奇譚草紙

[ファンタジー]

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奇譚――奇妙な味の短篇、あるいは変てこな短い物語を、ほろほろと書いてみようと思います。

※不定期連載です。

ファンレター

右手

先日は「武侠小説」について丁寧に教えてくださり、ありがとうございます! おすすめ作品、探してみたいと思います^^ 老舎の作品はまさに『らくだのシアンツ』を読んだんです。主人公がどんどん不幸になっていき、悲しい話でした。でも、情景描写は生き生きとして素晴らしかったです。
今回の『右手』は川端の『片腕』オマージュなのですね。学生時代に全集を借りて読みました。直接的な性描写はないのに、なぜかとてもエロティックな印象を受けた記憶があります。フェティシズムなんでしょうか…。何かで絶賛されていたので読んでみたのですが、一体なぜ高く評価されるのかよく分からなかったです。
今作は、片腕をフェティッシュとしてではなく、主人公の女性の心の拠り所として描いておられて、全く印象が違いました! 彼の片腕は、彼女の感情を投影した分身のような存在ですね。彼の両親が遺体の右手の義手に気づかないと描写されているので、主人公にしか見えない片腕なのかなと思いました。体の一部を無償で与えるって、究極的な愛を感じます。家族間の臓器提供のように。この女性は、相手の男性に本当に愛されていたんだなぁと感じました。
引き続き楽しみにしていますね!

返信(1)

mikaさん、いつもご丁寧なコメントをいただき、本当にありがとうございます‼…川端の『片腕』は仰る通り、フェティシズムで、また不思議にエロティックですよね。でも、『片腕』のように「女性から男性に手を貸す」のではなく、「男性から女性に貸す」に変えてみると、あまりフェティシズムとかエロティックな感じにはならないところが、自分でも面白かったです(その代わりドタバタコメディーみたいになってしまいましたが^^;)
それにしても、日本文学も世界文学も、mikaさんの知的興味の赴く範囲の広さには本当に驚かされます。老舎は長篇の『らくだのシアンツ』がもちろん代表作ですが、短篇にけっこうユーモラスな味わいのものがあるんですね。私小説的な作品で、確か「一日」というタイトル(以前大学時代に中国旅行して買ってきた本で、今手元になく、タイトルがちょっとあやふやなのですが)で、老舎自身を思わせる作家が原稿を書こうとしていると、いろいろな人がやってきて「執筆の邪魔」をされ、そのうち日も暮れてしまい、結局一枚も原稿を書けなかった…みたいな短篇があって、北京の庶民の姿がユーモラスに描かれてあって好きでした。老舎と言えば、開高健に「玉、砕ける」という、開高が老舎に会った思い出を描いた短篇がありますが、日本人作家が描いた老舎の姿として、とても印象深いです(mikaさんが「活動報告」で開高健の『輝ける闇』に言及されているのを見て、ふと思い出しました^^)。