【第4話】タイキック。
文字数 1,445文字
――謎は深いようで浅い。だがその根っこには総じて強い感情がある。――どこかの作家の言葉だ。一理在る。
『ククリコ遠藤』さんのマネージャーの死から数日。俺たちは『遠藤』さんの事務所へと足を運んだ。アポイント無しの訪問だったが、遠藤さん本人が出迎えてくれた。たまたま休みとかち合ったみたいだ。有難い。
両手の埃を払い『遠藤』さんの手を取る。強く握りしめた。手はこの時の為に朝から清めてある。
アユの奴に竹刀でしばかれた。おい。そいつを何処から持ってきた? ちなみにいつもの奴(亜樹子)は息子と共に自宅へ帰ってもらっている。何か在ったら俺の携帯へ連絡がある筈だ。
遠藤さんがたじろいでいる。その困った顔が最高に決まってやがる。彼は軟派だが、心の芯は硬く、渋い。俺はそこに惹かれた。胸の内ポケットから名刺を取り出す。
フィリップが一歩前へ、そして遠藤さんに向き直った。軽く笑って会釈をしてみせる。
更に前へクライアント(歩)が鼻をこすって、その指先で問いかけた。
『遠藤』さんが悩んでいる。そこに隣りのノッポ、『ククリコ田中』が割り込んでくる。『田中』も好きだが、俺は『遠藤』派だ。長身の『田中』が首を傾げて、しゃくれた顎をこすりながら話し出した。
それは唐突に起こった。『ククリコ』2人が属する事務所の窓をぶち抜き、銀色の体躯が飛び込んでくる。ガラスの破片からアユの身体を守り相棒へ声を飛ばした。
【『C』サイクロン!】
フィリップが自身のドライバの右スロットへ『サイクロン・メモリ』を差し込んだ。
【『J』ジョーカー!】
T2『ジョーカー・メモリ』を右手に構え、左スロットに差し込む。フィリップへ頷きで合図、同時にドライバを左に倒す。
【サイクロン×ジョーカー】
だが、Σに変身した俺たちを見向きもせずに、その『ドーパント』は『ククリコ田中』へ襲い掛かった。助ける間も無い一瞬の事だった。
ドーパントの重い蹴りが、しなるように『田中』の『尻』を襲う。
――いったい、何がどうなってやがる?
奴の蹴りは『田中』を倒し『のたうたせる』のだった。
例年のトリを飾る番組『笑うっきゃない24時』をなぞるかのように――。
奴の蹴りは『田中』を倒し『のたうたせる』のだった。
例年のトリを飾る番組『笑うっきゃない24時』をなぞるかのように――。