第36話

文字数 1,008文字

……とりあえずこちら側からのゲートは閉じたから


呼び出さなければ、


ラビスはもう人間界にはこれないはずだ。



もう、二度と闇にそまっちゃだめだよ……。


前を向いて歩いて。


紗奈ちゃん……

カナトさんは、

眠っているりっちゃんの手をぎゅっと握っている、

パラレルワールドの紗奈に、そう言った。

これを。


もう悪魔がよりつかないように。


このペンダントを持ってさえいれば


悪魔が君の前に現れることはできないよ

……

パラレル紗奈は黙ってそれを受け取った。


元の世界に、帰ろう。紗奈ちゃん
……はい
パラレル紗奈は、こっくりとうなずいた。

紗奈ちゃん、俺、パラレル紗奈ちゃんを送っていくよ。


それじゃあ、またね

え……


もう、行っちゃうの……?

大丈夫、また会えるよ

カナトさんは優しく微笑み、


ふわっと私の頭をなでた。

紗奈
パラレル紗奈がふいに声をかけてくる。
……なに……?
私はその声に答えた。

……こっちの世界のりっちゃんにも会えて本当にうれしかった……。


ラビくんは大差ないって言ってたけど、


やっぱりこっちのりっちゃんは、私のりっちゃんじゃないって思った。



もちろん優しいし、大好きだし、デート、本当に楽しかった。



でも、こっちの、りっちゃんの好きな人は……


私じゃないんだって思った。



こっちのりっちゃんの好きな人は……


東京で夢に向かってがんばってる……

そこで言葉を止め、


パラレル紗奈は私の方をじっとみつめた。


……そして目をそらす……。

……りっちゃんだけしか見えなくて、他に何もない自分じゃなくて……


メソメソして


黒魔術に頼って……


他人の幸せを羨んでばかりいて……


自分の気持ちばっかり優先するような子じゃないの……。


今の私みたいな子じゃないの……

パラレルワールドの紗奈の瞳から、

ぽろぽろと涙がこぼれ落ちた。

ごめんね、この世界の私……


この世界の私はね、私の理想の私だったよ……

……

あなたにも……会えてよかった……。


……さようなら。もう会うこともないと思うけど。


ありがとう。


りっちゃんに、よろしくね……

……うん

そういうと、カナトさんとパラレル紗奈は


魔法陣の上に立ち、ゆっくりと姿を消していった。




……パラレルワールドの紗奈。


辛さも乗り越えて、幸せになってほしい……。




……そしてカナトさん……また会えるよね……?


私、もっともっとカナトさんのこと、知りたいよ。




恋に生きたパラレルワールドの私は、


私のこと理想だって言ったけれど……。



恋に生きる私も、また素敵だなって、思ったんだよ。








第一部【完】

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登場人物紹介

星崎 紗奈 (ほしざき さな)


17歳 専門学生


本編の主人公。


成瀬 律 (なるせ りつ)


18歳 高校3年生


紗奈の幼馴染。

紗奈には”りっちゃん”と呼ばれている。

カナト

ラビス

大家さん

(その他人物)

(その他人物)

スマホ


↓(以下ネタバレ含む人物:表情など)


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カナト

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ラビス

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カナト

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