第85話  楓蓮の過去  1

文字数 3,268文字

華凛。俺が小学校六年の時、覚えてるか?
うん。ちょっとだけなら

 お姉ちゃんが六年の頃、僕はまだ一緒に学校へ行ってた。

 僕も男の子で、お姉ちゃんも男の子だった。


 その頃からお姉ちゃんは、ケンカばっかりしてた。

 大抵、お姉ちゃんが一人で、向こうは三、四人。僕のように苛められてたけど、一人でもやり返してた。

俺は苛められてた、だろうけどさ……

不思議とやり返そうって気持ちのが強かったから、俺は別に気にしてもなかった

 まだお父さんに格闘を習う前の話なのに。
 お姉ちゃんはその頃から強かった。僕とは違う心の強さがあったんだと思う。

いじめられても強くありたい。そう思ったのは、華凛。お前のおかげだ。

俺はお兄ちゃんだからさ、お前がケンカした時、助けてやらねば誰が助けるんだ? っていつもそう思ってたからな。多分……その気持ちだけで学校に行けたんだと思う

 僕は今ので泣きそうになってしまう。
 するとお姉ちゃんは両手を広げるので、胸に飛び込んでいた。 
俺が中学になってから、何で女で行こうとしたか、話したっけ?
ううん。ちゃんとした理由は聞いてないよ。僕は女の子の方が良かったのかなって思ってただけかな
いや違う。俺はずっと男だとは思ってた。だけど女で行こうと思った理由は……
友達が出来るから。作りやすいから。ただそれだけの理由だよ
 お姉ちゃん……
お前も気付いただろう? 凛と華凛だと……男の対応が全然違うって
うん。華凛にはとっても優しかったし、楽しかった
 ビックリするほど態度が違った。向こうからすれば違う人間だと思ってるから、当然なんだろうけど、どちらも知ってる僕からすれば凄く驚いてた。
松本(まつもと)覚えてる? 本庄(ほんじょう)とか
うん! 覚えてるよ。お兄ちゃんにはケンカするけど、お姉ちゃんだととっても仲が良かったんだよね?
そうそう。ドッジボールもあいつらとやってて、お前も一緒に遊んでたもんな
 なんだか懐かしい話だった。
 あの頃はお姉ちゃん。凄く楽しそうだった。

俺の場合は、ふとしたきっかけで楓蓮で……あいつらと遊ぶ事になったんだ。

何となく楽しそうに遊んでたあいつら見て腹が立って……そしたら……今のお前のように態度が全然違ってて驚いたんだ

 僕もそうだったよ。


 華凛で遊ぼうと思った理由は、ただ腹が立った。悔しかった。



 羨ましかった。それだけだった。
 お姉ちゃんと同じ気持ちだったんだ。

だが、ここからがお前と違う。華凛には俺と同じ道は辿ってほしくない。

だから華凛であいつらと一緒に遊ぶのは禁止する

 怒ったような感じじゃなかった。


 お姉ちゃんの顔が目の前あった。しっかりとした目を向けてくるものの、どこか寂しげで、その瞳だけで「ごめんね」って謝ってるような気さえしてくるんだ。「じゃあ俺の昔話に戻るぞ」と前置きしてから、お姉ちゃんは喋り出した。


 ※



初めて楓蓮で男達と遊んで楽しかった。


そりゃ楽しいんだから、俺は学校が終わった後、楓蓮になって夢中になって遊んでた。

松本や本庄だけじゃない。楓蓮なら……友達を作るのはとっても簡単だった。

何でこんな事に今まで気付かなかったのか。そう思った

だから俺は……中学は女で行きたいと親父に頼んだ。


女なら俺にも友達が出来る。

それに松本や本庄とも、楓蓮で一緒に学校に行ける。そう思い込んでたんだ

 お姉ちゃんは……
 友達が欲しいから女になったんだ。


 一度華凛で男の子に優しくされると……お姉ちゃんの気持ちが凄く分かる。

絶対上手く行く。俺はそう思った。だけど……人生はそれほど甘くはなかったわ

 何となく分かる。
 お姉ちゃんは中学三年の頃から、暫く不登校になり、その後は職員室の隣で勉強してるって、お父さんに聞いたから。


 お姉ちゃんに何かあったのは、幼い頃の僕でもすぐに分かった。


 ※

中学一年や二年はとても楽しかった。今でも良く覚えてるし、俺は女になって良かったと身にしみて感じてた。この頃は親父も家に居たし、格闘を習いながら、楽しい時期はあっという間に過ぎていった

 朝は楓蓮お姉ちゃんで学校に行って、夜はお父さんといつも格闘を習ってた。
 僕は全然出来なくて参加せずに見てるだけ。
 今思えば何で一緒にやらなかったのだろうって後悔していた。


