電話ボックスB
文字数 2,274文字
バックパッカー・安田酢太郎は深夜、アルバイトの帰り、街を歩いていました
帰り道を探そうにもスマホの電源が切れてしまい、途方に暮れていました。
最近恋人になったかも知れない犬塚蓮季に迎えに来てもらおうと思ったそんな矢先、一つの電話ボックスが目に留まりました。
今ではあまり見掛けない緑色の古いタイプのものです。
丁度、蓮季の連絡先は手帳にメモしており、これはラッキーと思い、あなたは電話ボックスのなかに入りました。
小銭を入れて電話をかけますが「おかけになった電話番号は現在使われておりません」という音声が流れました。
何度かけ直しても同じ結果でした。
おかしい。現在使われていないなんて、そんなはずないのに…………。
仕方がないので電話ボックスから出ようとすると、なんとドアが開きません。
まるで接着されているようにびくともせず、さらにドアには紙が貼ってありました。
紙には「10分で出なければ食うぞ」と赤い文字で書かれていました。
酢太郎は現在の時刻を確認します。
酢太郎は慌てて電話ボックスのなかを見回します。
中にあるのは、公衆電話、公衆電話を置く為の棚、広告、貼り紙、そしてもちろん床があります。
酢太郎は公衆電話を見てみますが、何の変哲もない緑色のものでした。
次に、棚を見ると電話帳が置いてありました。メモが挟んであり、そのメモには「米野きみ」と書かれていました。
電話帳には様々な電話番号が羅列されています。
酢太郎がその中に「米野きみ」なる人物の電話番号があるか確認したところ、発見することができました。
ふと、電話ボックスのなかに貼られている広告に目が留まりました。
広告を読んでみると、葬儀会社の広告のようです。会社の電話番号が載っていました。
次に貼り紙に目を移しました。
「ひったくりは犯罪です」と書かれた警察署の貼り紙でした。電話番号らしきものは載っていません。
貼り紙をジッと見詰めてみると、裏側に何かが透けて見えました。
貼り紙を剥がして裏を見てみたところ、赤い手形でびっしりと埋め尽くされていました。
酢太郎は床に1枚のテレホンカードが落ちていることに気付きました。
拾い上げて見てみると、まだ使えそうです。
テレホンカードを裏返してみると電話番号が書かれていました。
酢太郎はまずは「米野きみ」に電話をかけることにしました。
ガチャ。
つーつーつー。
酢太郎がすぐにかけ直しましたが、つながることはありませんでした。
酢太郎がテレホンカードの裏に書かれた電話番号を確認すると「090」から始まっていました。
広告に記された葬儀会社の電話番号も「090」から始まります。
酢太郎は葬儀会社に電話することにしました。
「お前が死体になるんだよ!」
そう大声で怒鳴りつけられ、電話は切られました。
次に、酢太郎はテレホンカードの裏に書かれている電話番号にかけました。
すると電話がつながりました。
「待て」
「待て」
「待て待て待て待て待て待て待てー!」
と、不気味な声が聞こえました。
背後でキィーとドアの開く音がしました。
酢太郎はすかさず電話ボックスから飛び出しました。
酢太郎が外に飛び出すと、真っ暗闇で人気のない道でした。後ろを振り返ってもただ電話ボックスが鎮座しているだけです。
「こんなところにいられるか」と、酢太郎は慌ててその場から逃げ去り、街の灯りほうへ走ってゆきました。