2、デジタル作画と厳男子イズム

文字数 4,765文字

2日目以降の質問、1日目の質問へのお礼などはこちらにお願いします。


24日の座談会のメイン会場もこちらになります。


20時からスタートです

では20時になりましたので、今日も始めさせていただきます。
厳男子先生よろしくお願いします。
はい!よろしくお願いします!
ここまで、厳男子先生の作画についてお話をきいてきましたが、以前、漫画新連載研究会の方でも話題になった、独特の間とか、演出などについてお話をお聞きしたいと思います。
厳男子先生は、作品を作る際になにを一番に気をつけていらっしゃいますか?

そうですね。一番重要視しているのは漫画の読みやすさですね。

どこで誰が何をしているのかとか、フキダシの位置とか、視線の流れ、読み味みたいなものに一番気を遣って漫画を描いてます。

読みにくい漫画はそれだけで、読者が読むのを止めてしまうので、そういうところに気を遣われるのはすごく大事なの、わかります。

厳男子先生はそのあたりはかなり計算して描かれている感じなんでしょうか?

それとも、ある程度感覚でやられているんでしょうか?

読みやすさはかなり計算していると思います。目がいきやすいコマに大事な台詞を入れたり、注目してほしいものがしっかりわかるように構図を考えたり、トーンを貼ったり、基本的なことは忠実に守って描いてます。
おお。そうなんですね。あの緻密かつ大胆な画面は計算で成り立っている!

読んでいると、厳男子先生は芸術家肌で、なんとなく、感覚でお描きになられているような感じを覚えるのですが、そうでないというのが、新鮮な驚きです。

読んだときのリズムが気持ち良くなるように描いていて、そこは自分の感性でいい読み味でしかないので個性がでるのかもしれません。ここに間が欲しいとか大きいコマが欲しいとかは感性で、伝えやすくしたり読みやすくする工夫は計算でやっている感じです。
あっ、この話の関連で自分が漫画を描いているときに正面顔を意識してることを思い出しました。
なるほどです。


正面顔ですか。漫画の定説として『感情を伝えたいときは正面顔を描け』みたいなのがありますが……。

けっこう業界では有名な漫画編集者の方にある時「自分が作家に声をかける時はその作家が正面の顔を多く描くかどうかと、キャラに眼力があるかどうかで判断している。」といわれたことがあります。「読者としっかり目を合わせらる作家は舞台度胸がある。それは作家として大事なことだし、漫画雑誌の表紙のキャラが正面を向いているかどうかで雑誌の売り上げが変わるんだ。」と言ってたのを聞いたんです。
なるほです。自分も結構、意識して正面顔を使っています。

漫画において読者がキャラの感情に分かりやすく同調できると思うんですよね。

自分もそう思います。漫画は特にキャラと目が合うというのが漫画の世界に入っていくてめの大事な要素なのかもしれないですね。
映画などの映像作品だともっと客観的な絵作りをしていて、漫画よりも正面顔が少ないと思います。漫画はやはり一人で読むものというのが大きいのかもしれません。映画は大人数でも観れますからね。一対一で対峙するから「お前を見ているぞ!」みたいな。

でも映像作品でもやたらこっち見てくるものは印象に残ります。『半沢直樹』とか『シンゴジラ』は正面顔の目のアップがやたら多いと思いました。

漫画でも映画というか映像寄りの作品とか、舞台劇寄りの作品がありますよね。演出の違いや絵柄で。
そうですね。青年誌なんかは映像寄りで少女漫画は舞台劇寄りの傾向があるんじゃないかと思います。映像だときちんと背景と人物が客観的に映し出されてますが、舞台って気持ちが明るくなると照明が明るくなったり、孤独なときはスポットライトだけで背景が消えたりみたいなことありますよね。個人的に少女漫画は結構好きなんで、自分の漫画は舞台劇よりの演出を多用してると思います。ダンス漫画だし(笑)
確かにおっしゃるとおりかもしれません。青年漫画で背景の描き込みが多いのも、映像作品を意識している気がしますし、少女マンガはそれこそ、古くなってしまいますけど、「ベルサイユのばら」なんか、宝塚で何度も舞台化されるほど相性が良い感じですものね。まあ、最近はなんでも舞台になってますけどw

