3.流されること 導かれること

文字数 1,546文字

自分の努力によって目標を達成するプロセスを何度も経験してきた私は、高校生の頃から一昨年ぐらいまで「人間は努力すればなんでもできる」「人生は自分の力で変えられる」という割と体育会系な思想の持ち主だった。しかし、20歳を超えて、改めて自分の置かれている環境や周囲を客観的に見るようになってから大分考えが変わった。

結論から言うと「人間は適材適所ではじめて力を発揮できる」「人生にはそれぞれ『流れ』があって、努力で変えられる部分は決して大きくはない」と、思うようになったのだ。

良くも悪くも、生まれた瞬間から人はある程度決まった「人生の流れ」に乗せられてしまうもののような気がする。生まれ持った資質も環境もみんな違うのだから。「流れ」を川に例えると想像しやすいかもしれない。世の中には、ゲームスタートした時から船も豪華で川の流れも良く、このまま流れに乗っていれば宝島に着ける人もいる。一方で船はボロボロな上に川の流れも荒く、天候も悪い人もいるだろう。また好条件・悪条件問わず、自分の資質をうまく生かせる流れに偶然当たれる人もいれば、そうでない人も存在する。

私はいままで「運良く」自分の得意な分野で努力できる環境にいられたから「結果(=人生を自力で変える)」を出せていただけ、と思うようになった。家庭環境然り私は恵まれている方だと改めて強く実感し、自分の力を過信していた過去の己を恥じた。努力だけでどうにかなるのならみんな努力している。恵まれすぎて平和ボケしていたキッズの考えだった。

そして、叶う夢もあるし叶わない夢もあるという言葉の意味をようやく理解した。数年前までは「叶わない夢はない!!!結果がでない努力は努力じゃない!!!」と思っていたが…。なんだかちょっとかなしいが、これが大人になるということなのかもしれない。

なるようになる、と言ってしまうと「諦め」のように受け取られてしまうかもしれない。しかし、それは違う。人生をこうしたい!ああしたい!と自分で理想を描くことももちろん良いのだが、その理想以外にも自分が幸せになれるルートは存在していて、目の前のこととしっかり向き合って人の繋がりを大事にしていればそのルートには自然と近づくことができると気がついた、というか…なんて言えばいいのか難しい……流れに逆らって必死で船を漕ぐよりも、流れを味方にしながらも良い方向に進めるように適宜漕ぐ方が、良い結果も出やすいし幸せになれるのかなと思う。

自分の意思だけで今の仕事(生き方)に着いた、という人は少ないのではないだろうか?なんとなく流れに乗って生きて、流された先に今の仕事があった、という方が多いと思う。昨今は「夢を持つ」ことが過剰に持て囃されているので「夢を持って働くこと」が良いとされがちかもしれない。だが、私は「流された結果、やりがいを感じて働ける仕事」に就けているのであれば最高に幸せな人生だと思う。流される、ということは要するに「導かれた」ということでもあると思うのだ。結局、働くということは自分がしたいことをするのではなく社会に貢献すること、つまり周りに期待されたことをすることだろう。そこに到達するまでに自分の意思があったかどうかなんていうのは関係ない。

まあそんなわけで、現在私は大学3年生。就活をしながらも賞に出す作品も描き、色々オーディションを受けたりもしている。どこで結果が出るかは…来年の今頃にはわかっているはず。結果を出せたところ、つまり流された方向に幸せがある気がしているので、どんな結果が出るのか楽しみ!(もちろん運任せでなにもしない訳ではなく、できる限りのことはする!!)

自分の力だけでオールを漕いで目標に達しないと幸せになれない、と思っていた昔の私より、今の私は幸せだ。
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