手紙

作者 谷澤 頼

[現代ドラマ・社会派]

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感染症の流行でロックダウンされた町に住む大学一年の主人公が、手紙と友達を見つける話
※カクヨムにも投稿している作品です

ファンレター

いい話だ! と、目頭がうるっとなりました。

 時事ネタをうまく絡ませた話。
 今の社会の有様もこのまま発展したら、この物語の世界のようになるのかもしれないと思わずにはいられないような納得感がありました。
 いや、1人1人の行動をこのように管理されてでも、パンデミックに喘ぐ現実世界がどうにかならないものなのかという思いや願いがぼくの中にあり、そういった気持ちの部分が物語と重なったのかもしれません。

 手紙という、デジタル化された世界の裏側にあるようなアナログアイテムの使い方が巧みだと感じます。
 作中にある「趣味とかなんにも繋がりの無い君とこうやって話せるのめっちゃワクワクする」という社会人さんの気持ちは個人的にとても共感する部分で、読みながらうんうんと頷きました。作品の趣旨とは少しずれますが、ぼくもSNSを使っていて、その1つにおいては基本的に面識のまったくない人たちとの繋がりが主になっています。
 相手の日常が、あるいは自分の日常が匿名の仮面を被って垂れ流されている世界で、時には反応し、反応を返されるだけという緩い繋がりが現実の人間関係とはまた異なる心地よさだったりするのですよね。
 いや、ぼく自身もまた寂しい人間なのかもしれませんが。

 また、「出かけないわけがない。絶対に振り替えたりするもんか。早くあの手紙が読みたい。」が何度も繰り返される部分、物語の後半で「!」と言葉にならない記号を脳裏に立てました。「なるほど!」です。
 外出時間を振り替えるという行為そのものが見事な伏線になっていることに驚きました。
 そして、気持ちの良いラスト!

 大変面白かったです。

 現実に今あるこのパンデミックも、1日でも早く終息して日常を、1年前には確かにあったはずの「あの日常」が取り戻せるようにと願ってやみません。

返信(1)

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
実はこのお話を数カ所に投稿しているのですが、このように感想の言葉を頂いたのは初めてで、読んだ時は嬉しさから脱力してしまいました…
僕の“手紙”を見つけて下さって、そして読んで下さって、本当にありがとうございます。
パンデミックが終息することを、僕も願っています。