ファンレター
見事なほど良く出来上がっているな、としかまずは感想が出てきませんでした。
卵から出て成虫になるまでの毛虫の生態を、その食欲、そして天敵への恐れ、生まれついて体内に刻まれた「本能」、それらを巧妙に織り交ぜて充分なほどの描写力で表現しきっているなと感心してしまいました。すごいです。
虫や魚、爬虫類、そして両生類、あるいはもっと小さな粘菌などは、どうやってその「生き方」を知るんだろうか、というのはぼく自身も疑問に感じる部分です。
人間なんぞは社会という周囲からの刺激により「学習」し生き方を模索する生き物なので不自然さの極みのような存在だとは思うのですが、哺乳類や鳥類が「親」から「子」に向けて「生き方」が伝承されていくのとは違い、それ以外の動物は卵から目覚めた瞬間には既に孤独であり、誰も教えたわけではないのにきちんと生き方を知っている。
生命の、もっと言ってしまえばDNAという生命の設計図のうちにあらかじめ組み込まれたプログラムに従順に生き、そして世界の命を循環させていくというその自然のことわりの中に巧みに順応した「生」は美しく、ある意味ではそれこそが完璧な存在なのではないかとさえ思えてきます。
この物語で毛虫が「空」を本能的に恐れ、同時に「空」に憧れる部分には、そのような生命の神秘への探求が滲み出ているように感じました。
ラスト。
結局「翅」ってなんだったのでしょうか、というのが気になって仕方ありません。
最初はトンボを連想したのですが、トンボが毛虫を食べるイメージはなく、アリは「翅」とは表現しなさそうで……あ、ハチですかね? ハチ。
正解ください。
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