夕立

文字数 292文字

八月を解放する曲の流れていく夕立が
耳を閉ざした万華鏡に映る
自由の約束された手紙
遠い風景が映り込んだ流れに
暗い蝋燭の雰囲気を伝える
名前の知らない苦しみの影が
紫色の音符の空間に
輝いては消えていく穏やかな夕暮れと
忘れかけていた蟻の無数の音楽
響いている地続きの水の
青い絵の具で暗い影が
静かに待つ光の渦へと
それは見知らぬ名前で
あの人は海の淵に描かれた
静かな湖の形
ぼんやりと輪郭が浮かぶ
長いトンネルの途中に
古い悲しみが奇跡に変貌し
時間が巻き戻る時計の
先にある地図の跡
子供たちの長い沈黙は
光を飛ばす視線の集合に
今日も普段の夜の音が
静まり返る耳から響く
安らぎとの約束を繋いで
歩き出すのは途中までだった

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