第11話 ネイビーの必殺技
文字数 2,787文字
光一郎とネイビーが人気の無い公園に着いてから10分が過ぎようとしていた……。
「ふふふふふ、貴様が右側一世であることは分かった。
だが、こうまで我々と拮抗する程の実力の持ち主とは思わなかった。
この程度では所詮明日には消える命!
貴様の肉と魂を我々の手で焼き尽くしてくれるわっ!!」
火の獅子の蹴りが地面を捲り上げる!
強靭な脚力から生まれたその速さは、跨 る鉄仮面のランスの威力を3倍にも4倍にも高めた。
「はっ!!」
ネイビーは両手を合わせ、逆三角形の形に組んだ。 鋼鉄の壁が手の穴から流れるように飛び出す!
「激流槍・炎尾!」
炎の渦をまとったランスが鋼鉄の壁を突き破り、ネイビーの体の真芯を捉えた。
ネイビーが咄嗟に交わした為深傷を負わせるには至らなかったが確実なダメージを与えた。
「火の獅子の協力を得て初めて完成するこの『激流槍』だが、貴様との決着をつけるには十分過ぎたようだな。」
鉄仮面の言う通り、ネイビーの右脇腹がえぐれている。
それを見かねた光一郎はとうとう叫んだ。
「ネイビー!やっぱり僕も一緒にたたか……「見ているだけでいいと言ったはずだ!!」
ネイビーはビクリと体が強張っている光一郎を見て言った。
「光一郎……。見るということもまた戦いだ。お前はまだ弱い。圧倒的にだ……!!俺とこいつらとの戦いを見て学んで、いつかは俺をも超える力を身につけろ。
お前にはそれができる!」
「ネイビー…………分かったよ、僕ずっと、ずっと見てるよ!だから絶対に勝ってね!!」
「そんな状態のお前に何ができる。そこにいる小僧もろとも消し炭になるのだ。」
火の獅子の口から、公園全体を照らすほどの巨大な火の玉が放たれた。
「いいか光一郎、魔術にも妖術にも『妖魔文字』というものがある。妖魔との戦いはその文字の読み合いだ。妖魔文字を制する者が戦いを制する。」
ネイビーは眼前に迫る火の玉を避けることもなく光一郎に説明をした。
「ネイビー危ない!!」
「ふっ。やはり我々の勝ちは決まっていたのだ。さらばだ少年よ、右側一世のついでに死ね。」
「誰が死んだって?」
ネイビーは片手で自分の倍の大きさの火の玉を受け止めていた。
「なっ、なにぃ!!」
「敵の妖術の妖魔文字を書き換えて跳ね返す技がある…………」
「不受魔(フズマ)ッ!」
火の玉はパァンと音を立て、高速で火の獅子へ跳ね返った。
「がああっ……!!!」
「ぐうう……!!」
火の玉は炸裂し、2体の妖魔をゴウゴウと音を立てながら焼き尽くそうとしている。
「い、いやったあ!ネイビーが勝った!」
「慌てるな、まだ奴らは死んじゃいない。」
「激流槍・氷額!!」
突如火柱は凍りつき真っ二つに割れて崩れ去った。
「ぬうううう、我々はお前の力を侮っていたようだ。お詫びに貴様にこの私の最終奥義を見せてやろう。」
「……じゃあ俺も少し本気を出してやろうか。」
「なんだと?では貴様は今まで手を抜いていたと。ふふふ、強がるな。一瞬で仕留めてやるから怯えることはないぞ。」
鉄仮面は手に持っているランスを地面に突き立てて言った。
「この技は地面から妖力を吸い上げ私の2本の角で敵を穿 つ強力無比な技だ。」
「くらえ!ウラノススピアー!!」
ランスから生まれる風の渦で角が紫色の炎をまとい、火の獅子と鉄仮面の体は一体化した。
疾風の如き突進は、角の炎をさらに煽る。
角の先端はたしかにネイビーにズンと刺さった。
「こ、この感触は……」
角に刺さっているのは右腕だけであった。
「腕のみだと?!まさか奴は!!」
「光一郎、見せてやるぜ俺の必殺技を。夕闇族の尖兵ども、お前らごときが食らうことを光栄に思え。」
空に浮かぶネイビーは魔法陣を描いた。
月が赤く染まり、何かがやってくる。
「あ、あれは……」
僕は見たんだ。影の群れが空から落ちてくるように走るのを。
馬やコウモリ、羊にトラに人、鬼なんかもいた。
影たちはネイビーの千切れた右腕を目指してただただ走ってくる。
でもその技は強烈で、鉄仮面と火の獅子は群れの体当たりに体がひしゃげてバラバラになって死んでしまった。
ネイビーは地面に落ちている右腕を付け直しながら言った。
「黒の宝珠は己の肉体の存在する所ならばどこまでも力が及ぶ。白の宝珠もそうだ。
光一郎の魂が届くところまでなら力が伝わる。」
「それってどういうこと?」
「心の器は広く大きくって事だ。」
僕がボーッとしているといつのまにかネイビーは帰っていた。
近くでサイレンの音がする。急いで帰ろう!
