【ブックガイド】人生は、断片的なものでできている

作者 mika

[創作論・評論]

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ファンレター

『太陽の男たち』『ハイファに戻って』

こういうブックレビューは、mikaさんの独壇場ですね!この「NOVELDAYS」に既に確固たる地位を築いている気がします^^
1960年代から1970年代、日本では高度経済成長が謳歌されていく時代に、世界の中には、「書くこと、表現すること」に命を懸けなければならない作家がいたんですね。mikaさんの作品を読んでいると、本当にこの世界の広さと深さを感じます^^
そうだったんですか、「抵抗文学」という言葉は、カナファーニーによって生み出されたんですね!文学が抵抗の手段になるというのは、例えば台湾でも、日本統治時代に台湾人作家が書いた作品を日本の殖民地支配に対する「抵抗文学」として捉える「読み」があります。日本人にとって、こうした台湾の「抵抗文学」を読むのはけっこう重いものがありますが、戦前をノスタルジーのみで捉えてはいけないことや、文学と政治を切り離したものとして考えることはできないなど、多元的な視点を与えてくれるような気もします^^
mikaさんの文章の中で、カナファーニーが提出した問題は「今なお、生々しく●を流して」いるというラストの一行が特に刺さりました。傷つけられ、奪われた人たちの痛みや傷は決して癒えていない。そのことを見事に表した言葉だと思いました。
すばらしいブックレビューを読ませていただき、ありがとうございました!(*^^*)

返信(1)

南ノさん、お読みいただきありがとうございます! 「世界の中には、「書くこと、表現すること」に命を懸けなければならない作家がいた」と感じてもらえて、書いて良かったと報われる思いです。わたしが最初にこの作品と出会ったのは、2017年でした。今年5月の空爆による現地の被害状況に衝撃を受け、悲しみの中で、カナファーニーについて書きたいと思いました。読み返すのも勇気がいる逸話ばかりでした…。
レバノンの『デイリー・スター』紙に掲載されたカナファーニの追悼記事には、次のように書かれていました。「彼は銃を発砲したことのない兵士であり、その武器はボールペンであり、彼の戦場は新聞のページであった」。

「抵抗文学」というジャンル(文学用語)は、カナファーニーのおかげで1960年代に登場したと、ロシア語の解説に書いてありました。カナファーニーは「占領下のパレスチナにおける抵抗の文学」と題して、1948年から1966年までの文芸批評を発表しているんです。さらに追記したものを1968年にもう一度発表しています。抵抗文学と言えば、アメリカの奴隷解放やヴェトナム戦争、イラン革命、ブラック・フェミニズムなどが代表的ですね。南ノさんがおっしゃる通り、「日本統治時代の台湾人作家」の作品も、たしかに日本の殖民地支配に対する抵抗文学に位置づけることが出来ますね。南ノさんがこれは!と思う作家や作品がありましたら、ぜひ台湾日記でご紹介いただきたいです^^

ラストの一行をどう表現するか、書いていて迷いました。「生々しく息づいて」とするか、もっと直接的な表現にするか…。今回、思い切って空爆のことに言及したので、あの表現になりました。ガザ地区は長年、「全体が大きな刑務所」だと言われています。2008年から封鎖がいっそう厳しくなり、2014年の軍事侵攻では2千人以上が殺され、15000戸以上の建物が破壊されたのだとか。ハマースやイスラミック・ジハードは、「抵抗の意志」を見せつけるためにロケット弾を撃っているのだと思いますが、ロケット弾を撃てばイスラエル軍は必ずガザ地区を攻撃します。ロケット弾を撃つことで、同胞であるアラブ・パレスチナ人により多くの犠牲が出ることは彼らだって分かっているはずなのに、何でこんなことをするのだろう…と思わずにはいられません。
だからこそ、ペンを武器にして、紙面を戦場にして戦ったカナファーニーが、もっと長生きしてくれていたらと思います。日本赤軍が起こしたロッド空港無差別テロ事件も、なぜこんなことを…と問わずにいられないです。この事件がなければ、カナファーニーが報復で暗殺されることもなかったのでは、と考えてしまいます。