筆持て立て。剣を取る者は皆、剣で滅ぶ【第七話】
文字数 903文字
☆
水戸芸術館の横に建っている塔、水戸アートタルタロス。
そこは芸術の奈落。
土浦九龍と敵対関係にある、常陸国のアートの根城。
アートタルタロスは、タワーである。
サグラダ・ファミリアのように、永遠の未完成なのではないか、と呼ばれている高い高い、塔である。
なんのために建てられた塔なのかというと、シャーマニスティックな理由で、である。
塔であること自体も、レヴィ=ストロースが言うところの〈トーテム〉の機能に似ている。
命令塔、という言葉があるが、命令を下す塔、というそのまんまの意味の塔でもあった。
アートの持つ奈落の呪力で駆動する、それは〈裏政府〉の機構である。
そこから、〈タルタロス機構〉と、一部の人々からは身も蓋もなく呼ばれている。
水戸芸術館の受付に着く。
「ようこそおいでくれました、百瀬珠お嬢様」
アートタルタロスの管理人でもある、芸術館の館長の、ブレイク・山田が、球総長に向かって、頭を下げて、挨拶をした。
「我が輩の力が、必要になるときが、そろそろ来るのじゃな?」
総長が言うと、
「如何にも、その通りでございます」
と、管理人は答える。
「後ろに控えている百瀬お嬢様の〈飼い猫〉の方々にも、説明が必要でしょうな。……ご自身の家系の話をこの〈猫〉たちに話したことは?」
「ないのぉ」
「そうでしょう。これはわたしから説明致したく存じます。よろしいでしょうか、百瀬お嬢様」
嘆息してから、腰に手をあてた総長は、
「軽くで構わんからの。ざっくりと頼む」
と、管理人に言う。
「〈対魔術異能守護職 〉。それが、ここにいる百瀬珠お嬢様の一族であり、裏政府〈元麻布呪術機構〉の要職でもあるのです。暗闇坂家を影で支えてきたのが、この〈対魔術異能守護職〉で、その祖は百瀬ケイキ、という人物なのです。百瀬ケイキとは、もとは京都上京区にある禁裏道場 の師範である人物なのでした」
アートタルタロス管理人、ブレイク・山田の話し声が、芸術館の館内に響く。
それは隠れて話す内容でもない、と管理人は判断したのだろう。
もっとも、今日は休館日で、本来ならば芸術館も開いてないところに、お邪魔しているのだが。
管理人は、話を続けた。
水戸芸術館の横に建っている塔、水戸アートタルタロス。
そこは芸術の奈落。
土浦九龍と敵対関係にある、常陸国のアートの根城。
アートタルタロスは、タワーである。
サグラダ・ファミリアのように、永遠の未完成なのではないか、と呼ばれている高い高い、塔である。
なんのために建てられた塔なのかというと、シャーマニスティックな理由で、である。
塔であること自体も、レヴィ=ストロースが言うところの〈トーテム〉の機能に似ている。
命令塔、という言葉があるが、命令を下す塔、というそのまんまの意味の塔でもあった。
アートの持つ奈落の呪力で駆動する、それは〈裏政府〉の機構である。
そこから、〈タルタロス機構〉と、一部の人々からは身も蓋もなく呼ばれている。
水戸芸術館の受付に着く。
「ようこそおいでくれました、百瀬珠お嬢様」
アートタルタロスの管理人でもある、芸術館の館長の、ブレイク・山田が、球総長に向かって、頭を下げて、挨拶をした。
「我が輩の力が、必要になるときが、そろそろ来るのじゃな?」
総長が言うと、
「如何にも、その通りでございます」
と、管理人は答える。
「後ろに控えている百瀬お嬢様の〈飼い猫〉の方々にも、説明が必要でしょうな。……ご自身の家系の話をこの〈猫〉たちに話したことは?」
「ないのぉ」
「そうでしょう。これはわたしから説明致したく存じます。よろしいでしょうか、百瀬お嬢様」
嘆息してから、腰に手をあてた総長は、
「軽くで構わんからの。ざっくりと頼む」
と、管理人に言う。
「〈
アートタルタロス管理人、ブレイク・山田の話し声が、芸術館の館内に響く。
それは隠れて話す内容でもない、と管理人は判断したのだろう。
もっとも、今日は休館日で、本来ならば芸術館も開いてないところに、お邪魔しているのだが。
管理人は、話を続けた。