光一郎が握り拳を作って右腕を掲げると、光一郎はすっ飛んで家に帰っていった。
「いやあ、やっぱり今日子さんの手料理は最高ですねえ。」
「やあだネイビーさんったら褒め上手ねえ。
光ちゃんもネイビーさんを見習って好き嫌いせずに食べるのよ。」
「なんでネイビーがここにいるんだよ!」
僕は思わず机を叩いて立ち上がってしまった。
悪魔と食卓を囲んでいるというだけで違和感があるのに、さらにネイビーは満面の笑みでお母さんの料理を褒めている。
「あら光ちゃんネイビーさんがご飯を食べてたら何か困る事があるの?それと指をさしちゃダメ。ネイビーさんは大事なお客様なんですからね。」
「実は光一郎、今の俺はこの家の居候ということになっている。これからよろしくな。」
「そうよ。ネイビーさんはね、
若い頃にお母さんを亡くしお父さんは酒好きでどこかの女の方と駆け落ちしてしまい保護施設に入ったけど火事になり施設は消失。荒れた十代を過ごしていた時に現れたおじいさんは元プロボクサーのチャンピオンで、ネイビーさんは血のにじむ努力を重ねて日本のボクシング界を背負って立つかもしれないと言われる程に成長したけれど、その矢先に暴力事件に巻き込まれて引退。そしてなんやかんやあってウチのお父さんと仲良くなりここの居候となったわけよ。」
と、お母さんは涙ぐみながら語っているけど最後の方適当すぎるし、プロボクサーってなんだ。ネイビーは一体何をしたんだ?
「それにね、この人は光ちゃん、あなたの恩人だってことを忘れちゃダメよ。川で溺れていたあなたを自ら飛び込んで助けてくれたんですからね。あんまり偉そうにしちゃあいけません!」
僕が川で溺れかけたって?泳げないのにそもそも川に近づくわけないだろこのバカ!
僕はネイビーをにらんだ。
ネイビーはにごった目でニヤニヤしている。
白の宝珠が少し赤みがかった気がした。
「ふふふふふ、貴様が右側一世であることは分かった。
だが、こうまで我々と拮抗する程の実力の持ち主とは思わなかった。
この程度では所詮明日には消える命!
貴様の肉と魂を我々の手で焼き尽くしてくれるわっ!!」
火の獅子の蹴りが地面を捲り上げる!
強靭な脚力から生まれたその速さは、
「はっ!!」
ネイビーは両手を合わせ、逆三角形の形に組んだ。 鋼鉄の壁が手の穴から流れるように飛び出す!
「激流槍・炎尾!」
炎の渦をまとったランスが鋼鉄の壁を突き破り、ネイビーの体の真芯を捉えた。
ネイビーが咄嗟に交わした為深傷を負わせるには至らなかったが確実なダメージを与えた。
「火の獅子の協力を得て初めて完成するこの『激流槍』だが、貴様との決着をつけるには十分過ぎたようだな。」
鉄仮面の言う通り、ネイビーの右脇腹がえぐれている。
それを見かねた光一郎はとうとう叫んだ。
「ネイビー!やっぱり僕も一緒にたたか……「見ているだけでいいと言ったはずだ!!」
ネイビーはビクリと体が強張っている光一郎を見て言った。
「光一郎……。見るということもまた戦いだ。お前はまだ弱い。圧倒的にだ……!!俺とこいつらとの戦いを見て学んで、いつかは俺をも超える力を身につけろ。
お前にはそれができる!」
「ネイビー…………分かったよ、僕ずっと、ずっと見てるよ!だから絶対に勝ってね!!」
「そんな状態のお前に何ができる。そこにいる小僧もろとも消し炭になるのだ。」
火の獅子の口から、公園全体を照らすほどの巨大な火の玉が放たれた。
「いいか光一郎、魔術にも妖術にも『妖魔文字』というものがある。妖魔との戦いはその文字の読み合いだ。妖魔文字を制する者が戦いを制する。」
ネイビーは眼前に迫る火の玉を避けることもなく光一郎に説明をした。
「ネイビー危ない!!」
「ふっ。やはり我々の勝ちは決まっていたのだ。さらばだ少年よ、右側一世のついでに死ね。」
「誰が死んだって?」
ネイビーは片手で自分の倍の大きさの火の玉を受け止めていた。
「なっ、なにぃ!!」
「敵の妖術の妖魔文字を書き換えて跳ね返す技がある…………」
「不受魔(フズマ)ッ!」
