願いを纏って

作者 mika

[現代ドラマ・社会派]

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4件のファンレター

着方教室の新しい生徒、菫さんはなぜかいつも不機嫌そう。
彼女が持ってくる着物や帯には、ある違和感があって……。

お題「ツンデレ」はコミュニケーションの下手な性格と解釈しています

※表紙はAdobe Stockから二本杉さまの作品を使用させていただきました。

ファンレター

大人の小説

私はmikaさんのコラムやエッセイだけでなく、小説もとても好きです。久しぶりにmikaさんの物語を読ませていただき、幸せな気分になりました(*^^*)
以前に拝読した小説は2000字という縛りがあったため、かなり削られている部分があったと思うのですが、今回は5000字ということで、登場人物のしぐさや表情など、繊細な細部をたっぷり味わうことができました^^
着方教室の先生である「わたし」という語り手の設定には、単に「和服を着た人を描写する」のとは全然違って、和服に関する深い知識が必要なことは言うまでもありませんが、「自分で着る」のと「他人に着方を教える」ことの間にも天地の開きがありますよね!mikaさんは、もしなさろうと思えば、主人公の「わたし」のようなお仕事ができる方なんだ、ということが読んでいてよくわかる作品でした^^
それにしても、和服に関する用語というのは、眺めているだけでも美しいですね^^ そうした単語が散りばめられた端正な文章の中に、和服に関する蘊蓄と菫さんの人生が美しい柄のように織られていく感じがしました。
「わたし」が「〇〇〇の柄」の意味を教えることによって、さりげなく菫さんの背中を押してあげる。ラストの、藤の名所として知られる〇〇天神に立つ菫さんの姿――藤の季節ではないですが、藤紫色の和服に身を包んだその姿が、美しい藤の花房のように見えました。第2話のタイトルが「〇〇を〇う」で、メインタイトルが「〇〇を〇って」と微妙な違いがあるところも印象的でした。メインタイトルの方は、物語の結末が開いて、そこから新しい物語が始まっていく明るい予感を感じさせますね。
大人の小説という感じの素敵な物語を読ませていただきました。ありがとうございます。

追伸:前のレターで台湾のコロナ状況に対してご心配いただきましてありがとうございます。ここ何日も、毎日6万人単位で感染者が出るという状況が続いており、私の仕事もリモートになっています。それでもやはり家の中にばかり閉じこもってもいられませんので、気を引き締めて感染対策をしていきたいと思っています。mikaさんもくれぐれもご自愛下さいませ^^

返信(1)

南ノさん、お忙しいなかでお読みいただき、どうもありがとうございます!
「菫さんの人生が美しい柄のように織られていく」と感じていただけて、とてもうれしく思います。
菫さんを「美しい藤の花房のよう」とたとえてくださり、南ノさんの素敵なお言葉に胸がいっぱいになりました^^

ラストはおっしゃるとおり、藤の名所として有名なところで、くず餅の船橋屋本店がすぐ近くにあります。夏に行くと、かき氷がとってもおいしいですよ。境内では道真公の正室である宣来子さんを祀った、かわいいお社もありますよ。

銘仙の羽織はモデルがあり、わたしの父方の祖母の遺品にあったものです。7年ほど前に見つけて以来、わたしの大切な愛用の品です^^
銘仙と言えば、戦前のアンティーク着物のイメージですが、現在でも秩父では新作の銘仙反物を織っている機屋が、数は少ないですけれど、残っているんです。
そんな秩父の織元さんにお会いするご縁があり、祖母の銘仙の羽織を着ていったところ、いわれを教えてもらいました。そのときの織元さんの言葉が心に残り、今回の作品につながっています。
結婚式や成人式などの礼装の着物ばかりになり、日常着・街着としての着物が廃れてしまった現代では、銘仙はいつ消滅してもおかしくない存在です。個人的には、銘仙独特の光沢感と軽さが好きなので、どうか長く残ってほしいです。

また、メインタイトルと小題の違いにも気づいてもらえて、すみずみまで丁寧に読んでくださったこと、ほんとうにありがたく思います。
自信を失っていた女性が、自分に自信を取り戻していく過程を描けたらな、と思っていました。
タイトルから「新しい物語が始まっていく明るい予感」を感じていただけた、というお言葉がうれしく、しみじみとかみしめております^^

南ノさんのおっしゃるとおり、着物に関する言葉って美しいですよね。着物や帯の縁起柄は、語呂合わせや洒落が多くて、大昔の日本人の遊び心を感じるとともに、身の回りの品に祈りや願いをこめるという文化が素敵だな、と感じます。
着物をふだん着で着るひとが極端に少なくなった今では、季節の柄や縁起柄を着るのも、ひとに見せるためというよりは、自己満足だなと思うのです。
自分へのエール、自分だけのひそやかな楽しみとして、柄を纏う文化が若い世代にも継承されていけばいいな、と思います。
やさしく背中を押してくださる、素敵なお言葉を寄せていただき、心から感謝です!