【戯曲】闇の左手(ル=グウィン原作/オリジナル訳に基づく二人芝居)

[SF]

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宇宙のさいはて、極寒の惑星。スパイとみなされた地球からの使節は、ただ一人の理解者である現地人の宰相と、大氷原を横切って決死の逃避行を試みる。雪と氷に閉ざされた死の世界で二人を待ち受けるものとは……。
日本では『ゲド戦記』の原作者として知られるル=グウィンの、真の代表作『闇の左手』。その壮大な物語を、かぎりなくストイックな表現で二人芝居の朗読劇にしました。
未村明によるオリジナルの翻訳に基づいています。勝手な二次創作ではなく、正式に原作者の許可を得ています。生前に台本をお見せしたら、大変喜んでくださいました。
(人形は園英俊(そのひでとし)氏の作品です。)

(ここから小声)じつは、原作小説の既存の日本語訳には、訳し間違いが多々あります。少なくとも、固有名詞の発音は私の訳のほうが「正しい」です。ル=グウィンさんに(生前)直接お会いしてお訊きしました。ご本人による朗読テープも私は持っていて(残念ながら絶版)、随時確認しています。
例1.主人公二人のうち一人の名前は、「エストラヴェン」です。冒頭の「エ」にアクセントがあります。(ハ●カワ訳のように「えすとらーべん」ではありません。)
例2.もう一人の主人公ゲンリーの所属する惑星同盟の名前は、「エキュメン」です。同じく冒頭の「エ」にアクセントがあります。(ハ●カワ訳のように「えくーめん」ではありません。)
さらに詳しい話は別編「もっと『闇の左手』」をご覧ください。

ファンレター

読了

 同胞との握手のシーンが印象的でした。ぐーっとここで胸にこみ上げるものを感じました。原作では同胞とのふれあいはさらりと描かれていて見落としていましたが、台詞で語られることによって触れるっていうことの意味の大きさを感じ、あえて触れなかった、触れないことによって深く結ばれていた魂を再認識しました。最後の最後に、冷たくつきはなすセレム様が……。(ゲンリー、ショック受けてる場合じゃ無いよ、気がつけよぉ~涙、でも思うツボにはまってあげるのも結果的には愛かも)
 最後のシーン、原作では描かれていない現代風のオリジナルだなあと思っていましたが、作者の意図は……だったのですね。「闇の左手」とアーシュラ・ル・グインのファンとしては「すごいことを知ってしまった」と興奮です。だって、原作の最後とイメージが違いすぎて。
 ああ、戯曲とともに極上の時間を過ごさせていただきました。ありがとうございました。また、URLをたどって読みに行きますね。
 著作権とかもろもろには詳しくないのですが、どうか双方ともにwinwinで進むことを祈念しています。

返信(8)

