『この人を見よ』

文字数 1,296文字

『この人を見よ』/ニーチェ著・手塚富雄訳
「神は死んだ」で有名なニーチェさんが、生涯最後に記した自伝的な本。
いやはやすごい。

目次にいきなり並ぶ三つの章題が、

・なぜわたしはこんなに賢明なのか
・なぜわたしはこんなに利発なのか
・なぜわたしはこんなに良い本を書くのか

ですよ。

それぞれ、ホントに本気で、ニーチェさん自身がなんでこんなに賢明で利発で、そしてこんな良い本を書くのかをものすごい勢いで綴っています。
その勢いといったらもう天上天下唯我独尊レベル。
自分の書いた「ツァラトゥストラ」は人類というビラミッドの頂点からさらに上空千マイルにまで達していて、読んで本当に理解できる者(超人)がもしいたら、その高みから人間存在を俯瞰できるだろう(ただしドイツ人をのぞく)なんて事を真顔で書いているわけです。(ニーチェさんこの本でさんざんドイツ人ディスってます。ドイツ人なのにね)

そして、「神は死んだ」というコンテクストの意味も、この賢明で利発なところから必然的に導き出されてしまうのです。(哲学論の解説はここではしませんが、ちゃんと超人でない常人の私にもわかりやすく書いてくれています。なるほどなっとく)
難解であろう著作をいくつか並べて(「ツァラトゥストラ」ももちろんあります)どうしてそれらを書いたのかのニーチェさん視点での解説が続き、最後の章、

・なぜわたしは一個の運命であるのか

で、こうした、神や宗教、真理と呼ばれるもの、常識や道徳すべてにどうして戦いを挑まざるを得なかったのか、一般で悪徳とされていることこそが「正しい」行いで、わたし=ニーチェは、なぜその道を堂々と歩まざるを得なかったのか。といったことが綴られています。

難しい哲学書と思って最初寄りついてなかったのですけど、読んでびっくりこんなに見事にキャラが立ってる人の暴言全力疾走文章だったとは。(これ、褒め言葉ですよ。わたしこういう人大好きです。あんまり近くには行きたくないけどねw)
ニーチェさん没年が1900年ですから、100年以上前の人なんですよね。この本を書いた後に精神的に違う世界に旅立たれてしまい、そのまま亡くなられたそうです。
思想的に100年早すぎた感じ。今なら理解できる、100年前の天才の文章とおもいました。

※関係ない(と思う)けど、マイケル・ムアコックの『この人を見よ』ってキリスト教SFがあるんですよね。あれもキリスト教かなりDISってるので、なにか関係あるのかなー?
ちなみにこちらがムアコック版の『この人を見よ』です↑
(おまけのひとこと)

とうとうこの日が!

こちら、バレバレですがトークメーカーさんで別に連載しています『もしも敬虔な女子高生が〈神は死んだ〉のニーチェ作『ツァラトゥストラ』を読んだなら』の元ネタというか、書くきっかけとなった本です。

こちらのお話をSNS(Google+)でしていた時に、「ツァラトウストラ」のいろんな翻訳の話もでまして、いろいろ読み比べたら面白そう! というのがそのままあちらのお話の素になった。というわけです。(あ、ネタバレしてしまった!><)

Original Post:2017/08/19

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登場人物紹介

神楽坂らせん

読書の合間に本を読み、たまにご飯してお茶して、気が付けば寝ている人です。一度おやすみしてしまうと、たいていお昼ぐらいまで起きてきません。

愛読書は『バーナード嬢曰く。』

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