いのちはつらいよ

作者 TamTam2021

[社会・思想]

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1件のファンレター

いのちは尊いなどと決まり文句のように言われますが、いのちはつらい、と思いませんか。
生老病死などと言われますが生きてゆくことは基本的に「苦」であるのではないでしょうか。
最新の自殺者の統計から今のこの国の何が分かるのか。今少し嵌っている寅さんの映画と絡めて考えてみました。

ファンレター

静かに笑ってしまおう、寅さんみたいに

『いのちはつらいよ』読ませて頂きました。自殺する年齢層が50代、次いで80代が多く、健康問題が一番多いとは本当に意外な結果で驚いています。私はここまで追い詰められた気持ちになったことがないので想像するしかないのですが、生きていることは辛く悲しいことが多いと思います。日々の暮らしの中でふと、何だかもう嫌だ、消えてしまえたらどんなに楽かな、朝が来なけれればいいのに…と思うことがあります。実際に死ぬ勇気もそんな覚悟もないのですが…。確かに健康面で不安になり、痛みや長く患っている箇所があると、この身体で生きて行けるのだろうか?と不安に襲われ、気持ちも沈みます。50代の健康面、仕事の重圧、責任、人間関係。加えて家庭の問題。何となく想像出来ます。高校生は進路がいよいよ現実味帯びてきて、社会に出る一歩手前。明るい未来が待っているようには思えない。大人になりたくないな…でも学校で勉強するのも、人間関係も辛いんだよ。進むも留まるもしんどいな。という気持ちでしょうか。
『男はつらいよ』の登場人物の心情は、実に良く描かれています。これだけ長く国民から愛される作品はあまりないでしょう。古き良き昭和をぎゅっと凝縮させた歴史の記録でもあります。寅さんは不器用に生きて世の中から少しだけはみ出して生きています。飄々と風の向くまま、気の向くままに生きているように見えますね。でもテーマソングの歌詞にもあるように、自分の生き方は誇れるものではなく、周りに迷惑をかけている後ろめたさは感じているのですね。たまにヒロインの方から好意を寄せられますが、急に真顔になり自ら離れてしまいます。そして静かに笑って、また旅の空に去って行く…背中に悲しみを隠して。そんな不器用に生きる寅さんに自分の姿を重ね、生きるささやかな喜びと切なさを共有する所に、この作品が愛される理由を感じました。
今は誰もが知っている偉人、宮沢賢治や石川啄木も生前は世の中の流れから少しだけはみ出し、不器用に生きた人達だと思います。そういった人生の悲しみを知る、深く潜って生きた人達の生み出す作品は普遍性があり、長く愛され、読まれていると思います。寅さんと同じ枠で括ることは出来ませんが、どことなく共通しているような気がします。寅さん風に言うと、「いのちはつらいよ、でもな、せっかく受けたこの命、自ら絶っちゃあ、おしめぇよ。静かに笑ってしまおうよ…」まとまりのないお便り、長々と失礼しました。

返信(1)

お便り、ありがとうございました。今更のように思うのですが生きてゆくこととは、人生とは何なのかとふと思います。あっという間に過ぎ去ってしまった何十年という日々を思うとあまりにも儚いような気がします。そして、あっという間に老いてしまった自分を見出す。しかし、それでも日々の不安や葛藤、愛憎、さまざまな義務は絶えず続いています。これらから逃れるためにはやはり彼岸に逝くしかないのだろうと思います。別に自殺願望はありませんが、自殺統計を見ているといろいろなことを考えさせられます。寅さんは何度見ても楽しく、人間の哀しさが上手く描かれていてやはり傑作だと思います。その時代の空気をとても見事に写し取っていると感心させられます。誰でも寅さんのように自由に孤独に放浪する旅の人生を送りたいと憧れていると思います。そこに松尾芭蕉の精神を見て取るのは考えすぎでしょうか。