第21話 ママチャリ300kmの旅 その15

文字数 748文字

 私は勇気を出し、あの恐怖を走破した。

 それからは平地をいくらか進むが、体力には余裕がない。

 でも、なるべく明日の距離は減らしたいところ。できれば区切りのいい静岡駅まで進んでいたかったが、そこまでは体がもたないと諦め、そのいくつか手前の駅周辺でネットカフェを探した。

 調べると、なんと前回泊まらせていただいたネットカフェが近くにあるではないか。
 これはご縁だと感じ、さっそくそこへ足を運ぶ。
 
 ああ。
 入店したときの安心感、ほっとする。
 この旅を経て私はこのネットカフェのファンになっていた。 

 受付での振舞い方は覚えているので手早く済ませ、個室の12時間コースとシャワールームを利用させていただく。個室に荷物を置き、必要なものだけをもってさっそくシャワールームに入る。相変わらず洗われる心地よさに息が漏れた。ここも水道管か何かが弱いのか、ときおり、今度は3秒に1回、水に戻るが、私は幸せだった。備え付けのボディーシャンプーで体を洗い、そしてクサイ靴下も。

 個室に戻ったらまた対角線上に横になって、すぐに寝た。


 そして、最終日の朝がやってくる。

 何度か寝なおしたものの、今回は合計で8時間くらいは寝られた。
 おかげで疲労や筋肉痛も前回寝たときよりも回復している。今回、漫画に手をつけることはなかったが、ドリンクバーがあるのはまことに嬉しい。ホットドリンクを飲んで目を覚ます。べつに高級なものを飲んでいるわけではないのに、自由に飲めるという優しさが、それを味わい深くさせる。 
 
 私は退出時間までしっかりと体を休め、店を出た。

 ここからはラストスパート。
 残り、およそ120km。

 相棒であるミントグリーンの自転車にまたがる。 
 もう遠くなった富士山を背に、この旅の最後の一日を走りだした。


 つづく
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