無職とネタバレサイト

文字数 1,307文字

 突然解雇されてしまった。衝撃だった。
 わたしは元々中国の大学院にいたが、コロナの関係で二年の留学がたった半年になってしまっていた。それでも、リモートでなんとかどうにかこうにか卒業論文提出し、卒業の三ヶ月前には職を確保していたわけだが、卒業の一週間前に解雇されてしまった。理由はわたしの実力不足だったらしい。確かにこの分野は初めてだったので、実力不足はあったと思う。けれど、入って二か月の解雇はいきなりすぎて殴られたかと思った。あ、まだ生きてるわ。
 そんなわけで無事この間卒業してしまい、今もがいている。とりあえず仕事していないとなんとなく社会的にダメになっていきそうなので、ネットでフリーランスの仕事を探していた。できることは限られている上に実績はないので、とりあえず片っ端から応募した。中国の大学院に行っていたので、中国語はわかる。そこで中国語の名刺を入力する仕事(というか作業)をしているが、何時間働いても100円も超えられない。おや、これはドルなのか元なのかと思って見直してもやっぱり円だ。映画カイジで見た、地上円(日本円)の約10分の1の価値しかないペリカという紙幣が流通する地下帝国というのが存在するが、その世界に近い。地下帝国へようこそ。わたしは画面のペリカをにらむ。
 中々フリーランスの提案すら通らないが、好きなカルチャーについて書きませんか、という魅惑的な募集を目にした。とりあえずテストを受けれることになった。わたしはまずは500文字程度のアニメ・漫画紹介を書いた。それは通ったのだが、相手が運営しているサイトを見て度肝を抜かれた。ネタバレサイトである。ネタバレ、というのはブクログのあの500文字程度のネタバレを指すのではない。ページが12枚ほど使い、スクリーンショットをつけながら、詳細にネタバレを書いてあったのだ。
…これ読んだら、物語なんて絶対に読まないね…。
 もはや理性を超えて、本能がウィーンウィーン!と鳴る。これは関わらないほうがいい、と。法律的にネタバレサイトが訴えられる可能性は低いらしいが、最近ファスト映画で逮捕者が出たというニュースも見たわたしは完全にビビった。
 でも何より。わたしは著者や作品、作品に関わる全ての人々をリスペクトしている。ネタバレ読んでそこで終わってほしくない。作品の面白さはそんな上辺だけの部分ではないだろ?物語には何ら影響しないサイドストーリー、登場人物たちのやりとりの間や息づかい、物語が持つ、ストーリーとは異なるテーマ。そういったものは触れないとわからない。
 そうか、と思った。「力不足で書くことができない」という趣旨で丁重にお断りのメールを出していた。
 わたしは作品がもっと読まれるようにわたしは文章で紹介していきたいのだ。この500文字の紹介を書いている時、久々に楽しかった。こんな魅力がある、こんな部分を見てほしい、そう思って書いた文章たち。
 今幸か不幸か時間がある。なら、仕事探しつつ、好きなものを書いたらいいじゃない?そう思ったのだ。
 このエッセイは好きな本や漫画、アニメについて書いていく。
 物語が好きで好きでたまらない、すべての人へ。
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