愛《あい》~ 第5話

文字数 579文字

③ 信者たちには、多くの場合、このふたつの心理(完全をめざす心理と、無価値にとどまろうとする心理)が、多かれ少なかれ、同居しているようです。

しかし、信者たちは、この相反するふたつの心理を統一し、調和させる愛のあり方を知っており、またそれは、信者としての最高の愛の姿である、といえます。

それは、「神の愛によって愛する」ということです。

教会用語の中に、『通りよき(くだ)となる』という慣用句があります。
これは、信者が、神やキリスト教のことを知らない人に対して、神自身や神の使信を伝えようとするときに、神からうけとったそれらのものに、人間的なものや現世的なものを混入させない『スムースなパイプになる』ということです。

そして、この境地に至ると、人間的な悩み、現世的な考え、強烈な自我、特殊な個性などは、スムースなパイプ役になるための障害と考えて、それらを捨て、自分を0%、神を100%現す者になろうとします。

このことは、愛についても言えることで、すなわち、信者たちは、自らの相対的で不完全で欠点だらけの愛を捨て、スムースなパイプ役に徹することにより、神からいただいた愛で、神を、人を、自分を愛そうとするのです。
これが、三つ目の理由です。

こういうふうにして、信者たちは、無価値でありながら、完全な愛をもつに至るのです。
いや、無価値であるからこそ、というべきでありましょうか。
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