第5話(終)

文字数 8,528文字

―浪漫の時代―

-川面-

ゆらゆらと揺らめく水面に影ができ、次第に大きくなってゆく・・
ざばぁっ‼
(にご)った水面からあらわれたのは大小2つの潜水服だった。
小さい潜水服の手が(岸へ行け)と合図する、大きい潜水服はそれに従い、川岸のコンクリート壁の上からは見えない角度の方向、隅に向かった。
岸壁に着くと、小さいほうが水中メガネと口にくわえたレギュレーターを取り、海坊主のようなぴっちりしたスーツの顔部分をはぐ、あらわれたのはジャックだ。
「ふう~っ、着いた・・ずっと水中はきつかったな、ジャンク]
ジャンクもスーツをはぐ、
「ぶはぁ・・ジャック兄ぃ、オレはもう何度も浮上しようかと思ったよ」
「銀行から離れるまではガマンしろ、とハンドサイン送ったろ」
「濁っていたからよく見えなかったよ」
「まあ簡易潜水服じゃあな、砂漠の作戦慣れしているわれわれにはキツかったな」
「水中作戦はやだなあ」
「まあ水中はここまでだ、電子振り込みの任務は果たしたのだから、後はさっさとこの国を出るだけだ」
「でもそう簡単に出国できるかな?」
「大丈夫、脱出計画は進行中だ。このコンクリート川壁の上には無人の駐車場がある、そこで車に乗り換えて、正規のルートで出国する!」
「正規にって、できるの?」
二人は川岸に上がり潜水服を脱ぎ捨てた、上からは見えないので、しばらくは発見されないだろう。そしてコンクリート岸壁に付いている梯子のような取っ手を上り、岸壁から慎重に顔を出し周りを確認する・・・小さな無人の駐車場があった、路地裏奥の車も3台くらいしか停められない川べりの駐車場、誰もいない、車は一台しか停まっていない、なぜか監視カメラはない、下調べでそういう場所だと確認済だ。
停まっている一台の車はごく普通のレンタカーで黒塗りセダン車だ、日本では「水素円タク」と呼ばれるタクシーと似ている、要するに目立つ車ではない、ということだ。
サッ、と乗り込むJJブラザーズ、車内のシートの上には銀色のアタッシュケースと2個のメガネケースがあった、アタッシュケースの中にはピッチリ畳んだビジネススーツが2着と各種の書類とパスポートが入っていた、スーツは形状記憶繊維でしわができないタイプの服だ、日本製で広げればたちまち新品のようになる。
「日本のこういった技術はすげえなあ...」ジャンクは感心した
「急いで着替えろ、ここからは時間との勝負だ!」とジャックはせかした。


-首都高速跡地-

両側が切り取られた高架橋の跡地、というか廃墟に近い。東京は再開発中のため、所どころにこういった昔の跡地が残されていた、いつかは撤去されるのであろうが、まだ痕跡はあるところにはある。
その頂上に(たたず)む人影があった。どうやって登ったのか?普通に登れる高さではないのだが、彼女はそこにいた、一陣の風が長い髪をたなびかせる、メガネはもうかけてない、矢作柄のハイカラ女学生、大和(おおわ)撫子である。
撫子は小さな双眼鏡で周りを見ていた、捜索しているのだろうが観光のようにも見える。
「へえー、ここから見るとなんか下町ねー、本当に東京なの?」
「なんかではなく下町じゃよ、墨田区、台東区一帯、東京にはこういった場所もあるんじゃ、
それくらいは京都にいた時から知っとるじゃろ」
「えへへ、ごめーん、そういえばネットでよく見てたっけ」
撫子はハンズフリーになっていた、耳にはイヤホンのようなものをつけている、曇ジイとはそれで話している。
「うーむ、それにしてもやつら(JJブラザース)はどうやって逃げたんじゃろう?」
「あれはただの陽動作戦よ、大男の方が持っていた、黄色いねんどみたいなモノはセムティック(プラスチック爆弾)よ、いなくなったときにセッティングしてたのね。
RPGで派手に銀行壁を爆発させ警察を集める・・・と同時に小男の方がリモートでプラスチック爆弾で裏の壁を小さく破壊し反対側から逃げる、と・・しかも川を使って」
「おお~なるほどのう、おぬしもなかなか板についてきたようじゃな」
「別にこの程度は・・現場にいればわかるじゃない」ちょっと嬉しそうな撫子
「ところで衛星からの情報はないの?」
「ムチャ言うな!まだ30分もたってないじゃろうが、まだ衛星が上空にきとらんわい」
「日本は常に極軌道衛星が廻ってるはずでしょ、スパコンならすぐ解析できるんでしょ」
「正式な捜査じゃないから使えないんじゃ、民間の無料サービスしかないんじゃわい、それにわしはスパコンじゃなく、スパコンとのやりとりを仲介するナビゲーションコンピューターじゃ!」
「あっ、そうだったわね、ついいつものクセで聞いちゃった」
「まあ頼ってくれるのはいいんじゃがの、サポートするのが仕事じゃしの。それより奴らの逃走ルートは目星ついとるのか?こっちの方でいいのか?」
「大丈夫、JJブラザースは成田や羽田には向かわないわ」
「何でわかるんじゃ?」
「テロリストや軍経験者は仕事が終わればファーストアウト、つまり速攻で離れるものなのよ、ヘリや車両が使えない場合は隠れて目立たないように消えるの、そして一番近い安全拠点へ向かうのが基本なのよ、この場合速さから言って航空機ね」
「じゃあ羽田じゃろ」
「もっと近い場所があるわ、それは・・・」

