少年たちの予感 レビュー

文字数 1,997文字

2019年10月28日、「少年たちの予感」リリースイベントにて小室ぺいは
「『少年たちの予感』というタイトルについて。最近バンドがいい時期だけど、その次は、今の1000倍は良くなっていると思う。NITRODAYはこれからのバンドだってことを知ってほしかった。」
と言って、EPを出したばかりなのに、新曲「ヘブン」(名曲!)を演奏してくれた。

まさに1曲目に相応しい新しい定番ソング「ヘッドセット・キッズ」
MVを見ても分かるが、この曲は好きなものへ純粋な気持ちが詰まっている。好きなものを好きでいていいんだよ、と大声で肯定されているような気分になる。
「ポケット突っ込んだピンカートン 確かめて」
CD入るポケットってかなりデカくない?と一瞬突っ込んだが、Weezerの「Pinkerton」が好きだという事を毅然として言っていて、いいな、と思った。
ぺいはHMVのコラム「無人島~俺の10枚~」でもこのアルバムを選出している。
その10枚の中にAvril Lavigneの 「Let Go」もあったので、ぺいの楽曲のキャッチーさの所以たるものを感じた。

爽やかなコーラス・エフェクトサウンドに最初から期待できる「ダイヤモンド・キッス」 
特筆すべきはBass松島さんとのツインボーカル。NITRODAYはまた新たな武器を手に入れたのだと確信したし、何よりプレーヤーを見て思った。
2分25秒って素敵!
私の大好きなThe Lemonheadsの5th「It's a shame about Ray」には疾走感あるアコースティックギターが入っている、2,3分台のキラキラしたポップソングが多い。
このダイヤモンド・キッスにもアコースティックが入っているので、もれなくときめいてしまった。
ライブ終わりにぺいに聞いてみると、レモンヘッズは聴いていないと言っていた。
約30年前のロックを引き合いに出して申し訳ないのだが、彼らの音楽は、我々を妄想、夢想の世界へ導いてくれる。
自分の好きな音楽との共通点を感じると、勝手に妄想し、意味もなく好きな曲になる。オルタナ、グランジと再三言われ続け、辟易しているとは思うが、逆に言えばそういう音楽が好きな人々の妄想を掻き立てる魅力的なサウンドやバンドの雰囲気を確実に持っているということだ。彼らのルーツにも少なからずあるだろうから、素晴らしい昇華なのではないだろうか。

ninoheron氏との共作「ブラックホール」
作詞はninoheronなので、ぺいが普段書かない様な歌詞で楽しい。
ビンビンな夕凪ってなんなんだろう、一番おいしいところで言っているし。。
コラボという取り組みやピアノイントロ含め、新たな幕開けを感じさせる曲だ。
ninoheronから、まず楽しまなきゃ、という姿勢を学んだとの事だが、そのせいか肩の荷が下り、歌い方も軽やかになったように感じる。
ロックリスナーに橋渡しをしてくれた、かつてのミクスチャーロックの様に、NITRODAYは新しい音楽を届けてくれる。

EP最後の新曲、「アンカー」
ピアノとベース、まるで曲の終わりかのようなリタルダンドのイントロ、
絶妙な塩梅のディストーションギターとぺいの歌い出しから、バンドサウンドがリレーのように順に入ってくるところに曲の良さ全てが詰まっている気がする。(まさにアンカー)
「みんな大人になっちゃうし」のコード進行が気持良過ぎるのと、「み」の直前のコーラスも秀逸だ。「ぼくは相変わらず鼻たらしで」の部分のやぎさんのギターに関してはもはや歌の様だ。
ex.lostage/CARDの清水さんのような「歌心」を感じるフレーズが好きなので、この曲はギターがとても心地良い。
この曲こそが、遅れてやってきた私の「青春パンク」の1曲にしたい。MVを作る予定はあるのかも気になるところである。

新曲4曲どれも毛色は異なるが、総じて今作は珠玉のポップソング・アルバムだ。
「ヘッドセット・キッズ」のようなバンドの顔のような曲を作ったにもかかわらず、留まることなく、ツアー中に作った曲を披露したり、最新曲をセットリスト最後に持ってくるあたりが最新のロックバンドという感じで格好いい。
こうなると次のアルバムが楽しみで仕方ない。EPって、どこか物足りないというか、販売戦略的なものを感じてしまうのだが、今作はまんまとやられた。
デビュー時に、服装からして信頼できそうだと感じたバンドは予想をジェットの速さで通り越して進化し続けている。
来年1月のぺいの誕生日には自主企画をやるそうだ。ゲストは毎回新譜を出す度に進化を遂げているNOT WONKが発表されている。
それまでにNITRODAYはまた格好いい曲を沢山作っているだろうから、予定を空けておこう。
―1000倍良くなっている曲を聴く為に。
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