バイブル・スタディ・コーヒー ~スラスラ読める! 聖書入門

作者 mika

[歴史]

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バイブル・スタディの仲間たちの会話をちょっとだけ覗いてみてください。
寝ころんでスラスラ読める! 「物語」がわかれば、聖書は楽しい。
聖書を最初から最後まで読み通すのは大変です。途中でいやになってしまうことも珍しくないでしょう。
なんとなく難しそうでも、聖書のことばの向こうには、豊かな歴史と文化が広がっています。
どなたでも、実際に聖書を読んでみようというかたのお役に立てればうれしいです。


アイコンはTopeconHeroesダーヤマ様の「ダ鳥獣戯画」より使用させていただきました。

ファンレター

創世記26章 イサク、ゲラルへ行く/井戸をめぐる争い

この連載を拝読していくうちに、当時の「井戸」の重要さがよくわかりました。井戸がそこに住む人々の生死の鍵を握り、井戸を掘りあてることは繁栄のいしずえであり、それを奪ったり奪われたりすることは争いの種となり、大きな憎しみを生む結果にもなるんですね。
「21章で、アブラハムはアビメレクの部下が井戸を奪ったことで、アビメレクを責めた。一方イサクは、ゲラルの羊飼いが井戸を奪ったことについて、アビメレクを責めなかった。」mikaさんのこの言葉に深く考えさせられました。イサクがアビメレクを許したということの重さは、この連載をここまで読んできて初めてわかる気がします。アブラハムでさえ責めずにいられなかったのに、イサクはそうしなかったんですね…。
西洋社会は東洋より契約社会、法律社会だと言われますが、契約の重要さ――それをたがえたらどうなるのかということを聖書が繰り返し語っていることが基になっているのがよくわかります。神との契約という「絶対性」を支えるのが「一神教」なのだとも感じました。日本みたいに八百万の神がいると、神との契約(あるいは約束)も「相対的」、あるいは「個別的」になってしまい、結果、なんとなくどっちつかずの「曖昧な」社会が近代まで続いたのかなあとも思いました。
大変興味深いお話、ありがとうございます!続きが楽しみです~(*^^*)

返信(1)

南ノさん、お忙しい中いつもお読みいただきありがとうございます。
今回のお話では、古代社会における井戸をめぐる争いの一端を知ることができますね。おっしゃる通り、せっかく掘り当てた井戸を奪われたら、憎しみを生み、民族間の争いの火種となってしまいます。
考古学的発見によれば、紀元前3100年頃、古代メソポタミアの都市国家ラガシュとウンマの間で、水をめぐって激しい戦争が現実に行われていたそうです。
最初はラガシュが戦いに勝って条約が結ばれ、両国の境に用水路を掘ってユーフラテス川の水を引きました。しかしウンマ軍が条約を守らずラガシュに攻め入り、以後150年間にわたって国境線と水をめぐる争いが続いたと言われています。

ゲラルの羊飼いたちが井戸を奪ったとき、イサクが奪い返すために武器を取って戦っていたら、互いに命を落とす者が出たと思います。もし奪い返すのに成功したとしても、ペリシテ人からますます憎まれ、イサクたちは常に報復を警戒しなければならないでしょう。ラガシュとウンマの戦争のように、二つの民族の間の長く続く争いに発展していたかもしれません。
しかし、イサクは自分から退くことで、そのような争いを避けたと言えます。アビメレクが再び友好を申し出たとき、その申し出を拒絶し、一行を追い返す選択もできたはずですが、イサクはそうしませんでした。彼らの訪問を受け入れて歓待し、再び友好の誓い結んで、送り出しました。
井戸を奪われたことについて、イサクがアビメレクを責めなかったのは、アビメレクとの争いを避けるためだと思いますが、現代の紛争においても、憎しみの感情を抑えて和平条約を結ぶというのは、とても難しいことですよね。

聖書では「契約を結ぶ」という表現が繰り返し用いられています。おっしゃる通り、神との契約は絶対的なもの、永遠に続くものです。一方で、人間同士の契約は今回のお話のように、どちらかの都合で一方的に破られてしまうことが記されています。近年の国際紛争を見ますと、長い交渉の末に和平協定が結ばれても、永遠に維持されるなんてことはなく、勝手な都合で破られてしまい、再び武力衝突に陥ってしまいます。人と人との契約は破られてしまうもの、というのは聖書の時代から変わらない、人間の弱さであるなと感じますね。

柳田国男は、古代の日本で行われていた人身供犠や動物供犠は、聖書のような神との契約という意味を持たない儀礼だと言っているそうです。現在でも、日頃から「寄進」や「奉納」と呼ばれる儀礼が行われていますが、神との契約でなければ、一体何の意味があるのか、疑問に思いました。神と人との相互関係ではなく、人間からの一方的なお願いなのでしょうか…? 日本の文化との違いも興味があるところなので、これは引き続き調べてみたいと思います^^