 僕はその頃、お姉ちゃんが中学になって、一緒に学校に行けなくなると、僕はいじめられ始める。

 お姉ちゃんの存在がどれだけ大きかったのか良く分かった。

 事ある毎にいじめられ、泣かされて帰ってくると、お姉ちゃんは激しく怒って、すぐに仕返しに行ってくれた。

 お姉ちゃんは相手の兄だろうが親だろうが、容赦しなかった。

 全治3ヶ月くらいのケガを負わした事もあった。その度にお母さんは謝りに行って、お姉ちゃんはいつも……「私は悪くない」って言って……泣いてしまうんだ。

 あ、ごめん。お話が逸れちゃった。今はそんなお話じゃない。
中学三年の頃。この時期が一番つらかった。多分生きて来た中でも屈指の不幸に見舞われた。まぁ俺も悪いんだけどさ……

 この辺の事は僕も知らない。だってお姉ちゃんは喋ろうとしないから。

 突然友達が来なくなったのも中学三年頃からだったし、お姉ちゃんに何かあったのは分かってるけど……

なぁ華凛。お前はさっきの男の子達を、どう思ってる? 友達だと思うか?
もちろんだよ。他に何て言えるの?
だよな。俺もさ、松本や本庄は友達だと思ってた。だけどな……向こうは違うんだ
……え? どういうこと?
何で華凛だと優しくなるか。何でだと思う?
それは……女の子だから?

そうだ。俺達は友達だと思ってても、向こうの男の子は……

一人の女。一人の女性として見てるんだ。だから……優しくなるんだ

 僕はお姉ちゃんが何を言おうとしているのか分からなかった。

小学六年から中学三年までの付き合い。そりゃ長い時間だった。

俺はずっと松本や本庄と仲良くやっていける。そう信じて疑わなかった。


だが……あいつらは俺の事を友達として見ている訳じゃなくて、一人の女性として意識するようになっていったんだ

それって。お姉ちゃんを好きになったって事?

……そうだな。

じゃあ華凛。さっきの友達から好きって言われたらどうするんだ?

え? そ、そんなの……やだよ!
だろ? お前も本当は男の子。俺も……男なんだ

 向こうは友達として見てくれなくなる。
 華凛で遊べば……いつかそうなってしまうかも知れない。


 そう思うと急に怖くなってきた。
 男でも友達なのに、好きって言われるなんて……

中学はな、子供から大人へなってく大切な時期だからな。

俺は周りの状況の変化に気が付かなかった。ただ楽しく遊べたらそれでいい。そう思ってた


あいつらも最初は楓蓮を友達と思ってくれたのかもしれん。だけど……

別に告白されるだけなら、断りゃいい。それで友達の縁が切れるならしょうがないと思う。

だけどな……俺の場合は一発目から酷いもんだった。一番ショックで今でも忘れられん。あれのせいで俺は人から好意を持たれる事に……恐怖を植え付けられた

 そしてお姉ちゃんは小さな声で「松本と本庄に襲われた」と、言ったんだ。


 襲われた?

 僕には何の事か分からないと説明すると、その前にお姉ちゃんは、

まぁ。何事もなく逃げれたけどな。逆にボコボコに殴り倒してやったけど。

あの日ほど……親父に格闘習ってて良かったと思った日はねぇ

ねぇお姉ちゃん。襲われたって?

う~ん。力ずくで俺を襲ってエッチな事しようと思ったんだろうな。


華凛……そりゃ犯罪だ

 は、犯罪?
女にとっては好きでもない男にそーいう事されるのは、死ぬ事と一緒なんだ。俺がこの世で一番許せない犯罪。そう思ってる
警察に捕まるの?
俺があの時、警察に届けりゃあいつらは捕まってるよ
 犯罪。警察。そう聞いて僕は震えてしまっていた。
 怖がっているのを察したお姉ちゃんは、頭をなでなでしてくれる。なのに……
ここから俺の人生は一気にどん底だ。思いっきり転がり落ちていったからな
 そんな場面でふふって笑って欲しくない。 

俺は女では生きていけない。それを嫌という程味わったんだ。

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登場人物紹介


 ★登場人物でも若干のネタバレを含みます。第一部からお読みいただきますようよろしくです。

 ★逆に第二部の登場人物を先に読んでから、第一部をお読み頂きますと、別の意味で楽しめます。

 

 ★読者視点は神視点。登場人物の心の声も聞こえます。(フキダシの色がこの色)

