第4話(8)

エピソード文字数 1,971文字

「この場所は不安定で、あの程度の攻撃でも壊れる危険性があったんだよ。だから吸い込まれたら脱出不可能なヤツらは、できるだけ使いたくなったのさ」
「うん、それは分かったけどアンタなに悠長に考察してるんだよ!! 俺は吸い込まれたらアウトなの!!

 どうしようどうしよう! 死ぬ死ぬ死ぬ!
 こ、こっちなのか!? お守りは、こっちを予測してたのか!?

「ねえクーどうすればいいの!? どすればいい!?
「ボウヤ、慌てないの。ここから出る方法はあるんだよ」
「そっ、そうなのそれはなにっ!? どうやってやるのっ?」

 早く教えてっ! 急いでくれさい!

「『士獣共存(しじゅうきょうぞん)』。こいつを使うのさ」
「し、しじゅう? そいつはなんですのっ?」
「召喚士は、召喚獣がいないと力をフルに発揮できないだろ? だからいつでも共に居られるように、召喚獣の方は相棒の傍にワープできるようになってるのさ」

 ぉぉぉぉぉ! そんな超便利システムがあったのかっ。
 召喚士最高! 伝説の英雄最高! この能力を考えた英雄様最高! 何度もバカって言ってスミマセンっ。

「それで移動する際に触れていたら、その者や物も一緒に動けるんだよ。ほらボウヤ、手を取りな」
「ど、ども。お世話になります」
「ん、世話をしてあげるよ。それじゃ…………『士獣共存』、実行!」

 こんな感じで、俺達はひゅんとワープ。ほどなく部屋に運ばれる前の、『戦場空間』内のスーパーの駐車場に到着した。

「にゅむっっ、ゆーせー君だっ! 無事だったんだねー!」
「クー先生がおったけど、やっぱり心配やったがよ! ホッとしたちやっ」
「また従兄くんに会えて、本当に良かったわ。おかえりなさい」
《ク姉(ねえ)おつ やっぱアンタは 強いのな》

 仲間の4人が駆け寄ってきて、俺らは揉みくちゃにされる。レミア、フュル、シズナ、橙式ちゃん、ご心配をおかけしました。

「皆、不安にさせてごめんなさいです。あの攻撃は意想外でしたわ」
「あれは、ワシもそうだったぜよ。今度からは、立ち位置も注意せんといかんにゃぁ」
「ええ、そうね。それにいつか似たケースがあるかもしれないから、アレを使っておきましょうか」

 シズナが、フュルに笑いかける。
 ??? なにをするつもりなんだ?

「にゅむむっ、フュルちゃんはねーっ。どこにいても居場所を特定(とくてー)できるよーになる魔法(まほー)を、かけられるんだよー」
「その名も、『無(む)の追跡(ついせき)』。英雄は敵先生を気配で追えんき、もし取り逃がした際は追いかけれるのがあるがよ」
「もっとも。本気を出せば瞬殺出来てしまうから、これまで使う機会はなかったのだけどね」

 そーですよねー。コイツらはその気になったら、次元すら壊せるんだもん。

《んじゃフュ姉 追跡魔法 かけようぜ》
「そうやね。師匠、『無の追跡』を受け取ってや!」

 フュルが右手にある杖を振ると、俺の全身が白く発光。どこにでもある蛍光灯クラスの光は数秒で消え、勇者魔法使いの杖に俺の名前が刻まれた。

「ここに追跡可能な先生の名が浮かび上がって、死んだら消えるが。師匠の場合死にはせんき、一生ワシと一緒やにゃぁ」
「う、羨ましい……! この力は渡さなければよかったわ……!!

 シズナが、血の涙を流して悔しがっている。これは誇張ではなく、しっかりと赤色の涙を流して悔しがっております。

『すげぇ。人間って、ホントに血の涙を流せるんだな』

 そうだねぇ。人間ってすげぇで、この人はなんともキモいですねぇ。

「にゅ、にゅむ、シズナちゃん泣かないでー。あとであたしが、ゆーせー君人形をヌイヌイするよー」
「そしたら、師匠と一緒やね。レミア先生ファインプレイぜよ!」
「コラ、どこがファインなんだよ。気持ち悪いからやめてください」

