4-6.凶弾

文字数 1,090文字



お姫様だっこ状態で美羽と沖津は旅館を走り目指した。



「な・・・なんなの?あいつ・・・」


「古い知り合い」



チュインチュインと2人の周りをライフル弾が地面に衝突して跳弾が飛ぶ。



江ノ島で桂木凛子が殺された時と同じだ、やはりあいつの仕業だったか。



沖津は木の影や岩壁に隠れてライフル弾の襲撃から美羽を身を守りつつ、旅館を目指して走った。

沖津と美羽を狙って飛んでくるライフル弾が、二人の周囲の木々に命中し木の中に埋め込まれた。岩に当たった弾丸は岩の表面で弾かれた。

ライフル弾やその跳弾は、沖津の腕や太ももを2、3回掠めたが、沖津は美羽にかすり傷一つ負わせなかった。

沖津は美羽を守り抜き、命からがら、二人は旅館に辿り着き、玄関ドアを開けた。





「おばあちゃん!!」



福江の周りを数人の戦闘員が取り囲んでおり、福江は玄関口で大量の血を流して倒れていた。

✳︎

戦闘員達が沖津と美羽に飛びかかる。

沖津は冷静に照準を合わせて正確に戦闘員一人一人の額を撃ち抜いていく。



怯んだ戦闘員達が奥に隠れ一旦しゃがみこむと銃を構え一斉に応射してきた。

沖津は美羽を庇い柱の影に身を隠す。
銃弾が二人の周りを飛び交う。



(少し数が多いな)



沖津は拳銃の弾を装填しつつ、応射してくる戦闘員達をどう撃退するか思考を巡らせた。

「おばあちゃん!福江おばあちゃん!!」



血まみれで倒れる福江には無数の刺し傷があり、そのいくつかは完全に致命傷だった。誰の目にも既に福江が息を引き取っていることは明白だった。



美羽は喚いている。


奥の通路には坂崎室長が倒れていた。傷ついているが、彼はまだ息がありそうだ。



と、その時、窓の外からライフルを構える鬼頭が見えた。
鬼頭はライフルを沖津と美羽のいる柱に向ける。



(・・・まずい!)



「おばあちゃん!!」



美羽が倒れた福江に向かって飛び出す。



「出るな!!」



鬼頭のライフルが美羽に照準を合わせる。



ズキュン!!



次の瞬間、美羽を突き飛ばした沖津の左腹部を鬼頭のライフル弾が貫いた。



・・・ドオッ



沖津が倒れる。





「・・・え・・・?」



美羽がよろよろと起き上がって後ろを振り向く。



「お・・・沖津さん・・・?」



沖津は動かなかった。



脅威が無くなったと判断した戦闘員達が、呆然と立ち尽くす美羽を取り囲み、その両腕を捕らえた。


そこに鬼頭が旅館内に入ってきた。



鬼頭が合図をすると、美羽は放心状態のまま、戦闘員に連れ去られ、トラックの中に入れられた。



鬼頭は倒れた沖津を一瞥すると、無表情のまま、旅館から去っていった。
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