 ★ 黒澤 蓮 くろさわ れん


 本編の主人公。高校一年

 男女入れ替わり体質。
 
 弟の凛と共に、新天地で新たに生まれ変わろうと、楽しい学校生活を送ろうとする。友人作りに重きを置き、人との付き合いにはとても慎重である。


 自分自身の事よりも、仲間の為ならば凄まじく有能になる。

 ★ 白峰楓蓮 しらみね かれん


 蓮の女性の姿。類稀なる美少女だが本人にはあまり自覚がない。


 外部には黒澤家の親戚(蓮の姉)となっている。

 楓蓮では世間との関わりあいを最小限にしてきたが、徐々に一人の女性として目覚め始める。

 

 自分を理解してくれる人間が増えるたびに楓蓮は飛躍的に成長してゆく。  

 ★ 黒澤 凛 くろさわりん


 小学校六年生

 男女入れ替わり体質。

 

 兄である蓮を慕い、とっても素直で女の子のような性格。
 ことある毎に兄に甘えてしまい、いつまで経っても、子供のままなので、蓮は凛の将来をとても心配している。

 

 二部中盤で凛オンリーの章があります

★ 白峰 華凛 しらみねかりん


 凛の女性の姿。

 外部との接触が無いので、彼女の存在を知るのは黒澤家の秘密を知るものだけ。

 楓蓮と違い、おしゃまさん。

★ 黒澤 玲斗 くろさわ れいと

★ 白峰 麗華 しらみね れいか


蓮や凛のお父さん。ただいま遠方で仕事中。

麻莉奈や平八。ティナとは大親友。


後半から再び登場します

★ 美神聖奈 みかみせいな


 高校で蓮と同じクラスとなる。実は小学四年生までの幼馴染。

 容姿端麗。成績優秀。運動神経抜群。リーダーシップ抜群。お金持ち。


 高校当初から蓮と関わりを持ち、お互いに影響されてゆく。無二の親友?

 記憶喪失だったが、徐々に昔の事を思い出してゆく。


 二人目の主人公。

★ 平八 へいはち 


 聖奈専属の運転手。

 黒澤家の秘密を知っており、蓮の親である麗斗(れいと)とは旧知の仲

 おっぱい職人。ツイッタのフォロワーは10万以上の有名人。

 作中でも最強だと言われるが……

★ 白竹 美優 しらたけ みゆう

 

 男女入れ替わり体質

 蓮と同じクラスとなる。ピンクの髪が目立つ美人。とても内気で、語尾が変になる。

 自分の家の喫茶店で働いている事になっているが、実は魔優と入れ替わっている

 歌が上手く、全国でも有名な絵師でもある。(エロ同人が本業)

 

 三人目の主人公。 

★白竹 美樹 しらたけ みき


 白竹美優の男性の姿。

 外部では白竹魔樹と名乗っているので、彼を知るのは家族と秘密を共有する人のみ。

 主に喫茶店で厨房担当したり、サイクルの都合上、学校でも魔樹として振舞う。

 男の子の身体で遊ぶのが大好き

★白竹 魔優 しらたけ まゆう


 男女入れ替わり体質。

 外部では白竹美優と名乗っているので、彼女を知るのは家族と秘密を共有する人のみ。

 主に喫茶店で接客担当。サイクルの都合上、学校でも美優として振舞う。

 心の中は女の子なので、こちらが真の姿となる。

 四人目の主人公

★白竹 魔樹 しらたけ まき


 魔優の男の姿。外部に知られているのは魔樹である。

 蓮の隣のクラスで、常にクール。成績も良く、空手や合気道を習得。

 学校内では魔樹王子と呼ばれるほどモテる。


 自分の家の喫茶店で働いている事になっているが、実は美優と入れ替わっている

 乙女ゲー大好きのツンデレ。

★白竹 麻莉奈 しらたけ まりな


美優。魔優の母。入れ替わり体質。


とてもピアノが上手く、蓮はプロの犯行だと断定。

双子の母だけあり、とても美人だが色々とヤバい人。

男の姿は、でかい上にマッチョらしい。


★ じいじ


 白竹家のおじいさん。喫茶店のオーナー。

 小太りでツルっぱげ。チョビ髭が可愛い。

 厨房担当で楽しい事があると、その場でクルクル回りだす。

★ 染谷龍一 そめやりゅういち


 男女入れ替わり体質。

 蓮と同じクラスとなり、前の席という事で付き合い始める。

 わりと積極的で、クラスでも人気がある。

 楓蓮に一目惚れし、ずっと彼女を追い求める。

 オムライサーでありポニテマニア。

 

 五人目の主人公

★山田 龍子 やまだ りゅうこ


 龍一の女性の姿。

 楓蓮を追って同じ喫茶店で働く事になる。全国でも有名な山田組の人間。

 ケンカが強く、蓮も認めるほど。

 楓蓮に近づく男を排除しようとする俺っ子。

★山田 虎子 やまだ とらこ


男女入れ替わり体質。龍一の弟(妹)