ありがとうございます(涙)。そう握手のシーン。すっかり心がゲセン人化してしまったゲンリーが、ひさしぶりに同胞たちを見て、男らしすぎるし女らしすぎると違和感を感じる描写は原作にあって、その想像力の繊細さに驚いたのですが、そこから先は調子に乗った私が少し盛りました(笑)。じつは初めて原作を読んだとき私ドイツにいて、初対面でもすぐに握手されるのでビビりまくっていたんです(笑)。ドイツ人は握手だからまだいいですよ。フランス人だといきなり両頬にチュッチュッしてきて、何度か気が遠くなりかけたです(笑)。そんな体感を強調してみました。
それに仰るとおり、触れちゃうと歯止めがきかなくなるから、最後まで触れないんですよね。最優先事項はゲンリーを無事に通信局まで送り届けることだし。セレムさまの愛が深すぎて、私もだだ泣きです。笑
最後のダークな設定は、だってこれ日本人が読むと明治維新にしか読めないですよ。エキュメンは黒船と違って軍事目的はいっさいないと何度も強調されてますけど、結果は同じようになるだろうと思ったんです。直感でした。そしたらルグウィンさんの想定はさらにダークだった……。ルグウィンさんも驚いてくださったけど私も驚きました。
ゲンリーが痛ましすぎて。この先のハッピーエンドはないものかと。じつは私の脳内には妄想があるんですけど、さすがに二次創作は絶対タブーですね(笑)。まずは原作をなんとかしてリバイバルしたいです。
 今読んでも全然色あせない作品。是非是非、もっと若い人にも読んでいただきたいです。でも、イマイチ他人に勧めにくいのは大ファンの私ですらちょっと引く「予」なんです。ハヤカワ版も香り高くて美しい訳だと思うのですが、未村さんの訳を読んでなるほどなあ(読みやすい)と感じました。
 ハヤカワ版原作、エストラヴェンの容姿が最初「外面的なうつくしさ、しとやかさ、女らしい」と描かれていて、私の頭の中では中性的王子様系美青年だったのですが、だんだん読んでいくと「浅黒い顔、ふっくらした手、太い眉」になってきて「筋肉質では無い肥満体」などと書かれる頃にはすっかり私の頭にはおばちゃんの絵が浮かんでしまいました。(笑)無理やり頭の中で、作者の意図とは違うかも知れませんが、自分ごのみの女性的美形に置き換えて読み、「闇の左手」を友人に勧める時(私と同じく腐○子です)「いい? 美形だと思って読むのよ!」と付け加えました。後で「確かに美形化して読むとグイグイ(心に)くるね~」と言ってもらえました。
 本作ではゲンリー・アイの設定がアフリカ系になっていて、思いもしていなかったのでおお~とびっくりしましたが、台詞を読んでいると感情が引き立って迫ってくる気がしました。(特にすれ違いの部分とか、目を丸く、口をぽかんとしている彼を思うと、可愛いと思ってしまいます)この戯曲を読まなければこの発想には至りませんでした。ちなみにハヤカワ版原作を読んだとき、私の想像では草食系ヨーロッパ系美青年として変換していました。小説とか戯曲は良いですね、読み手の数、演じ手の数ほどバリエーションがあって、無限の可能性を感じます。
 それにしても残されたゲンリー・アイの気持ちを思うとたまらないです。未村さんの頭の中にはどんな未来が描かれているのでしょう。想像の中で安寧を得られているのでしょうか。いつか覗いてみたいです……。テレパシーが使えればいいのに(笑)
ええー、ゲンリーがアフリカ系なのは原作の設定ですよ! 何度もくりかえし(しつこく笑)強調されてます。しかも「鼻が平ら」とまで書かれていて、まじかっ?!と私も衝撃で、そこだけはもう頭の中でむりやり美形に変換しました(笑)。
このゲンリーと、あとゲドに出会わなかったら、私も自分の作品で黒い肌の美青年を描くことはできなかったです。私も正直、美形イコール金髪碧眼の白人のイメージが刷りこまれすぎてて(笑)、アジアンビューティーやアフリカンビューティーをどこまで描けるか、ひとえに(いまは天国の)ル=グウィンさんに笑われたくないために、自分に負荷をかけてるところなんです。
だいぶ前にアメリカのAmazonか何かで「キャスティングするならデンゼル・ワシントンとジョディ・フォスターだ!」という書きこみを読んで、私もそうそう!と思ったんですけど、もうお二人とも年取ってしまいましたよね(笑)。それにジョディ・フォスターは白すぎますね。ゲセン人はル=グウィンさんによるとエスキモーのイメージだそうです。寒いところの人たちだから、皮下脂肪が厚いんですって(笑)。そこもすごいと思うんですよ。世界三大ファンタジーのうち、『ナルニア国年代記』も『指輪物語』も完全に白人の世界でしょう? 主人公二人がアフリカ系とアジア系で、しかも女性(的なほう)が男性のほうを守り抜くストーリーって、半世紀後のいまでも斬新ですよね。
とにかくゲンリーくんは絶対幸せにしてあげたいです(*^^*) いつか(生きてる間に笑)続編を書かせてもらえたらいいなあ。ゲセンの開国は悪じゃなかったって証明できる未来のおはなし。
よ、読み飛ばしていました(汗)原作もアフリカ系だったんですね!!! 確かに金髪碧眼の白馬のプリンス=美形の時代は終わろうとしていますね。そうだったか(愕然)、浅黒い肌とかいう記載があった気がしてきました、無意識下のプリンス願望が、読み飛ばさせたのかも。そして、エストラヴェンの設定がそうだったなんて!!! 皮下脂肪は理にかなった設定だったのか〜、深いっ。未村さんに教えていただかなければ、この先知ることはなかったでしょう。(ゲンリーのイメージは私の誤読ですが)闇の左手の真の世界観に近づけて幸せです。
私も重大なことに気づきました。それ、必ずしも不二原さんのせいじゃないかもです。いまのハ●カワ訳がゲンリーのイメージを「黒人ぽく」ならないように慎重に描いているのかもしれません。だってね、アメリカ国内でさえ、あんなにはっきりゲドは黒い肌だと書かれているのに、テレビ映画でキャスティングされたのは白人の俳優さんで、ル=グウィンさんすごくがっかりしたんですって。そしてジブリもそうだったでしょう。ル=グウィンさんにしてみたら、なぜアジアでまでゲドが白く描かれるのか理解できなかったみたいです。私たちの「白人補正」って凄いですよね。私自身ももちろんそうで、子どものとき「白雪姫はお姫さまなのに金髪じゃないなんておかしい」と思ってたくらいですけど(笑)、本当にル=グウィン作品に出会って衝撃で、変わったんです。
あと私の『ジークフリート・ノート』でも書いたのですけど、じつは白人の人たちも金髪碧眼率ってわりと低くて、イタリアやフランスは圧倒的に黒っぽい髪の人のほうが多いし、ドイツでさえそんなに高くないんです。ナチスのアーリア人神話なんてぜんぜん嘘だってドイツの人たち自身が言ってました。プラス、金髪碧眼イコール美男美女ではないんですよね(笑)。なんか歩く白ソーセージみたいな人もかなり見た(笑)。
プラス、この小説、ゲンリーくんとセレムさまの一人称で進むでしょう。自分たちのこと美人だって日記に書かないですよね(笑)。だからもう二人とも超絶美形でいいんじゃないかと思うんです(笑)。私も腐女子全開で激しく願ってます(笑)。
 お返事ありがとうございました。読み直してみたら、ゲンリーに王が「みんなお前のように黒いのか」と問うシーンがありました!「もっと黒いのもいます」とか答えているので、私の脳内の願望想像系が誤読を起こしたのかもしれません(笑)鼻の描写は容赦ないですね、ゲンリーも平たい顔族だったか! この正しい設定で未村のさんの戯曲を読むと感情が豊かな彼の姿が浮かんできて楽しいです。でも、二人ともこれからも超絶美形で読みたいと思います。ヌスス、それは読者のささやかな秘密の楽しみと言うことで。
ええ、もうそこは妄想で行きましょう! 『ジークフリート・ノート』の登場人物紹介にも書きましたけど、私の書くものには美形か、もしくは超絶美形しか出てきませんから!(笑) ヌスス~!