「おじょお~」
突然、高架下の方から声が聞こえた
「やっと来たわねムホーマツ、ほいっ」
言うと同時に撫子は高架橋から飛び降りた、見事ムホーマツの横2mに三点着地、着物のくせにアクティブすぎる、そしてムホーマツの引くリキシャに乗る
「ご無事でしたか?お嬢」
「あたりまえよ、あなたも銀行から抜け出せたのね?」
「どさくさに紛れてでやんす、簡単でした」
(東京の警察はなってないわね・・まあいいけど)
「じゃあ、このまま『隅田川飛行艇港(すみだがわひこうていみなと)』まで向かうわよ・・」
「へえい、ってゆうか何ですかそれ?」
「その名の通り港よ、飛行艇のね、川の沿岸にあるのだけど、小さいから漁船と並んで個人用飛行艇も停められる航空機の港でもある・・つまり空港なのよ」
「へえ、さいですか?」
「あなたのマップにも入っているはずよ」
「えーっと・・・あ、ありやした」首を上に向けて捜してたムホーマツ
「撫子はよく知っとるのう」と感心する雲ジイ
「東京の地理には疎いけど、飛行場なら全国の場所を知ってるわ、航空機関係ならまかせて」撫子は自慢げに言う。
「・・まあ誰でも得意な分野はあるものじゃしのう、じゃがあそこは国内線、主に小笠原の離島とを結ぶ小さな国内空港のはずじゃが?」
「ちっちっちっ・・飛行艇というのがミソなのよ、あらかた沖合まで飛んだら着水して船か潜水艦に乗り換える気だわね」撫子は指を振って説明する
「なるほどのう」雲ジイはまた感心したようだ

-川岸の駐車場-

黒スーツからピッチリしたビジネススーツに着替えたJJブラザーズ、サングラスも普通の透明なメガネに変えた、どこから見てもやり手のビジネスマンに見える。
「よし、ポリどもはまだ銀行近辺を捜索中だろう、手が回る前に高飛びするぞ。我々は中東からきたビジネスマンだ、東京から伊豆大島の証券会社に出張のために来たわけだ。ここから隅田川飛行艇港まで車で行く、空港は正規の手続きで国内移動(を装う)する」
今はメガネと高級なスーツ、髪は七・三に分けたジャックはどこから見てもビジネスマンに
見える。
「おれは運転手かいな」ジャンクは、まあフツーの社員という感じだ。
「新米のアシスタントだ、ビジネス用語が苦手でも問題ない」
「なあジャック兄い、その前にコンビニに寄っていこうぜ」
「そうだな、日本のコンビニは品揃えがいいからな、買いだめしておくか」
二人はそんな話をしながら車で駐車場を後にした。

ー銀行ー

爆発後の銀行壁を前に、鈴木刑事は途方に暮れていた。
「くっそう、どんなに探しても銀行内に犯人たちはいない、完全に取り逃がした」
「行員とお客は無事だったが、被害はかなり、いや莫大な損害かも・・・」
銀行強盗のくせに現金には手を付けず、伝送犯罪とは、まさかそんな強盗がいるとは、しかし遠くからPC操作でいろいろ面倒なプログラム組むよりは、直接銀行内から送る方が早いし大金送れるかも・・」
そんなことを考えてしまう鈴木刑事だった。
(しかし問題は、この事件を警部の到着までもたせられなかったということだ、解決じゃなく取り逃がしたのは、言い訳のしようもない、オレの出世がぁ・・・)