火の玉はパァンと音を立て、高速で火の獅子へ跳ね返った。
「がああっ……!!!」
「ぐうう……!!」
火の玉は炸裂し、2体の妖魔をゴウゴウと音を立てながら焼き尽くそうとしている。
「い、いやったあ!ネイビーが勝った!」
「慌てるな、まだ奴らは死んじゃいない。」
「激流槍・氷額!!」
突如火柱は凍りつき真っ二つに割れて崩れ去った。
「ぬうううう、我々はお前の力を侮っていたようだ。お詫びに貴様にこの私の最終奥義を見せてやろう。」
「……じゃあ俺も少し本気を出してやろうか。」
「なんだと?では貴様は今まで手を抜いていたと。ふふふ、強がるな。一瞬で仕留めてやるから怯えることはないぞ。」
鉄仮面は手に持っているランスを地面に突き立てて言った。
「この技は地面から妖力を吸い上げ私の2本の角で敵を
「くらえ!ウラノススピアー!!」
ランスから生まれる風の渦で角が紫色の炎をまとい、火の獅子と鉄仮面の体は一体化した。
疾風の如き突進は、角の炎をさらに煽る。
角の先端はたしかにネイビーにズンと刺さった。
「こ、この感触は……」
角に刺さっているのは右腕だけであった。
「腕のみだと?!まさか奴は!!」
「光一郎、見せてやるぜ俺の必殺技を。夕闇族の尖兵ども、お前らごときが食らうことを光栄に思え。」
空に浮かぶネイビーは魔法陣を描いた。
月が赤く染まり、何かがやってくる。
「あ、あれは……」
僕は見たんだ。影の群れが空から落ちてくるように走るのを。
馬やコウモリ、羊にトラに人、鬼なんかもいた。
影たちはネイビーの千切れた右腕を目指してただただ走ってくる。
でもその技は強烈で、鉄仮面と火の獅子は群れの体当たりに体がひしゃげてバラバラになって死んでしまった。
ネイビーは地面に落ちている右腕を付け直しながら言った。
「黒の宝珠は己の肉体の存在する所ならばどこまでも力が及ぶ。白の宝珠もそうだ。
光一郎の魂が届くところまでなら力が伝わる。」
「それってどういうこと?」
「心の器は広く大きくって事だ。」
僕がボーッとしているといつのまにかネイビーは帰っていた。
近くでサイレンの音がする。急いで帰ろう!
光一郎が握り拳を作って右腕を掲げると、光一郎はすっ飛んで家に帰っていった。
「いやあ、やっぱり今日子さんの手料理は最高ですねえ。」
「やあだネイビーさんったら褒め上手ねえ。
光ちゃんもネイビーさんを見習って好き嫌いせずに食べるのよ。」
「なんでネイビーがここにいるんだよ!」
僕は思わず机を叩いて立ち上がってしまった。
悪魔と食卓を囲んでいるというだけで違和感があるのに、さらにネイビーは満面の笑みでお母さんの料理を褒めている。
「あら光ちゃんネイビーさんがご飯を食べてたら何か困る事があるの?それと指をさしちゃダメ。ネイビーさんは大事なお客様なんですからね。」
「実は光一郎、今の俺はこの家の居候ということになっている。これからよろしくな。」
「そうよ。ネイビーさんはね、
若い頃にお母さんを亡くしお父さんは酒好きでどこかの女の方と駆け落ちしてしまい保護施設に入ったけど火事になり施設は消失。荒れた十代を過ごしていた時に現れたおじいさんは元プロボクサーのチャンピオンで、ネイビーさんは血のにじむ努力を重ねて日本のボクシング界を背負って立つかもしれないと言われる程に成長したけれど、その矢先に暴力事件に巻き込まれて引退。そしてなんやかんやあってウチのお父さんと仲良くなりここの居候となったわけよ。」
と、お母さんは涙ぐみながら語っているけど最後の方適当すぎるし、プロボクサーってなんだ。ネイビーは一体何をしたんだ?
「それにね、この人は光ちゃん、あなたの恩人だってことを忘れちゃダメよ。川で溺れていたあなたを自ら飛び込んで助けてくれたんですからね。あんまり偉そうにしちゃあいけません!」
僕が川で溺れかけたって?泳げないのにそもそも川に近づくわけないだろこのバカ!
僕はネイビーをにらんだ。
ネイビーはにごった目でニヤニヤしている。
白の宝珠が少し赤みがかった気がした。