第85話 即時抗告申立理由書

文字数 1,538文字

 平成二十五年八月二十九日、高裁宛て。
 結局、本審判とは名ばかりで、子の福祉に関わる大事な監護権について、たった三か月ただ一度きりの審問があった保全処分そのまま、母親を監護権者に決めた。
 その審判に対する控訴の理由書。

                記

 抗告人は、今回、子供の最近の様子を撮ったDVDを提出する。

 子供の生活環境を動画にしたものであり、話しかけているのは子供の祖父の姉であり、子供は日頃から懐いており自然な発言が期待できるものである。動画を見てもらえれば、一目瞭然であるが、子供が生活する環境としては申し分ないことがうかがえる。
 そして最も特徴的なことは、子供が、はっきりと自己主張している点である。
「お父さんとずっと一緒にいたい。お母さんとは会いたくない。いやー。御飯食べられない」
 とはっきり意思表示している。
 かような子供の意思表示を尊重するのが、子供の福祉の観点からは重要ではないだろうか。もしかような状況にかかわらず、無理やり子供を引き離し、嫌がる環境に押しつけるならば、子供の今後の精神的発達にとって重大な影響を与えることは容易に想像できる。
 裁判所は、かような子供の福祉に反してまで、強制執行をするべきであろうか。今一度慎重な審理を望む。
 子供は、驚くほど、日々成長している。子供の発言も日ごとにしっかりしている。まだ、何ももの言えぬはずだというのは誤解ないし偏見である。
 このことを明らかにするために、当職は、調査官による子供の環境調査をぜひともすべきであると述べてきた。
 この動画の意味するところ、子の福祉にとって、なにが重要か、提示してくれる証拠である。この動画の信憑性について疑問があるのであれば、公平な立場の調査官の調査で、現状の把握をしてもらいたい。
 ただし、調査官の調査は、あくまで、子供が明確な意思表示をしているのか、圧力はないかなど、事実確認に限られるべきである。特定の価値判断に基づいた意見を差しはさむべきではない。

 以上が、その内容である。
 この頃は、まだ娘も、理由もなくキレた母親がアンパンマンチーズを食べた娘の口をつかんだこと、トマトや御飯だけの食事を覚えていたのだろう。
「御飯食べられない」は、食事の世話をしているのが父親であることを語っている。
 娘本人の切実な思いを、高裁はあっさりと踏みにじった。
 それはそうだろう。高裁の判事は若い声だったそうだ。
 一時的に地方の家裁へ左遷されている先輩が出した審判を覆したら、のちのち出世に響くかもしれない。
 裁判所に、真実や正義を求めることに無理がある。
 相手方の弁護士は、嘘の申立書を非難した私に、「嘘をついても、裁判所が認めれば、法律の正義です」と言い放った。
 調査官は、「子供は家を恐がっている」と調査報告書に嘘を書いた。
 その調査報告書に従い、母親に監護権を決めた裁判官は、三か月のスピード審判を評価されたのか、高裁へと栄転していった。
 この監護権裁判の終り、離婚が成立し、相手方に月一回の面会も約束を約束させたが守られず、面会の調停は三年間続くことになった。
 監護権の審判三か月、面会の調停三年、何か根本的に間違ってないでしょうか。

 日本の司法は、常識を大きく逸脱し、正義や真実を争う場ではなくなっている。少なくとも、家庭裁判所に、中立も公平も公正もない。
 大昔、先輩裁判官が決めた判例に粛々と従う。時代に合わなくても、事実がどうであろうと関係ない。
 真実や正義より、我が身が大事。ごもっとも、裁判官も人間だもの。そうならないために、身分と収入が保障されているはずなのに、どこで履き違えたのだろう。
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