白いスープと死者の街

作者 主道 学

[ホラー]

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 あれは小学校5年生の夏の時だった。
 暑い日差しの中。
 裏の畑で友達とできの悪いスイカたちとスイカ割りをしていた。
 海を知っている。
 でも、僕たちは行った時はなかった。
 大きな入道雲。潮の匂い。地平線まで続く大海原。想像はするけれど、ここは山に囲まれた小さい町。御三増町。
「右。左。もうちょっと左。あ、そこだ」
 目隠しをして、棒切れを持った僕は友達の篠原君の言葉を頼りに、数十歩先のスイカを見事に一振りで割った。
 スイカはパカリと割れて、中の真っ赤な実と種が辺りに散乱した。
 スイカの匂いが強くなって、同時に緑の匂いと日差しの蒸し暑さが漂った。
「篠原君はいいね。篠原君の声を聞いていると、スイカのところへ簡単に行けるよ」
 篠原君はタイガースの帽子を目深にかぶって、「当たり前だよ」と言った。
「篠原君。こっちもお願い」
 藤堂君も目隠しをして、棒切れを構え。蒸し暑いスイカの匂いで嗅覚が駄目になる場所で、右へ三回クルクルと回る。
「もっと右」
「そっちは反対」

 裏の畑で不可解な事件に巻き込まれた石井 歩は、子供たちのため事件調査に乗り出した。
 やがて、世にも恐ろしい町ぐるみの人間の闇と対峙することになる。

ファンレター

歩くんの思考の軌跡。

はじめまして。成瀬川るるせと言います。『白いスープと雲の街』、「28話 大根」まで読みました。歩が最初と比べてストーリーが進むと思考を重ねていくところが、一種のビルドゥングスか子供からの通過儀礼でもがいているかのように感じ、好感が持てました(ただし、これが叙述トリックだったら言ってること的外れになってしまいますが)。続きが気になって、楽しいです! 作品の田舎風味が良いですよね。これからも頑張って! あ、大根の味噌汁が飲みたくなってきた(笑)。

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