【ブックガイド】人生は、断片的なものでできている

作者 mika

[創作論・評論]

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21件のファンレター

☆NEW!!☆ウィリアム・フォークナー『エミリーへの薔薇』 #ノーベル文学賞
皆さまに、ぜひとも読んでもらいたい! と思う作品を紹介しています。
ノーベル文学賞って気になるけど、難しそう……そんな受賞作の中身もネタバレなしで解説。
現在、お題企画「戦争について考える」に参加中です。

表題は『断片的なものの社会学』(岸政彦)のオマージュです。
※表紙はAdobe StockからFranzi Drawsさまの作品を使用させていただきました。

ファンレター

『野アヤメ』の詩

mikaさんの文章は偏見や押しつけが無く、フラットな気持ちで堪能することができるので好きなのです。そして平素な言葉で深淵が伝わります。今回の『野アヤメ』の訳詞、心象風景に浸り趣深く味わいました。そして後半mikaさんの解説を読み、ノーベル文学賞を受賞した詩人ルイーズ・グリュックがうつ病であったこと、彼女にとって詩は「祈り」であることを知って再度読み直すと、また違った感慨が迫りますね。静謐な言葉一つ一つが美しいです。『マツユキソウ』の詩もいいですね!やっぱりmikaさんの作品は信頼できます。

返信(1)

佐久田さん、お読みいただきありがとうございます! ルイーズ・グリュックの詩の静謐な美しさを一緒に分かち合うことができて、うれしいです^^
詩集『野アヤメ』は、詩人が住むニューイングランド地方の花々が題材となっています。同緯度の北海道にある花や草木の名が登場し、日本人にとっても親しみ深い作品だと思います。
アメリカ文学史においては、フェミニズム運動の盛り上がりとともに、女性詩人たちによる「告白詩」が流行したそうです。自分のおかれた不条理な環境に怒りをぶつけ、自分自身や社会を批判する怒りと悲しみの詩をうたいました。そんな告白詩人たちの後の世代がルイーズ・グリュックで、彼女の詩は声高な嘆きや自己主張を避けているように思います。長い行、長い連を重ねるのではなく、最小限の言葉で深い意味をこめた詩は、ゆたかな想像が広がりますね。静かな言葉で、確かに読者の心に伝わる詩だと思います。ノーベル文学賞を機に、ルイーズ・グリュックの詩集の和訳が刊行されたらと願います。