あの夏の日の、SPブラック
大学受験を控えた高校三年の夏休みに、川村淳は東京から青森県に旅立つ。旅の相棒は、淳が生まれるよりずっと前に作られた古いバイクと古いカメラだ。
たどり着いた津軽の田舎の河原で、淳は四人の地元の女子高生と出合う。戦国武将の姫のようなお嬢様の藍華に、ゆるふわ系の可愛らしい和香奈、大人しいが不思議な存在感のある小夜、そして元気で明るい猫のような美澪……。
地元の女子校の写真部だという彼女らと知り合い、写真という共通の話題もあって仲良くなりかけるのだが、その晩、四人の少女たちのうちの一人がさらわれていなくなる。
翌日から、淳と残る三人の女子高生で、いなくなった少女を捜す日々が始まる。
実は淳の父も、三十年近く前にこの青森県で、失踪した一人の少女を探し回った過去があり、この二つの出来事が微妙に重なってくる……。
山梨県北杜市武川町の一木一族の末裔、一木孝治です。
私は本来、時代小説を書くことが多いのですが、気分を変えて現代の青春小説も書いてみたりしました。
写真を撮ることとカメラに古いレンズ、そして青森県と、私の好きなものをたくさん書けて楽しかったです。
これまで投稿してきた三作は、時代モノで比較的テーマも重く、しかもハッピーエンドとは言えないものばかりでした。ですから以前に公開した拙作をお読みになって下さった方は、作風の違いにさぞ驚ろかれることと思います。
けれど本人としては楽しく書けましたので、よろしければ皆様もお気楽に、空いたお時間の暇つぶしにお読みになって下されば幸いです。
ファンレター
一木さん、最終話(余談も含め)まで、拝読しました。
おっしゃるとおり、書き手が楽しんでいるであろうことが、各所で感じ取れたような気がします。
やっぱりモテすぎで、自分に重ねられないところがつらい(笑)ですが、救出劇は手に汗をかきました。
再会劇については、そうかもなあ、というところで落ち着いたので、安心です。
そしてモテ男の選択は納得ですね。
余談のレンズ話は、想いが強すぎて……内容にはついて行けませんが、愛情は十分感じました。
僕自身、自分の趣味話(小説にはできませんでした)をここにアップしているのですが、こういう感じで読まれているのかどうか……
引き続き頑張ってください!
楽しみです。有り難うございました。
返信(2)
実は私、かなり多趣味なのです。
カメラが好き、そしてレンズがもっと好き、車やバイクの運転も好き、さらに白状しますと学校の勉強では社会科、特に日本史が好きと言うだけでなく、実はかなりのミリオタでもありまして……。
例えば『闇より昏き道』で主人公のペーターが、キャタピラに被弾して走れなくなった敵戦車に乗って戦い、さらに修理して自軍の陣地に帰るシーンがありますよね。実は私、そのロシア軍のT34はもちろん、ドイツ軍のティーガー重戦車やⅣ号戦車とかの内部についても、かなり詳しくわかっているんですよ。
砲手、装填手、運転手、通信手兼機関銃手、そして戦車長の席はどこで、主砲はどう操作し、砲弾はどこにあり、狙いをつける照準器の目盛りはどうなっていて、運転手のハンドルとクラッチはどこでどんな形をしていてとか、みんなわかっていました。
けれどそれを書くとマニアでない一般の読者さまが飽きますから、あえてサラリと書きました。
で、主人公は戦車の構造と弱点をよく知っているから、対戦車戦闘に強いとされていますが、どこがその戦車の弱点かは書いてないですよね。もちろん私は知っていますけれど、あえて書かなかったのです。普通の読者の方には興味のないことですし、それを詳しく説明していると話のテンポを悪くして、読み手を退屈させるだけですから。
あと、主人公が単に「頑丈だから」と、ドイツ軍のサブマシンガンでなく、敵から捕獲したシュパーギン短機関銃を使っているあたりも、サム・ペキンパー監督の名作映画『戦争のはらわた』を知っている人は、シュタイナー軍曹を思い出してニヤリとするかな……でもわからなくても、別に構わないしという感じで書いていました。
そんな感じで、『闇より昏き道』はわかるマニアの人にも、武器や当時の戦闘に知識の無い人にも自然に読める配慮をして書いたのですが、『あの夏の日の、SPブラック』についてはその自制が効きませんでした。
例えば藍華お嬢が使うカメラについて、「M3でも特に評価の高い初期型のダブルストロークのモデルだと察した。さらによく見れば、付いているレンズはありきたりのズミクロンなどでなく、カメラ本体のM3より遙かに高価な、手磨きの非球面レンズを使ったノクチルックス50mmF1.2だった」というあたりなど、本当に「オマエ、いったい何語を書いてんだよ?」って感じですよねぇ……。
一応日本語らしいけれど、普通の日本人にはまずその意味がワカラナイ、という……。
