十月八日、金曜日。①
文字数 948文字
その日、わたしの心は朝からずっしりと重たかった。ただでさえ、今週はずっと憂鬱な気分で過ごしていたというのに、さらに『不安』という名の荷物を背負ってしまったのだ。
その発端となったのは、昨 日 の 放 課 後 に 起 こ っ た 出 来 事 。
(わたしのせい、じゃ、ないよね……?)
何度思い返しても、思いあたることがない。
それでもそんなことを考えてしまうのは、逆に言えば「わたしのことが少しでも影響していればいいのに」と思う、身勝手な愛情のせいなのだろう。
(セイちゃんに電話で相談してみても、わたしは関係ないんじゃないかって話だったし)
自分の机に頬杖をついて、まだ誰も立っていない教壇をぼんやりと眺めながら、ずっとその『原因』を探していた。
午前九時、鳴り出したチャイムとともに、担任の兼平 先生が教室に入ってくる。
おかげでわたしは、あたりまえなのだけどこれから先六コマも授業があることを思い出し、もっと暗い気分になった。
(先生の笑顔を見たら、少しは元気になれるかなぁ)
そんな期待をして、視線を動かす。
兼平先生は、六十歳間近のおじいちゃん先生だ。それでもいつも元気がよくて、生徒以上に明るい雰囲気を持っているため、とても人気のある先生だった。
――の、だけど。
(あれ……?)
心なしか、今日はその表情に陰があるように見えて、気にかかる。
それは周りのみんなも同じだったのか、いつもは兼平先生が来ると静かになる教室が、逆にざわついていた。
笑顔ひとつなく教壇に立った兼平先生は、教室内をゆっくりと見渡したあと、おもむろに口を開きはじめる。
「――おはよう、みんな。朝からこんな話でなんだが、みんなに哀しいお知らせがある」
その言葉が耳に至った途端、わたしの心臓が大きく跳ねた。
(『哀しいお知らせ』……?)
それは、父が亡くなったときにも聞いた言葉だった。父のことはあまり憶えていなくても、そのフレーズだけはよく憶えていた。
(まさか――!?)
わたしの『嫌な予感』は、滅多に外れない。
「今朝、三年の種市輝臣くんが自宅で亡くなっているのが発見された」
その発端となったのは、
(わたしのせい、じゃ、ないよね……?)
何度思い返しても、思いあたることがない。
それでもそんなことを考えてしまうのは、逆に言えば「わたしのことが少しでも影響していればいいのに」と思う、身勝手な愛情のせいなのだろう。
(セイちゃんに電話で相談してみても、わたしは関係ないんじゃないかって話だったし)
自分の机に頬杖をついて、まだ誰も立っていない教壇をぼんやりと眺めながら、ずっとその『原因』を探していた。
午前九時、鳴り出したチャイムとともに、担任の
おかげでわたしは、あたりまえなのだけどこれから先六コマも授業があることを思い出し、もっと暗い気分になった。
(先生の笑顔を見たら、少しは元気になれるかなぁ)
そんな期待をして、視線を動かす。
兼平先生は、六十歳間近のおじいちゃん先生だ。それでもいつも元気がよくて、生徒以上に明るい雰囲気を持っているため、とても人気のある先生だった。
――の、だけど。
(あれ……?)
心なしか、今日はその表情に陰があるように見えて、気にかかる。
それは周りのみんなも同じだったのか、いつもは兼平先生が来ると静かになる教室が、逆にざわついていた。
笑顔ひとつなく教壇に立った兼平先生は、教室内をゆっくりと見渡したあと、おもむろに口を開きはじめる。
「――おはよう、みんな。朝からこんな話でなんだが、みんなに哀しいお知らせがある」
その言葉が耳に至った途端、わたしの心臓が大きく跳ねた。
(『哀しいお知らせ』……?)
それは、父が亡くなったときにも聞いた言葉だった。父のことはあまり憶えていなくても、そのフレーズだけはよく憶えていた。
(まさか――!?)
わたしの『嫌な予感』は、滅多に外れない。
「今朝、三年の種市輝臣くんが自宅で亡くなっているのが発見された」