全国統一を夢見る女の子。既にチームを結成しており、チームヴァルハラと名づける。

口調はキツいが、兄弟には頭が上がらない。

デコトラならぬデコチャリで街中を暴走する。

★染谷 翔一 そめや しょういち 


男女入れ替わり体質。龍一の兄(姉)

龍一が恐れる唯一の兄貴。百人でかかっても勝てないらしい。

ただいま、新婚生活真っ最中。

★染谷 桜 (そめや さくら)


 翔一の奥さん。普通の人間。

 とても清楚で大人しそうな美人だが染谷三兄弟は彼女に対し頭が上がらない。

 翔一を女らしくする為、日々調教中。

★百済 紫苑 くだら しおん


 高校二年。軽音部。実家はソッチ系統の百済組。

 楓蓮達と一緒に喫茶店でバイトを始める。関西弁ちっくな喋り方だが、とても優しく後輩想い。

 蓮の同じクラスである、米山まゆこと、坂田沙織は小学校からの付き合い。

 マイブームはマジョリーナちゃん(ミニチュアダックス)を可愛がる事。

★坂田 沙織  さかた さおり


 高校一年。蓮と同じクラス。

 いつもニコニコ。おっとりとした口調でマイペース。

 紫苑と同じ軽音部。ベース担当。

 親が犬のブリーダーで楓蓮に二匹のダックスを譲る。

★ 西部

 蓮と同じクラス。

 事あるごとに蓮に絡んでくるが、その目的は聖奈や美優と接点が持ちたいが為である。

 ツイッター名では「モントゴメリー」。おっぱい職人を神と崇める。

★真鍋

 蓮と同じクラス。西部の友達。

 頭は良く、テストでも上位だが、彼もおっぱい職人を神と崇める。

 ツイッター名は「穴バースト」

★米山 まゆこ (だんじりバージョン)


 蓮と同じクラス。坂田とは昔からの親友で、紫苑は先輩に当たる。

 魔樹王子にベタ惚れてしまい、蓮に紹介してもらえるよう頼んだ。

 バスケ部所属。一年なのに相当の実力を持っている。

★ 三輪 加奈子 みわ かなこ

 

 蓮と同じクラス。坂田沙織の友達で幼稚園からの付き合い。

 男の子同士がホニャララするのが好き。

★ 清原 愛美 きよはら まなみ


 魔樹と同じクラス。米山まゆこと中学時代からの付き合い。

 ちなみに魔樹王子と呼び出したのはこの子。

★ 梶谷


 蓮と同じクラス。西部の友達で小学生からの付き合い。

 バスケ部所属。一年でレギュラー筆頭。

★高坂


蓮と同じクラス。梶谷の友達。

ギャルゲーのアイドルプリンセスをこよなく愛する男の子。

★ 鼻


楓蓮が命名。

その昔、蓮にケンカ売ってきたり、美優をナンパしたり、ろくでなし男であったが楓蓮や龍子にボコられる。だが楓蓮に鼻を治してもらったと勘違いしている。

楓蓮に殴られてから、とんでもなく優秀な男へ変貌する(だがケンカは弱い)

★ヴァルハラメンバー 


 只今メンバーは八人。

 虎子率いるチームヴァルハラメンバー。俗に言う不良だが、楓蓮。龍子。虎子には従順。

 実は全員イケメンレベルだが、とにかく頭も弱く、ケンカも弱い。

 NO表示されており、変なヤツが混じってます。 

 竜王 冴子 りゅうおう さえこ


 高校一年。西部曰く、彼女と美神聖奈。白竹美優を三大美女認定している。

 いつも笑顔。とても愛想が良い彼女だが……

 王二朗曰く、超危険人物。鞄にスタンガンを隠し持ち、女の子を襲うらしい

★ 播磨 王二朗 (はりま おうじろう)


 高校一年。竜王冴子と共に登場。190センチの巨漢であり極道顔。

 とてもじゃないが高校生には見えない容姿に、シルエット姿となっている。

 警官とエンカウントすると、ほぼ職務質問されてしまう。

 ゴリラのモノマネが神がかっている。

★竜王 将哉 りゅうおう しょうや


 萌ゴリと共に現れた男性。とてもイケメンだが萌にナンパーマンであると暴露されてしまう。萌は恋人だと告げるが……楓蓮は最初から将哉を警戒する。 

★稲坂 萌 いなさか もえ


 楓蓮が早朝マラソンに出かけた際に知り合った女性。

 巨漢で筋肉質なので、楓蓮は男だと勘違いするほど。

 とても気さくでしゃべりやすい印象を受けた萌ゴリ。ちなみにラッキースケベ体質。

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