「ライカの中でも特に評判が高く、それ以上に目玉が飛び出るほどのお値段のカメラ」で済ませれば良かったのに、M3のダブルストークのモデルだの、手磨きの非球面レンズだの、意味が分かる人など百人に一人だっていませんよね。
それでお金を稼いでいるプロの写真家やクラシック・カメラのお店の人以外で、その意味がわかってしまう人がいるとすれば、間違いなく私と同類の、底なしのレンズ沼にどっぷりハマり、半世紀も前の妙な古いレンズたちに大金を注ぎ込んだ廃人デス。
それが特に酷かったのが、ご指摘の余談です。
主人公が使う“魔法のレンズ”こと、古いペンタックスのスーパータクマー55mmF1.8は、上手く使えば本当に女の子を綺麗に撮れるのですよ。
スーパータクマー55mmF1.8の魔法の写りはフィクションではなくて、本当の事なんだ……と知って貰いたくて、書き始めたのですが。
同じスーパータクマー55mmF1.8でも、その魔法が宿っているのは初期型と前期型だけで、スーパータクマー55mmF1.8に多い後期型にはそれが無い。そして魔法が使える初期型&前期型と、使えない後期型の見分け方を書くのは良いでしょう。
で、高くても五千円以下で買えるし、カメラ屋やハードオフとかのジャンク・コーナーで転がっていたりするから、買ってデジカメに付けて(マウント・アダプターも手に入れる必要があります)試してみて……という所で止めておけば良かったのです。
あと、ミノルタの古いレンズも良いよ……と勧めるところまでは、まあ許せますかね。
それがライカの話にまで広がると暴走が酷くなり、レンズが良いことで知られるニコンの名声はツァイスの物真似から始まった話だの、同じライカの5cmのレンズの善し悪しだの、本当に読者さまを放り出して勝手に語り始める有り様で……反省してマス。
実は私、写真はかなり撮っているのですよ。カメラやレンズを集めるコレクターというわけではなくて、主人公と同じように「絵のように綺麗に写るレンズは無いか?」と思って、本当にいろいろ試行錯誤しました。と言うより、今もスーパータクマー55mmF1.8だけで満足せずに、面白い個性的な写りをするレンズを探し続けています。
今は大人しく花や風景などを撮っていますが、以前は女の子をよく撮っていました。
何故なら、私自身に「自分はモテるタイプではない」という自覚があったからですよorz……。
で、「付き合って貰えないなら、せめて写真なりとも綺麗に撮って持っていたい」と思うに至った……というわけです。
まあ、それで腕がそれなりに上達して綺麗に撮れるようになれば、女の子も喜んで撮られてくれるようになるし、おかげさまでこんな私でも、女の子とそこそこお付き合いをしてきました。
もちろん、フラれて痛い目に遭ったことも数知れずです。しかも私の場合、「フタマタをかけられた揚げ句に、切り捨てられる」というパターンがひどく多いのですよ。ハイ、だからまだ独身です!
で、そんな私が自分の経験から「付き合うなら、絶対こんな子が良いよ!」と若い男性の読者さまにお勧めしたいのが、ミケこと美澪ちゃんです。
と言いつつ、実は藍華さまのような姫さまと言うか姐さんに惹かれてしまう自分もいます。まあ、実際にこんなお嬢さまとお付き合いなどしたら、体も神経も保たないでしょうけれどね。
ちなみに私、岩下志麻の『極妻』、けっこう好きで見ていました。
和香菜さんはですね、はっきり言って地雷、「男性諸君、こんな子に引っかかっちゃ駄目だよー!」という気持ちも込めて書きました。だって和香菜さんの可愛さは、ほぼ計算ずくですからね。おバカなふりをしていて、実はかなり頭の良い、しかも理数系でパソコンもプロ用のデジカメも苦もなく扱えてしまう人ですし。だからこの子はコワいです。
で、主人公のお父さんの彼女の麻由子さんについては、とにかく「全国の、妹キャラ大好きのシスコンお兄ちゃんをノックアウトしてやれ!」というつもりで書きました。
私がこの話を書いたのは、実はプレステ2がまだ現役で使われていた頃のことで、ですからノリが少しばかりギャルゲーっぽいのですよ、ラノベというのではなくて。と言われれば、主人公のモテ具合、「ああ、なるほど……」と思うのではありませんか?
ただ、十数年前に書いた話だけに、時代に合わせて設定や話の細かい部分を変えるのに、ちょいと手がかかりました。
次はかまり違う話になると思いますが、今しばらくお待ち下さい。
村山様のように応援して下さる方がいると、本当に励みになります。
余談は、余談なので良いのではないでしょうか!? 本文と使い分けられていることが分かってより好感ですよ。
好みの女性については、うーん、僕も藍華さんに惹かれますが、(選べるなら)現実的な選択ではないかな……。
最後に、、なるほどの時代感覚でした。
今後ともよろしくお願いいたします。