【ブックガイド】人生は、断片的なものでできている

作者 mika

[創作論・評論]

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21件のファンレター

☆NEW!!☆ウィリアム・フォークナー『エミリーへの薔薇』 #ノーベル文学賞
皆さまに、ぜひとも読んでもらいたい! と思う作品をネタバレなしで紹介しています。
ノーベル文学賞って気になるけど、難しそう……そんな受賞作家の作品も3000字程度で解説。
現在、お題企画「戦争について考える」に参加中です。

表題は『断片的なものの社会学』(岸政彦)のオマージュです。
※表紙はAdobe StockからFranzi Drawsさまの作品を使用させていただきました。

ファンレター

狭間の苦悩

mikaさん、こんにちは。アンドレイ・クルコフに関する二編を拝読しました。

ウクライナの言語・文化が「ロシア」とスッキリ分けられるものではないだけに、
狭間で苦悩する人々は多いでしょうね。そして子どもたちへの影響も確かに心配です。

また、おじいちゃんを殺した国の言葉、として英語を拒絶することができない我が国を思います。
さすがに母語ではない人が多いので、苦しみが違うのでしょうが。

ウクライナ以外の場所でも、内政問題として干渉されない地域も含め、似た出来事は多々あります。
いずれにしても苦しんでいるのは民衆、その民衆こそが国家の基盤、というのは古来変わらないはずなのですが……。

液晶画面を見ながら悩むことのできる自分の幸せを嚙みしめつつ
有り難うございました。

返信(1)

村山さん、お忙しいところ、二編もお読みいただき、ありがとうございます。
「おじいちゃんを殺した国の言葉、として英語を拒絶することができない我が国」という村山さんのお言葉が、胸に刺さりました。
確かにそうですね。日本の戦後英語教育史によれば、戦中の「鬼畜米英」からは信じられない「英語ブーム」が敗戦直後(占領期)に起こったそうです。『日米会話手帳』(1945年)が360万部売れ、NHK「英語会話」(1946年-1951年)が「カムカム英語」の愛称で国民的番組となったというのも、よく考えたら驚きです。このラジオ講座はちょうど今の朝ドラの題材として取り上げられていますね。
祖父や父が米兵に殺された、祖母や母が無差別爆撃で殺された、という戦後の子供たちが日本中に数多くいたはずですよね。その子たちは、一体どのような気持ちで英語教育を受けていたのだろうか、と考え込んでしまいました。

もし占領下の日本で、天皇制が廃止され、日本語の使用が禁じられ、英語だけを強制されていたら、占領軍の言語に対する反発がもっと強まったのかもしれない、と想像します。もしそうだったら、独立後は歴史教育を通じてアメリカへの憎悪をより長引かせたのではないか、と思います。
戦時中、わたしの母方の祖父はソ連軍侵攻のあった戦地にいたそうで、辛くも生き延びたという話を聞きました。子供の頃に聞いた話なので、北方のどこにいたのか詳しいことは分からないのですが…。もしその時、祖父が戦死したりシベリア抑留になっていたら、子供の頃に聞くお話も全く違ったものになっていただろうし、今のようにロシア文化が好きになって、ロシア語を学んでいたかどうか分からないな、と思います。

考えさせられるレターをどうもありがとうございます。