第29話  病院と臓器密売業者から着手

文字数 2,544文字

さてと、現時点で想定できる敵を上げると……
創生ファーマ。臓器密売業者、それも多分「肉屋」だ。チャイニーズ・マフィア、エウケ・レ・レが雇った傭兵。


参照:創生ファーマと臓器密売業者について

第1話 「気づくより速く」https://novel.daysneo.com/works/episode/6bf9fb09412ced236cc84c10e365ed09.html

第2話 「敵は誰だ」https://novel.daysneo.com/works/episode/9ed65056a80909e9cae3a943f8ba04dc.html


参照:チャイニーズ・マフィアについて

第10話 「突然の攻撃」https://novel.daysneo.com/works/episode/359a84b5f257e49b7ebd9dea047e5deb.html

第13話 「尋問」https://novel.daysneo.com/works/episode/98d93061fac2e60522156616dde39471.html


参照:エウケ・レ・レの傭兵について

第11話 「二股をかけやがって」

https://novel.daysneo.com/works/episode/b5f248ed22d7ed55bcda01a078040ff8.html

チャイニーズ・マフィアの裏に中国政府の諜報機関が隠れている可能性があります。エウケ・レ・レの傭兵たちはまだ動き出していないかもしれません。
人質交換を求めてきた相手は、和倉さんは拉致して、私たちのことは自動兵器で皆殺しにしようとした。あれは、CIAと国防総省のどちらか、または両方だった可能性がある。


参照:第18話 「人質交換/成功を目前に」

https://novel.daysneo.com/works/episode/9ab2a0c17414cf9ef80cff907f526f69.html

自動兵器で皆殺しにされそうになったのは、湾岸IRのホテルの時と同じじゃん。無人の飛行船から機銃掃射してきた。


参照: 第8話「機銃掃射」

https://novel.daysneo.com/works/episode/49cefcd24e2d62df59c0f51deff148c7.html

同じじゃないっすよ。ホテルの時は、和倉さんまで殺されるところだった。でも、人質交換を求めてきた連中は、和倉さんは生かして連れ去ろうとした。
それじゃ、無人飛行船を使ったのは「肉屋」で、人質交換を要求してきたのはエウケ・レ・レの傭兵だろ。連中がもう動き出してんだよ。
CIAと国防総省の可能性も否定できない。


参照:アオイ・慧子とCIA、国防総省の関係について

第4話 「和倉の警護を止める?」https://novel.daysneo.com/works/episode/f5bc56d07046e999c18d9d12343550fc.html

CIAと国防総省が和倉に何の用があるんだ?
和倉さんが開発した新しい抗マラリア薬にアメリカ政府が関心を持っている可能性があります。
マラリアはアフリカの経済発展のネックです。「マラリアを制する者は、アフリカを制する」と言ってもいいんすよ。
だから、アフリカに大きな影響力を持つ中国政府がマラリアとの闘いでもリーダーシップを取るために、和倉さんを手に入れようとした。自分たちは表に出ずに、チャイニーズ・マフィアを手先に使った。
その中国に対抗するために、アメリカが和倉の抗マラリア薬を手に入れようとしたってか? アメリカと中国は激しく対立してるから、ありそうな話ではあるけど。

待てよ、製薬業ではアメリカの方が日本より進んでるんだろ。 自分たちで開発すりゃいいじゃないか?

バイオ医薬品ではアメリカが先を行ってるけど、有機化学で作る低分子医薬品では日本は決して負けてないんすよ。そして、低分子医薬品の方が安く作れるんで、アフリカ支援には向いてる。
それに、和倉さんのクスリは基礎研究と非臨床研究まで済んでいます。アメリカの製薬会社が一から開発するより、和倉さんとクスリを丸ごと横取りした方が、スピーディにクスリを製造販売できます。
なるほどね。
それにしても、敵が多すぎますね。創生ファーマ、臓器密売業者、チャイニーズ・マフィア、エウケ・レ・レの傭兵、CIAと国防総省――これを一度に相手にしたら、アオさんの放電能力があっても、敵いそうにありません。
敵の数を減らすしかないわね。まずは政府がらみでないところを選んで、聖命会総合病院と臓器密売業者から潰していきましょう。
二時間後、慧子と世津奈は、聖命会総合病院の混み合うロビーにいた。
「虎穴に入らずんば虎子を得ず」とは言うものの、こうして敵の本丸に乗り込むと、さすがに緊張しますね。私たちの顔は売れているし、ここは、周り中、監視カメラだらけです。
大丈夫よ。こんな大勢の目があるところでは、病院の連中や臓器密売業者は襲ってこない。応接室なり会議室に通してから襲ってくるでしょうけど、その時に襲撃者を捕らえるのが私たちの狙い。
そうですね。
二人が総合案内に近づくと、ブースの中で女性が立ちあがって二人を迎えた。
いらっしゃいませ。どのような御用件でしょうか?
(女性に名刺を差し出しながら)フリージャーナリストの大門マリコと申します。
私は助手の榊未知子です。名刺を切らしていて、申し訳ありません。
フリージャーナリストのお二人が、当院にどのような御用件でしょうか?
医薬品研究者の間に、新薬の非臨床試験には実験動物でなく人間の臓器を用いるべきという主張があります。その件に関して、こちらの院長先生のご意見を伺いたくて、おうかがいしました。
院長は多忙で、半年後までスケジュールが埋まっております。当院の広報マネジャーがお話をうけたまわります。
では、是非、広報マネジャーの方とお会いしたいと存じます。
それでは、ロビーのソファーで少々お待ちください。広報マネジャーの準備ができましたら、私がお声かけいたします。
お手数おかけします。
ありがとうございます。
慧子と世津奈はソファに腰を下ろし、目を見合わせて小さく微笑んだ。
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登場人物紹介