巡査長「鈴木刑事、ただいま吉田警部が到着いたしました、鈴木刑事の報告を求められております、出頭お願いします」
(キターーー、ヒイイィィ・・)
よりによって鬼の吉田警部だ、鈴木刑事は生きた心地がしない
(ごしゅうしょうさまです・・・)
巡査長は帽子のツバをもち目深に被り直した。

-下町のコンビニ前-

大きなコンビニ袋を抱えコンビニから出てきたJJたちが車に向かう
「いやー日本のコンビニは品数が多いな、ジャンク」と感心してるジャック
「こんなに買って平気かな?」荷物超しにジャンクが言った
「まあダミー会社名義の個人飛行艇(プライベート航空機)だからな、これくらいの荷物は大丈夫だ、操縦はオレがやる、空軍で操縦は覚えたからな」
「兄キは何でもできるんだなあ」
準備が整いJJたちは洋々と車で出た。

-車内(運転中)-

買ってきた缶コーヒーを片手にジャックが言う
「いいか、公海まで飛んだら航路を外れ太平洋上に着水、水中にピンガーを発射、そうすれば近くにいる組織の潜水艦が浮上してくる、という寸法さ」
「警察もまさか海から、しかも水中から逃げるとは思わねえよな」と運転手のジャンク
「まったくだ」  
「ひゃひゃひゃ」
笑いあうJJブラザーズ

その時・・・

コンコン・・・
「んっ、何だ?」
走行中の車道側斜め後方窓を叩く音がする・・・
「コンコンって・・」ジャンクは速度メーターを見る、
「時速45km?(法定速度内)だぞ?」
「そーれっ!」ガシャン
「うおっ!」
後ろの窓ガラスが割れ、そこには見覚えがあるハイカラ姿の女学生が、ガラス割りハンマーを手にとり、ほほ笑んでいた・・・
驚きのJJブラザーズは声も出ない。
「ごきげんいかがどすかー、お二人さん」なぜか京都弁で言う撫子
「お、おまえは・・・さっきの女学生!なぜここに?」
「くそぉ、速度を上げろ、ジャンク」
「ちいっ・・」アクセルを踏むジャンク
円タクの速度が上がり、撫子の顔はたちまち窓から消えた。
「兄きぃ何なんだよこれは・・・ひいっ!」
バックミラーを見たジャンクは悲鳴をあげた、今度はリヤウインドウに笑顔の撫子が両手を振っているのが見えた。時速は50kmを超えているのに
「あの女、バイクで追ってきたのか?」とジャック
「ちがうよ、両手ふってるよお、それに何かに乗ってる高さじゃないよ、怖いよ兄きぃ」
「・・・・」助手席から身を乗り出して後ろを見るジャック
「は、走ってやがる・・?」
ジャックは驚愕した、女学生はバイクにもロボ力車にも乗らず、ただ走ってくるだけで50km以上の自動車に追いついてきつつあるのだ。
「ジャック兄ぃ、お化けだ、日本のお化けだあ!」
「落ち着け、あれはそんなんじゃねえ、あれは・・・」

(あし)のアシスト機能ブーツ(跳躍半靴)は俊足モードにもなるのよね、うふふ・・一歩がムホーマツより長いわ、速いわ!」
雲ジイ「駄洒落かのう」
撫子 「今はやりの『えすぷり』と呼んでちょうだい」
雲ジイ「調子にのってるとバッテリーが切れるぞい」

「路地へ入れ・・」ジャックは叫ぶように命令した
「ジャンク、運転交代だ、サブマシンガンはあるか?またあの女が来たら撃て!」
その一言で、我に返ったジャンク、
「撃っていいのか!うひょーあるぜ、川へ捨てなくてよかったぜ、まかせてくれ兄きぃ」
ジャックはリヤシートから回って運転席に、ジャンクは横へずれて助手席に、路地なのでドアを開けずに素早く交代した。

「ブルー衛星が来たぞぃ、JJブラザーズは路地へ入った、また向かってくるコースじゃ」
「了解、どっちから来るの?」
その時
「ヒャッハー、見つけたぜこのアマァ」
ブォン・・と角から突然あらわれた黒い円タク、助手席からの銃口がのぞく・・

-銀行-

フラフラと歩いてくる鈴木刑事
「ひぃひぃ・・やっと吉田警部の説教から解放された・・しかし、このままでは始末書、減給、降格の三連コンボが待ってる、何としてでも犯人を捕まえなければ・・」
「でも、どうしよう?ううー」
頭をかかえる鈴木刑事、とそこへ先ほどの巡査長がやってきた。
「鈴木刑事、たった今、墨田区のコンビニのカメラにJJブラザーズらしき二人組が映っていたとの情報が・・」
皆まで聞かずにとびつく鈴木刑事
「本当か?」
「ま、まだ確認はとれてはおりませんが・・」刑事の勢いにタジタジの巡査長
「時間からみて、まだそう遠くへは行ってないだろうな」
「そ、そうかもしれませんが、偽情報の可能性も・・」
「どうでもいい、すがるワラがあるならそちらを取る、早くしないと逃げられるだろ!」
「というわけでGOだ!すぐに現場に行くぞ!GO,GO」
と、走って行ってしまう刑事。
(やれやれ、また警部に叱られるかもな)ため息をつく巡査長だった。

