潮騒が揺らぐその間で 序章
文字数 556文字
闇夜の静かな海だった。穏やかな風が沖に向かって流れていた。空は、少しずつ白く明るくなった。
ミチカは、波打ち際に佇んでいた。海から視線を陸に移した。数日前の記憶が、少し色褪せて遠く感じた。
「こんなものかな……。」
ミチカは、落胆を自嘲で誤魔化すように呟いた。淡い群青色に移りゆく七月の空を見上げた。
学期末試験が発表され早朝、海岸沿いの旧道を自転車で巡った。
入り江の砂浜が見渡せる景色に魅入られたのだろうか。自転車を停めて、柔らかな潮風に誘われ視線を向けた。その景色の中に、長い髪をなびかせた女子が佇んでいた。波打ち際で海を眺める白いサマードレスの姿にミチカは、想い出せない懐かしさを感じた。
女子の後ろ姿に魅かれながらも、微かな杞憂を覚えた。未だ知らない将来を覗き見するような不安定さを感じとり危うく見えたからだろうか。
ミチカは、困惑気味に様子を窺い続けた。不意に、女子が振り返り海を背にした。一瞬、視線が合ったように思えた。
女子は、静かな足取りで岬に向かう遊歩道に消えていった。
あの光景が、ミチカの中で欠片となって剥離していくのを静かに見送った。その後も暫く独り波打ち際にいた。何も起こらないのを失意のままに納得していた。
ミチカは、儚い期待を諫めるように力いっぱいペタルをこいで町に引き返した。
ミチカは、波打ち際に佇んでいた。海から視線を陸に移した。数日前の記憶が、少し色褪せて遠く感じた。
「こんなものかな……。」
ミチカは、落胆を自嘲で誤魔化すように呟いた。淡い群青色に移りゆく七月の空を見上げた。
学期末試験が発表され早朝、海岸沿いの旧道を自転車で巡った。
入り江の砂浜が見渡せる景色に魅入られたのだろうか。自転車を停めて、柔らかな潮風に誘われ視線を向けた。その景色の中に、長い髪をなびかせた女子が佇んでいた。波打ち際で海を眺める白いサマードレスの姿にミチカは、想い出せない懐かしさを感じた。
女子の後ろ姿に魅かれながらも、微かな杞憂を覚えた。未だ知らない将来を覗き見するような不安定さを感じとり危うく見えたからだろうか。
ミチカは、困惑気味に様子を窺い続けた。不意に、女子が振り返り海を背にした。一瞬、視線が合ったように思えた。
女子は、静かな足取りで岬に向かう遊歩道に消えていった。
あの光景が、ミチカの中で欠片となって剥離していくのを静かに見送った。その後も暫く独り波打ち際にいた。何も起こらないのを失意のままに納得していた。
ミチカは、儚い期待を諫めるように力いっぱいペタルをこいで町に引き返した。