていかれるぞ!」と言ったそうですが、当時の子供が思い描く人さらいのイメージとは、正にこうの史代さんが描いたような、背中に大きな籠を背負ったイメージだったらしいです。「わたしはよく人からぼうっとしていると言われるので あの日のこともきっと昼間の夢だと思うのだ」というすずのモノローグの後、でも、のりが一枚足りなかったというオチがつきますが、すずは恐ろしい現実を、やわらかいファンタジーに変えてしまう「眼」を持っているのかな、と感じました。外からくるファンタジーではなく、すずの内側から生まれるファンタジーのような…。

実は『この世界の片隅に』を読み終わった時、次に読むのは『夕凪の街 桜の国』だと決めていました。『家守綺譚』もすっごく楽しみです!
この二冊を読み終わったら、また桐乃さんと読後感を共有させていただきたいです。
本当にありがとうございます♪♪(*^^*)