第12話 廃盤の悲しみ

文字数 755文字

 泉谷しげるの「家族」というアルバムがある。
 今ではコメディアンみたいになった泉谷だが、76年に発売されたこのアルバムは、どうしても一聴に値する。ピアノ、ギターがいちいち説得力があるし、実は泉谷、声がとてもいい。
 着目すべきはその歌詞カードにもある。手書きで、様々な字体を自由そうに駆使している。ブリューゲルの描いた小さな子ども達、あの絵画を思わせる。

 このCDは、とっくに廃盤になってしまったが、友達がわざわざどこで見つけたのか、買って来てくれた。そういえば岡林信康の「金色のライオン」も、誰かが買ってきてくれた。
 この泉谷のアルバムは、その根底にあるのは現在の泉谷にも通じる情熱だと思う。いつかとんねるずの「食わず嫌い決定戦」で大竹しのぶを相手に頑張っていた。確か、キャビアを吐き出していた気がする。

 エネルギーというのは、1ヵ所に集中すると、存外のパワーを導き出す。この「家族」は、しみじみとしたものでもありながら、ニーチェのような「超人」ぶりも発揮しているし、言語道断のわけのわからないパワーに満ち満ちている楽曲もある。

 フランソワーズ・アルディの「さよならを教えて」も気になる。さっき Wiki で見たが、もういいお婆さんになっているのに、ほんとうに綺麗である。きっと、いい歳の取り方をしているのだと思う。内面から、何か出ている。
「私のフランソワーズ」を歌っていた荒井由実は、このアルディからとったのだろうか。
 しかし、素晴らしいアルバムが、なぜ廃盤になるのだろう。加藤和彦の「シンガプーラ」が入ったLPも、とっくに廃盤だろう。
 You Tubeなんかで up されていると嬉しいけれど、ミュージシャンにとってはありがたくないかもしれない。

 本屋に行っても、大江健三郎が無かったりする。信じられない。
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