『ムラサキ』に関しては、舞台劇よりの演出がすごく効を奏していると思います。

舞台劇よりの演出がうまくいっていると言っていただけてホッとしています。

なかなか時間が作れないですが、舞台は漫画の取材もかねてできるだけ観に行こうと思っています。

私もたまに舞台を観にいくのが好きなんですけど、演出とかキャラクターが上手い舞台は、普通に漫画の勉強にもなるので、いままで舞台演劇観に行ったこと無いというかたは、一度は行ってみるといいのかな、と思ったりしますね。


そういうかたちで厳男子先生は舞台劇的演出をしていらっしゃるわけですけれども、それに際して、先だって見せていただいたようなデジタル作画だからこそ、見せられることって何かありますか?

デジタル作画だからこそのみせ方はあると思います。現在進行形で色々実験しています。
最近発見したことでいうとグレースケールのレイヤーで描いたコマはレベル補正やトーンカーブなどを使うとベタをより多くして画面をしめたり、明るく光に包まれてるような絵にしたり、アナログで描くよりも微妙なコントロールや試行錯誤ができるなと思いました。
上の画像はキャラの髪の毛の濃さを調節していつもは黒ベタだけどグレーの髪にして手前のベタフラッシュと上のコマの背景のベタとの違いをはっきりさせました。

後からこういう微調整ができるのがデジタルの強みかと思います。

失礼します。

こちらの画像は髪だけをレイヤー別にして描いているのでしょうか?

そうだとすれば、グレーにする場合、不透明度を弄るのではなく、色調補正で調整されているのでしょうか?

それとも上記の様にレベル補正を使用されているのでしょうか。

nizidesu09

おお! すごくわかりやすいです。デジタルであることで、前もおっしゃっていた、一番効果的な演出方法を見つけるための試行錯誤がやりやすいというところですね。

お世話になっております、たくじです

厳男子先生に質問です


デジタル作画は効率重視のために導入する方が多いと思うのですが

そのデジタル表現のあくなき探究心驚きました

ちなみにページによって違うとは思いますが

一枚の平均作画時間はどのくらいでしょうか?


nizidesu09さん質問ありがとうございます。


>こちらの画像は髪だけをレイヤー別にして描いているのでしょうか?

そうだとすれば、グレーにする場合、不透明度を弄るのではなく、色調補正で調整されているのでしょうか?

それとも上記の様にレベル補正を使用されているのでしょうか。


はい髪は別レイヤーです。レイヤーはけっこう分けて描くことが多いです。

不透明度をいじる時もありますが、完全に下地に白のレイヤーを作っている場合はレベル補正で調整します。上の髪はレベル補正で調整しています。

たくじ先生質問ありがとうございます!


>一枚の平均作画時間はどのくらいでしょうか?


まったくサボらず1日ずっと描き続けたら仕上げまで入れて1日2ページ描けるかなあ…ぐらいのスローペースですね…。平均1ページ8時間以上はかかってる気がしますorz…




森脇先生へ


>一番効果的な演出方法を見つけるための試行錯誤がやりやすいというところですね。


試行錯誤しすぎて生産量が少ないという罠がありますけどね。

少しずつペースアップできればと思っています!

描く速度は人それぞれですので! 自分も早く描けるようになりたいですね。
といったところで、本日の座談会はお開きにさせていただきます。
続きは

明日25日の午前10時から再開いたします

のでよろしくお願い致します。


それまでも、

質問など随時受け付けておりますので皆様よろしくお願い致します。


ここから続きを始めます。

質問にお答え頂きありがとうございました!

いやぁあの密度でその時間はスゴイ

手伝えるアシスタントさんにも

すごい技術が要求されそうです


八鷺一郎と申します。厳男子先生、いつも「ムラサキ」楽しく拝読しています!

二点質問させていただきます!


