見聞士

作者 唐乃 楓

[ファンタジー]

27

7,279

3件のファンレター

見聞士のカイローは故郷を遠く離れ、世界中を旅して回っている。
行く先々で目にする珍しいものや、伝承などを書き残すのが彼の役目だ。
ある時、旅人たちは川の氾濫で渡河をあきらめ、山越えの廃道に踏み入った。
「この日ほど、命の危険を感じたことはない」と見聞士は自著に書き記す。


2021年3月 【2000字FT】に参加させていただいた作品です。
お気づきの方もおられると思いますが「黒衣のリラ」のスピンオフでもあります。
2022年1月 改稿版を投稿いたしました。
改稿にあたって工夫した点などを以下にまとめています。

・言葉に矢印の働きを持たせられるようにしました。たとえば、冒頭の風景の描写で「絨毯のような密林は、いまや夕暮れの山陰にあって」とありますが、「いまや」という言葉を入れることで、時間の経過や景色に変化があったことを示唆。また、旧版の「夜営の準備にかかった」を、改稿版では「夜営の準備を急いだ」とすることで、旅が予定通りに進んでいないことを匂わせています。
・カイローの出自や、ドラゴンの一撃で商い品が宙を舞う場面、影の主役ともいえる馬に関する描写を追加しました。
・漢々動詞(と勝手に呼んでいます)を減らして、音のよさや動きを重視しましたが、ここぞという所では、漢字が持つ字面の力に頼りました。
・ドラゴンに関しては、張り詰めた空気が伝わるよう心がけました。苛立ったり縄張りを守るために殺気立ったりする様子が伝わるでしょうか? さらに後日、蹴爪の表現も追加しています。
・カイローの描写「恐る恐る顔を上げると」を「むせ込みつつ、カイローが顔を上げると」に変更。感情については前後の部分からでも伝わると判断したので、外面的な動きに絞りました。

ファンレター

息を呑む緊張感

こんにちは。遅ればせながら、拝読いたしました。
のっけから漂う不穏な気配。臨場感のある背景描写にどきどきしながら読み進めていくと、息を呑む展開に。
堪能いたしました。
見聞士としての記録はきっと膨大な量になるのでしょうね。そのうちのひとつを垣間見ることができて、想像力を掻き立てられました。
あと、個人的に、ジャンル説明のところの言葉のチョイスがとてもツボでございます(笑)

返信(1)

まさかのお手紙をいただき、嬉しさと驚きのあまり脱○しそうになりました(汚い話ですいません)。
ちょうど桐乃さまの歴史短編連作(?)と「須王とお嬢さま」へのファンレターを書こうとしていた矢先でしたのでなおさらです。
ぼくは「天叢雲の剣」から入った歴史シリーズですが、「初恋」「殉愛」「落下流水」までを含めた話になっているんですね!
どの人物も魅力的で、はかない中にも気品があったり、冷徹な権力者でありながら人並に苦しんだり……。
まだの人には、ぜひセットで読むことをオススメしたいです。
「須王とお嬢さま」や「掌中の玉」では、それぞれの登場人物が、苦悩するほうの頼朝とイメージの重なる瞬間がありました。
皆、大切な人との関係とは違った次元での苦しみや想いを抱えていて、けっしてストレートには語られませんが、そのつかみどころのなさが魅力的でもあります。