-下町の路地-

「ヒャッハー、見つけたぜこのアマァ」
叫ぶジャンク、と助手席からの銃口がのぞく・・
「きゃあ!」それを見て、思わず着物袖で顔を隠す撫子。
「遅え!死ねや」

ガガガガガガ・・・キュンキュン
薬莢が飛び散りマズルから炎が広がる、動きを止める女学生・・

ジャック「至近距離だ、ハチの巣だな」
ジャンク「手間かけさせやがって、ペッ・・」消炎たなびく銃口を引っ込めるジャンク
バックミラーを見て運転を続けるジャック、女学生は路上に倒れている。
「よし、さっさとズラかるぞファーストアウトだ!」
走り去る円タク

「ふうーっつ、びっくりしたわ」
ムックリと起き上がる撫子、パタパタと着物のほこりを叩いて落とす
「何をしてるんじゃブルー、危ないマネして!間抜けじゃぞ!」
曇ジイにしては言葉が悪い
「ごめんなさい、油断したわね」
「大丈夫か?ケガは?」
「平気よ、追うわ!」

-車内-

なぜか重苦しい空気の車内、運転中のジャック
ジャック「もうすぐだ、もうすぐ港に着く…」
ジャンク「兄きぃ、オレはなんかイヤな予感がする」
ジャック「オマエちゃんと撃ったんだろ?」
ジャンク「撃ったよ、手応えもあったよ…でも何か、実在するお化けだったらと思うと…」
ジャック「お化けは実在しないからお化けなんだろ、変なこと言ってんな!」

ガシャン、いきなり運転席の窓が割れ中に破片が飛ぶ、と同時に火のついた発煙筒が車内に投げ込まれた、
「うわああぁぁ・・」
「な、なんだあ・・ゲフンゲフン・・」
車内は煙に包まれた
「本日、二度目のごきげんいかがどすかーお二人さん」
煙の中から、長い髪の女がのぞく、

「ギャアアァァ・・」二人は悲鳴を上げた

言っておくが今は時速50㎞(法定速度)で走っている最中なのだ

雲ジイ「ブルー、さっさと決めんか、もうバッテリーが持たん!」
撫子 「ハイハイ、わかったわよ、じゃあ、ハンドルはあっちへ・・」
一瞬のスキに撫子は、ジャックの持つ車のハンドルをグイっと奥へと回す・・
ジャック「や、やめろー!!」

跳んで離れる撫子、円タクの目の前には柱が・・

キキッーーー・・・どがしゃーん
ぷしゅ(エアバック作動)
車の前部はひしゃげ、フロントガラスは粉々になる、大破ではないが中破壊である。

ジャック「ハラホレ・・・」
ジャンク「ヒレハレ・・・」
ぼろぼろになったJJブラザーズ
ジャック「こ、これが日本の・・・電柱というものだ・・」
ジャンク「下町にしかないやつだなあ」
JJブラザーズは、エアバックが作動したので大ケガはしていないらしい、だがドアにはにぶつかったらしく、ジャックはメガネが割れ額から少し出血していた、おまけに何かに挟まったらしく動けない。

女学生が壊れた窓から覗きこんでいた(ちょうどバッテリーが切れたわ)
撫子「あらあら、大丈夫?でも額の出血はたいしたケガじゃないのよね」
  「こんにちは、金融専門犯罪コンビのJJブラザーズさん」

ジャンク「ヒー・・!」
ジャック「き、キサマは、一体何者なんだ!」叫ぶジャック
撫子  「それは・ひ・み・つ、なのよ」
ジャンク「アホか・・・」
撫子  「でも警察…って言っていいのかしら?中の人よ」
ジャック「やっぱり、キサマは特殊部隊の…?」撫子を指さしながら言う・・・