一点ですが…、「ムラサキ」を読んでいると、画面から伝わるあまりのパワーに圧倒されてめちゃくちゃ笑ってしまうのですが、厳先生はどの程度この笑いとか、笑わせることを意識なさっているのかが気になります。最高の絵作りや演出を追究したり、キャラクターのフルパワーを描いたりと、漫画の面白さが色々とある中で、

笑いみたいなものは何番目くらいの優先順位に入るのでしょうか。


もう一点ですが…、これも笑いと重なるかもしれませんが、切れ味のあるセリフ回しがとにかく面白くて楽しいです。キャラがずっとフルパワーなのに突然冷静になって突き放したり、迫力のシーンに似つかわしくないような庶民的なセリフが入ったり、物事に例えて真理を突くようなモノローグが入ったりと、面白くてもう完全にやられてしまうのですが、

ギャグ部分でも、シリアス部分でも、セリフ選びの時に意識なさってることや、選ぶ基準などがございましたらぜひお聞きしたいです。

なおたけと申します。よろしくお願いします。


厳男子先生の画力に憧れ最近、絵の勉強を

再びし始めたのですが、先生が画力を上げる

為に日々行う、または行っていた練習等が

あれば教えて頂けると幸いです。


また、これはやるべきではないという事が

あらばそれも教えて頂けると幸いです。

八鷺先生質問ありがとうございます!


>漫画の面白さが色々とある中で、笑いみたいなものは何番目くらいの優先順位に入るのでしょうか。


笑いの優先順位はかなり高めです3番目くらいですね。読みやすさ、リズム、笑いみたいな順番だと思います。

自分の漫画は20歳の時の自分が読んで面白いかどうかを基準に描いてます。

自分が基本的に漫画や映画や小説を読んでも泣かないですが、笑うことはよくあるので

泣かせるシーンより笑わせるシーンある方が嬉しいだろうなと思って笑いを優先しています。


>ギャグ部分でも、シリアス部分でも、セリフ選びの時に意識なさってることや、選ぶ基準などがございましたらぜひお聞きしたいです。


1番優先してるのは読みやすいかどうかです。

その過程でテンポやリズムに合うように台詞を調節しています。

何がいいたいかよりもテンポやリズムみたいなものが先にあって、ここはフルスピードでいくからこういうセリフとか、ここはゆっくりでいくからこういうセリフとかを考えてる気がします。



なおたけさん質問ありがとうございます!


>画力を上げる為に日々行う、または行っていた練習等が

あれば教えて頂けると幸いです。

また、これはやるべきではないという事が

あらばそれも教えて頂けると幸いです。


画力を上げる為に行っているかどうかとは少しずれるかもしれないですが、絵を描いていて自分がちゃんと理解していないものを描いてるなと思ったら、ものの形や構造がわかる資料をわかるまで探しています。人物だったら自分でポーズをとってみたり、解剖図で筋肉を調べたりします。

構造を理解できたものは、どうやって漫画にデフォルメして落とし込むのかを考えてます。pixivなどで自分の好きな絵を観察してどういうデフォルメをしているのか研究しています。

これはやるべきではないというのは特にないのですが、自分のルールだとわからないものをわからないまま描かずに資料をちゃんと探すというのをやっています。

厳男子先生、質問のお答えありがとうございました。

きりも良いので
このエピソードはここで閉じて最終日はつぎのエピソードで行います。
最終日の質問等もそちらでお願い致します。

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※コラボに参加するためにはログインが必要です。ログイン後にセリフを投稿できます。
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登場人物紹介

森脇かみん


漫画家。『東京ネームタンク』ネーム相談講師。


web、アプリ漫画「サイコミ」にて医療漫画「サブカルメディカル」でデビュー、連載。

連載終了後は企業案件漫画など。その他、漫画連載を企画中。

某医大医学部を中退し、漫画家になるため上京した過去を持つ。

医療知識があるので、その方面の質問に応えることもある程度可能。

日本シャーロック・ホームズ・クラブに所属する程度にミステリ好き。

厳男子(きびだんご)


漫画家。

LINEマンガオリジナルにて高校生が創作ダンスをやる漫画

『ムラサキ』連載中。


大学時代は油絵を勉強していた。しかし油絵の制作よりもダンスと格ゲーにハマっていた。

現在は茨城の田舎でたまに農業をやりながら漫画を鋭意制作中。

趣味は読書、瞑想、自転車、写真、格ゲー動画鑑賞。

ハマった漫画を繰り返し何度も何度も読んでしまうタイプ。

『シグルイ』、『ガラスの仮面』、『ジョジョの奇妙な冒険』をループした数は全国10指に入ると勝手に思っている。

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