酒井七馬と手塚治虫

[歴史]

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 昭和二十年。終戦直後の日本、大阪。
 大阪大空襲の焼け跡も生々しいその場所に、一人の漫画家が立っていた。
 酒井七馬。
 戦前の大阪漫画界で活躍していたその男は、敗戦のショックに打ちひしがれていた日本人を見て決意する。
 自分の漫画を用いて、そしていずれはディズニーにも劣らないアニメーションを作って、人々を笑顔にしてみせる。
 七馬は大阪で活動を開始する。
 漫画を描き、雑誌を作り、後進を育て――
 そんな七馬の前にひとりの青年が登場した。

「僕の描いた漫画を読んでほしいと思って、ここまで来たんです。僕、手塚といいます」

 それは日本漫画史に残る巨人、『漫画の神様』手塚治虫の若き日の姿であった。



(この物語は、史実をもとにしたフィクションです)

ファンレター

素晴らしい骨太小説でした

拙生の『骨太未満』にも書かせていただきましたが、前半は手塚治虫の希有な才能に出会った感動や期待に心を震わせた一方で、後半は酒井七馬の悲愁に深く飲み込まれました。激動の昭和史とよく言われますが、当にその変化をリアルに感じさせてくれる作品でした。

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