 とボクはヌイヌイを中止させ、ふぅ~と息を吐く。

「とにかく、これで万が一2度目があっても安心だな。フュル、どもです」
「この程度お安い御用で、そういうのは不要ぜよ。むしろ、最初っからこうしとけばって反省中ながよね」
「ううん、こういうのは予想できないって。しょうがないよ――おおっ、消えたお守りが戻ってきたぞ!」

 行方不明になっていたブツが突如ポケットに舞い戻り、お守りさんは完全復活した。
 ということは、断言していいでしょう。危機は去りましたな。

「ふぃ~、肩が軽くなった。やっと、心の底から旅を楽しめるよ」
《よかったな これにて任務 終了だ》
「ところがどっこい、だよエイ。命の危険はなくなったけど、日常を脅かす問題が残ってる」

 人形サイズになったクーが、橙式ちゃんの左肩に乗って肩を竦めた。
 む? むむむ?
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登場人物紹介

色紙優星 16歳の少年


高知県生まれの主人公。

リリウという神様の聞き間違えで魔王使いになってしまい、おまけに『究極奥義』と呼ばれる力を何個も持ってしまった高校生。優しく他人想いなのだが、彼はとあるセンスが全くないのであった……。

黒真レミア 16歳の少女


魔王、でありながら伝説の勇者の能力を持つ。冷徹でクールな容姿と声音を持つ美少女だが、性格はほわほわでお子ちゃま。『にゅむ』という独特な言葉を多用し、時にはにゅむのみで会話を行おうとする。例「にゅむーむ。にゅむ。にゅむりん」。

なお愛用の武器である聖剣は魔王の天敵であるため、使うと痺れる。

金堂フュル 16歳の少女


伝説の勇者、でありながら伝説の魔法使いの能力を持つ。元気一杯の猫っぽい女の子で、高知県の英雄・坂本竜馬の大ファン。そのせいで『ぜよ』と中途半端に覚えた土佐弁を使い、主人公のことは『師匠』、仲間のことは名前のあとに『先生』とつけて呼ぶ(例えばレミアの場合はレミア先生)。

なかなかにおバカな女の子。

虹橋シズナ 17歳の少女


伝説の魔法使い、でありながら魔王の能力を持つ。大和撫子然とした容姿を持つ美少女であり、主人公の義理の従妹。

重度の怒られ好き。

とにかく変で厄介で面倒くさい人。

茶操ユニ 18歳の少女


伝説のドールマスター、でありながら伝説のプリーストの能力を持つ。キグルミ族という一族の人間で、閉園したテーマパークのキャラクター・二足歩行ウサギの着ぐるみを着ている。口癖は、ミョン。

実はお笑いにうるさく、親戚は某有名人。

プリースト神 年齢不明


茶操ユニが持つプリーストの杖に宿る、プリーストの神様。

実は……。

橙式エイリ 14歳の少女


伝説のモンスターテイマー、でありながら伝説の召喚士の能力を持つ。所謂スケバン然とした容姿と声を持つが、グループ最年少の中学生でみんなの妹的存在。でもレミアやフュルよりずっとまともで、ヤツらの方が妹的存在な気がする。

野菜が大好きで、とても詳しい。

タンザ・クー 年齢不明


橙式エイリの召喚獣で、俳句世界(はいくわーるど)の王女。

タンザが姓で、クーが名。

二万年後に、地球の傍に誕生する世界からやって来た。


色紙育月 16歳の少女


高知県大豊町在住の、優星の従妹。中学卒業と同時に本格的にピーマンの生産を始め、今ではテレビの取材を受けるほどになっている。


薄幸の美少女然とした容姿と、従兄想いの優しい性格が自慢の従妹です! by色紙優星

謎の声 年齢不明


優星にだけ聞こえる、不思議な声。

なぜか正体を明かそうとしない。

リリウ 神様


願いを聞き間違えて、優星を魔王使いにしてしまった神様。

神様の世界で流行しているゲームに夢中で、神様のお仕事はほとんどしない。

とってもダメな、神様(?)な神様。

麗平活美 16歳の少女


ストロベリーブロンドのドリルヘアーが特徴の、優星のクラスメイト。

お嬢様然とした容姿で気品があるように見えるが、非常に活発。実は……。

空霧雲海 16歳の少年


頼れる兄貴系の容姿と性格を持つ優星の同級生であり、悪友であり、重度のオタク。

作中に登場する名曲(迷曲)を作った人。

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