山科 アオイ  17歳


アメリカ国防総省が日本に設置した秘密研究所で放電能力を持つ生体兵器に改造された少女。

秘密研究所を脱出した後、国家や企業から命を狙われる個人を保護するグループ「シェルター」に拾われ、「シェルター」が保護している人々のボディガードとなる。

山科アオイは、国防総省から逃れた後に名乗っている偽名。本名は、道明寺サクラ。


《放電能力》


※非接触放電  有効射程 20メートル

・単独のターゲットに致死的な電流を浴びせる設計だったが、アオイを暗殺兵器にしたくなかったレノックス慧子が故意に改造手術をミスしたため、致死量の放電はできない。

・設計にはなかった複数のターゲットを同時に攻撃する能力が発現している。


※接触放電  対象と身体を接して放電し対象を金縛りにする事ができる。


レノックス 慧子/アオイの相棒  37歳


元は、アメリカ国防総省で特殊兵器を開発する技術者だった。

日本人の両親の間に生まれたが、両親が離婚し母がアメリカ人と結婚したため、レノックス姓を名乗っている。


慧子を含む5人を「放電型生体兵器」に改造した。そのうち4名は職業軍人で改造されることを志願した者たちだったので、設計どおり致死能力を持たせた。

しかし、国防総省に拉致された民間人であるアオイに対しては、設計上求められていた致死能力を与えなかった。このため、アオイは一度も暗殺兵器として利用されていない。

アオイが秘密研究所を脱出するのを助け、後に自らも国防総省を離脱してアオイに合流して、2人で「シェルター」のボディガード役を務めている。

M 年齢不明


「シェルター」内でのアオイと慧子の「世話役」。アオイ達と「シェルター」の関係を調整する。

「シェルター」は組織に追われる個人をかくまうが反撃はしない非抵抗主義を貫いていたが、強力な戦闘力を持つアオイが加わっったため、一定限度の自衛力を持つ方向に転換した。

しかし、アオイ達の活動と「シェルター」本来の非抵抗・非暴力主義との関係は微妙で、Mは、常に難しい舵取りを求められる。

元はロボット工学の権威で、現在でも、アオイと慧子に様々な偵察・攻撃用の超小型ロボットを提供している。

宝生 世津奈(ホウショウ セツナ) 35歳


産業スパイ狩りを専門の調査会社「京橋テクノサービス」の調査員。

以前は、警視庁生活案全部生活経済課で営業秘密侵害事案を扱っていた。


ITとクルマに弱く、この方面では相棒のコータローに頼りっきり。


ホワっと穏やかだが、腹が据わっていて、必要とあれば銃を取って闘うこともためらわない。

コータロー(本名:菊村幸太郎) 27歳


調査員。宝生世津奈の相棒。

一流大学の博士課程(専攻は数理経済学)で学んでいたが、アカデミック・ハラスメントにあって退学。2年間の引きこもりを経て、親戚の手で「京橋テクノサービス」に押し込まれる。

頭脳明晰で、IT全般に強い。空手の達人で運転の腕も一流。


アカハラの後遺症で「ヘタレ」の傾向がある一方、自分が納得しさえすれば身の危険をいとわない勇敢さも持ち合わせている。

和倉 良一  35歳


日本有数の製薬会社、創生ファーマの研究員。

創成メディカルは、公には人工的に合成した臓器を新薬開発に用いているとしているが、実は、実は手術患者から摘出した臓器を用いていた事を知り、会社を内部告発する決意をする。その直後に、何者かかに命を狙われ、「シェルター」に助けを求めてくる。

アオイと慧子の警護対象者。

近江 正一 50歳


産業スパイ専門の調査会社「京橋テクノサービス」の付属救急センターで働く外科医。NGO「国境を越えた医師団」の一員として紛争地の野戦病院経験が長く、腕は確か。ただ、スピードを重んじるあまり、仕上げが荒い傾向がある。

頭に傷を負ったアオイを会社に秘密で応急処置した後、知人の外科医、川辺憲一にゆだねる。

川辺 憲一 28歳


若き天才外科医。大学病院の医局で起こったある事件が原因で病院を追われた上に医師免許も剥奪された。しかし、本人は、「運転免許のような更新制度のない医師免許は、終身免許だ」とうそぶき、闇で医師稼業を続けている。近江医師とは、長年の知り合い。

イケメンかつ女性大好き男で、彼の自宅兼マンションには女性の出入りが絶えない。一方で、公私を厳しく分ける潔癖さも示す。

佐伯 達彦 47歳


警察庁生活案全部の特命係長。階級は警視正。

総理大臣のイスを狙う野心家で、警察庁警備部に強いライバル意識を持っている。

人間を組織内の位置づけでしか評価できない男。警察を辞めた世津奈を警察時代の階級で呼び続けて、世津奈を鼻白ませる。

ただし、世津奈の粘りと度胸は評価している。

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