第二十階層 再

文字数 1,127文字

 準備を整え終え、ぼくはロビーにあった水晶に手をかざした。すぐにトゥナと呼ばれた少女が頭に浮かぶと、小さく頷いてみた。すると一瞬体が軽くなったかと思えば、すぐにトゥナのいる第二十階層へと到着した。今度こそ負けないという気持ちをしっかり持ち、ぼくは再度扉を開いた。
「……またきたのか。よそもの」
 サルパと話している途中だったのか、トゥナはサルパが作る輪の中に体を埋めながらこっちを見ていた。ぼくがデッキを構えると、トゥナも輪から飛び出し杖を構えた。サルパも戦闘態勢に入ったのか、細く鋭い牙をぎらつかせながらぼくを睨んだ。
「よそものにはたえられない」
 トゥナが杖を振るうよりも早く、ぼくはデッキから一枚取りだし展開した。シーラザードと似ているけど、どちらかといえば攻撃的なリズムに合わせて独特の形状をした剣を持って舞う女性─モルジアナが突っ込んだ。
「閃け! 剣の舞っ!!」
 しゃんしゃんと鳴るアクセサリーの音色に合わせて剣が意思を持っているかのように舞う。二本だった剣が四本に、四本から六本に増えていく剣に対処が間に合わないトゥナとサルパは正面から当たり、勢いよく吹っ飛んだ。
「いかがでしたか? またのお越しをお待ちしてます」
 まるで敵対者を観劇者として振舞う様子に、ぼくは思わず拍手を送った。それが嬉しかったのかモルジアナは小さくウインクをしながら駒に戻っていった。
「いたたたた……さ、サルパ。あいつ、つよくなってる……」
「……」
 トゥナは杖で歩くのもやっとの状態だけど、ぼくの攻撃の手は緩めなかった。続けて選んだのはサファイアブルーの髪が美しい剣士─オーリックだ。両刀使いのオーリックは目にも止まらぬ早業でトゥナとサルパを同時に攻撃した。最後の強く踏み込んだ剣戟はが決めてになったのか、トゥナとサルパは同時に床に伏した。
「……くっ……。よそもののくせに……」
 悔しそうにぼくを見ながら光に包まれたトゥナは、やがて物言わぬ機械人形に姿を変えた。サルパも後を追うように機械人形へと変わると、次の階層へと続く扉が開いた。さっきは回復して耐えようとしたけど、それでは無理だと思って今使ったデッキはやられる前に仕掛けてしまおうというデッキだった。攻撃力はあるのだけど、その分、自身を傷付けてしまうので残り体力との相談が欠かせない。体力はまだ余っていたからよかったけど、立っているのがやっとの状態では使えなくなる事態があるので、自身を傷付けるものがない駒を編成するのも大事なことだと、さっきゼウスから教えてもらった。
 それにしても……。いくら機械人形とはいえ、ここまで本人と似ていると心がぐっと締め付けられるのは気のせいだろうか……。なんだか心が苦しくなってきそう。
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