奇譚草紙

[ファンタジー]

176

32,278

50件のファンレター

奇譚――奇妙な味の短篇、あるいは変てこな短い物語を、ほろほろと書いてみようと思います。

※不定期連載です。

ファンレター

白熊

夢を占う白熊の物語、とても楽しく読みました^^ 北極の氷が溶けて流浪の民になった存在は、ユダヤの民と重なり、切なく思いました。
後半はあっと驚く展開で、びっくりです! 巨大魚にのみこまれたヨナの話を思い出しました。ドストエフスキーの『鰐』には、鰐の腹中で優雅にくつろいでいる男が描かれます。この鰐の腹は、監獄と流刑の寓意だと言われています。本作の「わたし」は白熊に包まれてやすらぎを感じているのですね。「千の夢を見る」という美しいフレーズが心に残ります。最初と最後に描かれる白山吹の花も、想像してうっとりしました。山吹は黄色のイメージでしたが、白もあるのですね。
あおぞらさんのレターを読んで、「母体回帰願望」という解釈もあるのだな、なるほどと思いました。『鰐』だと、母体回帰願望という読み解きは見たことないです。流刑やヨナのほかには、クロノス神(我が子を次々とのみこんだ)と結びつける解釈があります。本作では、「わたし」が夢の世界でいやされ、再び外の世界にもどるだろうという希望が感じられます。疑似的な死と復活によって現実世界で生きる力を得る、ペルセポネの神話と通じるように思いました。
また、前回のお返事で開高健と老舎のエピソードを教えてくださり、ありがとうございます! 

返信(1)

mikaさん、ご丁寧に読んで下さって本当にありがとうございます(*^^*)
そうなんです、白山吹ってあるんです。一重の山吹と形状が似ているからそう呼ばれるそうなのですが、実際には属の異なる花です。また花弁も、山吹が五弁なのに対し、白山吹の花弁は一枚少ない四枚で、しかも花の形状が山吹よりもやや筒状のため、色の白さも手伝って控えめな、かわいい印象を与える花です。一般に黄色の山吹は、一重ではなく八重のイメージが強いですよね。そういう意味でも、同じ山吹という名称でありながら、両者の見た目や雰囲気は実はかなり違うと言えます^^
なるほど、ドストエフスキーの『鰐』では、鰐の腹中がドストエフスキー自身の経験に基づいた寓意と解釈されているということなのでしょうか。
「母胎回帰願望」というのは、これはわたしの根拠のない感想ですが、どうも日本人男性作家に顕著な特徴なのかな…なんて(笑)
ザクロを食べる代わりに、台北のコーヒーを飲ませてもらって悦に入っている「わたし」が、ペルセポネの神話と「通じる」ものがあるなんて聞いたら、ひっくり返りそうですが(笑)、改めてmikaさんが常に多元的な視点で物事を見ていらっしゃるのを感じました。いつもお心のこもった応援をいただき、感謝の気持ちでいっぱいです。