第54話風間組総裁 風間平蔵②

文字数 979文字

風間平蔵は、由紀によく似た、整った顔をほころばせた。
「お前が芳樹か、面白い」

芳樹は、落ち着いている。
風間平蔵のグラスに、冷酒を注いだ。
「お嬢様をはじめ、組の皆様に、よくしていただいております」
「感謝します」

風間平蔵は、また笑った。
「ああ、かまわん、儲けさせてもらった」
「アチコチに貸しもできた」
「今まで考えもしなかったシノギだ」

風間平蔵も芳樹のグラスに、冷酒を注いだ。
「俺を見ても、腰が引けないのか」

芳樹は、表情を変えない。
「格も住む世界も違い過ぎて、ビビる必要もないと」
「そうなったら、真っ向勝負しかないので」

風間平蔵は、含み笑い。
「俺にビビらないのは、もう一人いるが」
「お前と同い年だな」
(芳樹は、どうでもいいので、黙っている)

具体的な話に移った。

風間平蔵
「アイドルとかのガキ娘のコンサートを爆破したいのか」
芳樹は思ったままを答えた。
「恨みはないですが、あまりにも馬鹿臭いので」
「死傷者も出るかな」

風間平蔵の目が厳しくなった。
「任侠の道からは・・・」
「亜里沙は儲かると言うが、気が乗らんのだ」
「娘と同じ年頃だし」
「無実の人は、殺したくない」

芳樹は頷いた。
「確かに銀行の松戸支店は別として、全て恨みある相手を標的にしました」
「ただ気に入らないだけでの殺傷は、鬼畜とも思う」

由紀が口を挟んだ。
「芳樹、爆破やめるの?」
「私は、芳樹に任せるけどさ」

芳樹は、懸命に考えた。
「そういう・・・アイドルとかの・・・軽薄な文化?」
「俺がそんなことを言うと似合わないが」
「難しい言葉で、警鐘を鳴らしてみたい、それは気持ちとしてある」
「殺さない程度で、警鐘を鳴らす、具体的な策を練りたい」

風間平蔵は、しっかりと頷いた。
「死なない程度に・・・か」
「それなら、許す」
「一時的に眠らせるような、神経性のガスを使え」
「警告は怖めに、やり方は任せる」
「君澤と亜里沙をつける」

芳樹と由紀が頷くと、豪勢な磯料理が運ばれて来た。

風間平蔵は、柔和な笑顔に戻った。
「由紀が惚れるわけだ」
「荒っぽいようで、芯が強い」
「組に来い」

芳樹は、笑った。
「全部・・・俺の復讐が終わってから、考えます」
由紀は含み笑い。
「父さん、芳樹は東都物産がカタキだよ」
「どうする?」

風間平蔵は、笑った。
「面白いな」
「じゃれ合わせるかな」

芳樹は意味が分からない。
少し黙っていると、大広間のドアが開いた。

福田陽平が入って来た。
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