コロナ禍の先へ:書評『Day to Day』『Story for you』

作者 mika

[創作論・評論]

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疫病に既存の社会のあり方が揺さぶられた2020年。危機を乗り越えた先にどう生きるか、物語を通じてヒントを見つけることができるかもしれない。

2021年5月31日発表の2000字書評コンテストで受賞作に選んでいただき、講談社の文芸メディアtreeに掲載されました。

ファンレター

独特の切り口からの書評

『Day to Day』全100話を「現代日本版『デカメロン』」と捉えるのは、この本の企画・編者の方からすれば、正に「我が意を得たり!」という感じではないでしょうか^^
また全62話の『Story for you』も含め全162話の中から、「活動報告」にあるように「医療従事者を鼓舞するもの、感染者や医療従事者の家族が差別された社会問題を扱ったもの、コロナ後の社会のあり方を考えさせられるもの」を選んで書評の俎上に載せておられるわけですが、この切り口にmikaさん独自の視点を感じました。mikaさんが紹介して下さった作品の中では、「7月13日 鯨井あめ」と「8月20日 大崎梢」が私には特に印象的でした。
mikaさんが以前、マスクをして合唱練習をする子供たちの「痛み」をわが事のように感じる文章を書かれていたことが強く記憶に残っています。子供のかけがえないのない時間や経験を奪ったり、子供たちを不条理な差別に晒す「敵」(ウイルスだけではない存在)に対する怒りや悲しみを、静かな文章で描き出すこと。それがmikaさんのテーマの一つなのかなあ、と感じています。すばらしい書評だと思いました!

返信(1)

南ノさん、お読みいただきありがとうございます! 『デカメロン』と結びつけて考えると、疫病による人類の危機は古典から現代まで永遠のテーマだなと思いました。昨年、日本ではカミュの『ペスト』がベストセラーになって、累計100万部を突破したとか。志賀直哉の『流行感冒』は、家の主人から感染予防のため禁止されていた芝居見物を女中がこっそり観に行き、家族全員に感染が広がってしまう物語で、スペイン風邪の時代を日本人がどう生きていたか分かり、とても興味深いです。
『Day to Day』と『Story for you』は、とても二千字では紹介しきれない、たくさんの作品が収録されています。その中から、ぜひとも皆さんに読んでもらいたいと思う作品を選びました。差別とどう向き合い、克服していくかは、わたしにとって長年のテーマで、これからも考え続けていきたい問題です。
医療従事者やその家族に対する差別が見られるようになったのは、とても悲しく思います。わたしの母は内部障がいがあり、定期的な通院治療が欠かせません。母が週三回通院している病院でもコロナの院内感染が発生し、亡くなった方もおられました。それでも医師や看護師さんたちには日頃の感謝の気持ちしかないです。「8月20日 大崎梢」の中で、障がいのある少女の母親が語った言葉を読んで、まったく同じ気持ちだと思いました。
活動報告や「2020年11月20日 音楽は贈りもの」まで目を通して、丁寧にコメントを寄せてくださり、本当にありがとうございます! 病気それ自体以上に、人の恐怖心やそれによる攻撃性が恐ろしいと実感しますね。子供たちがいじめで自死したり、虐待されたりなどのない社会になってほしいです。『Story for you』を読んだ子供たちが、どうか未来への希望をもってもらえたらと願います。