作中劇:桃太郎の正体part2

文字数 1,463文字

さて、みんな「うらじゃ」は知っているかな?
なんだそれ?
俺知ってる。
仮装と創作ダンスしながら街を練り歩くやつでしょ?
路上パフォーマンスみたいなもんか。
と、このように誤った解釈をする愚か者がいるので、僕が百田君の説明に修正を加えると……。
いちいち人のメンタル削らないと話が進まないのかよ!
彼らがしているのは仮装ではなく「温羅化粧」だ。
温羅化粧?さっき百田君が言った「温羅」とか云うのが関係してるのか?
ああ。その通りだ。
温羅化粧は名前が指すように、温羅、これは人の名前だが、その人物を模した化粧、と云う意味だね。
なんだ、やっぱり仮装じゃん?
百田君、きみの説明だけだと、誰とは言わないが、文化祭とかテレビ番組の仮装をイメージする人が出てくるんだよ。
うっ……。
創作ダンスで街を練り歩く、に関しては大体正しい。
「うらじゃ踊り」とも言うんだけど、こうしなきゃいけない、みたいなルールはないよ。
んで、「うらじゃ」がどう言う風に「桃太郎」とリンクするんだ?
それは温羅化粧を見たらなんとなく分かる。家に帰って検索するといいが、あれは、鬼の化粧でもあるんだ。
さっぱりわからんぞ。
温羅って人のと鬼の化粧の二種類があるって話?
ハハ、努ちゃんってルパン三世のジャケットは赤しかないとか思い込んでる奴?
俺がそんな狭量な男に見えるか、百田。俺は赤青緑のすべてのルパンを見て育ったんだぞ。
ふふ、ルパンはいい例えだ。彼のジャケットに種類があるように、温羅の肩書きもいくつかあったんだ。
人と鬼の両方の肩書きを有してるのか。
さて、この温羅は吉備、今で言う岡山を根城にしてた朝鮮からの渡来系の豪族と言われている。
そして、古代、朝廷がこの温羅を討伐する話があるんだ。
日本史の話か?
ああ、一般的に、これを古代大和朝廷の吉備への侵攻と捉えられ、その勢力拡大の過程の史料とも言われる。
君命を受けた吉備津彦命が悪行を働く温羅を征伐する、という構図は朝廷側、吉備側に共通している。
温羅は敗走中に雉や鯉に変化してたとか聞いたよー。追う吉備津彦命も鷹とか鵜になって捕まえたんだってね。
その後、人々から「死後も人相が怖い」と言われて犬に貪られたそうだよ。
それはまた散々だな……。
で、なんで温羅の話を?
端的に言うとね、この温羅の伝説を桃太郎の昔話のルーツとする説がある。
はあ、言われてみたら似てると言えなくもないな。けど、そこまでの共通点はないように思えるんだが。
あくまで「ルーツ」だよ。別同じ話なわけじゃない。
似ている点はあるだろ?朝廷という正義の申し子「吉備津彦命」が鬼の異名を持つ悪の権化「温羅」を倒す、勧善懲悪のシナリオとか。
動物が出てくるところとかも似てるよねー。
そうそう、桃太郎で鬼から奪った宝物は、渡来人の持つ製鉄技術を指している、という説もある。
話をまとめると……
桃太郎自体の記述から、その発祥を岡山に求めることは難しい。
また、これと温羅伝説はある程度の相似性ゆえ、温羅伝説をそのルーツとする考えもある。
大まかに言うとその通りだ。流石、姑息な理解力では群を抜くね。
褒められてる気がしない……、てか褒めてねえだろ!
温羅伝説には様々な考察があるから、ぜひ調べて欲しいところだね。
あれ、温羅伝説に観点を置くと、その流れをくむ桃太郎は岡山の話ってことになるのか。
……あのな、同じ言葉を再三使うが、温羅伝説はあくまでルーツだ。
それに、昔話と伝説はその出発点が全く違う。
ん??
これは解っていないと結論までたどり着けないからなぁ。
じゃあ、脱線して昔話と伝説について、次は語っていこうか。
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