ガシャ、チキチキ、いきなり手に何かハメられ、すかさずハンドルとを繋がれるジャック

撫子「炭素繊維手錠よ、鉄より強いから切れないわ」
ジャンク「オマエ、撃たれたはずじゃ・・・?」
撫子「この着物はスーパーアラミド・ケプラー繊維の多層織なの、9ミリ弾くらい軽く防げるのよ」
言いながら、女学生は今度はジャンクのマシンガン弾倉(マガジン)を器用に外し振袖に入れた、かわりに2個目の発煙筒に火をつけジャンクのサイボーグ腕の隙間に投げ込んだ。
ジャンク「「やめろ!熱くはないが熱で電子部品がオシャカになるだろ!」
撫子「だからやるんじゃないの!」(あほちゃうか)

モクモクと車外から、煙が出てきた、何かに引火したらしい

撫子「うふふ・・ちなみにこの車、水素車でしょう?早く脱出しないと水素タンクに引火して・・」
ジャンク&ジャンク「わぎゃあ!」
撫子「なーんて、ウソ、水素吸蔵合金だから爆発なんてしないわよ、ガソリン車だったら今ごろ炎上してるけど」
「道路や繁華街の監視カメラに映らないと思ったら川を使うとはなかなかやるじゃない、でもおかげで目的地の予想がついたわ」
「テロリストは手近な所から逃げるもの、隅田川飛行艇港は一番近い国内線だけど、海へ出たら海外ルートでもあるわよね、そして港へ続く道はここしかないからすぐにわかったわ」
(でも本当は近くのコンビニに寄ったから場所がわかったんだけどね、店内カメラに映ってたし)
ジャンク「ぐぬぬ・・・」
ジャック「オイバカはずせ」がちゃがちゃ

雲ジイ「撫子、急ぐんじゃ人も警察も集まって来よるぞ、衛星から確認した」
撫子 「警察って今頃来たの?役にたたなかったけど・・」
雲ジイ「そんなことはどうでもいいわい、早うせい」
撫子 「はいはい」

撫子「では失礼いたしますJJさん方、もうすぐ警察の皆さんがいっぱいやって来るから大丈夫ですわよ、まあ最近は日本も犯罪者には厳しいらしいけど」
「じゃあねーチャオチャオー」と言いながら女学生は消えた。

-現場-

JJたちの車を囲む警察隊、鈴木刑事はパトカーの上に腕を置き、無線を片手に頭を抱えていた。
「ええ、犯人たちは捕らえました、JJブラザーズは隅田川飛行艇港へ向かう途中の路地で事故を起こしてまして・・・詳しくは報告書で」
巡査長「鈴木刑事、犯人たちは、お化けに襲われたとか特殊部隊だとか、わけのわからないことを叫んでおります」
鈴木刑事「事故による一時的な精神錯乱状態だろう、武装解除して警察病院へ入れろ」
巡査長「えーっと、ですが武装解除はすでに済んでおりまして、手錠にもつながれていたのですが・・」
「細かいことは気にしなくて良い、上には自分が報告するから、犯人確保を急げ」
「はあ?了解しました」
二人とも何か解せない部分はあるものの、結果的に銀行強盗は捕まえられた事を優先した、過程は後から調べれば良いと思ったのだ。
鈴木刑事「急げ!吉田警部が来るまえに結果を残すぞ、とにかく犯人は捕まえたんだ」

-下町外れの道-

ムホーマツが引く車に乗っている撫子、
雲ジイ「通信が切れた場所とGPSから銀行はわかったが、衛星バックアップじゃったので間に合わんかった、だからケイマン島のほうの支店を遮断した。ケイマン諸島のトヨアシハラ支店からはGFPの電脳部がジャミングしたから、そこから先へはいってないはずじゃ・・」
撫子「ケイマンのほうを止めるって?さすが世界警察ならではね」
撫子はちょっと感心した
雲ジイ「残した手錠から足はつかんのか?」
撫子「炭素手錠は日本国内で使われている一般的な装備よ、警察関係者だと思うでしょうね、
まあ誰かはずっとわからないけれども・・・」

トゥルルルル・・・(突然、携帯が他の着信をした)撫子が切り替えると、慌てる女性の
声がした
電話「撫子さん!今どこにいるの?今日の最終授業がはじまってしまうわよ」
撫子「ごめーん、()―ちゃん代返お願いね」
電話「えっ、声紋認識なのにどうやって?」
プツッン・・・
何事もなかったかのように携帯を切り替え、再び雲ジイと話す撫子…と突然言う

「今思い出した!あの、ほら昔の大衆庶民文化の頃の別名?」
「なんじゃいきなり、大正浪漫(ろうまん)・・時代のことか?」
「そう、浪漫の時代・・・浪漫時代よ」
別に大正時代じゃなくっても、庶民文化が花開く時代はみんな浪漫時代じゃないかしら?
バナショウさんも言ってるわけだしぃ」
「バーナード・ショーはそんなこと言っとらんわい!」
雲ジイのカミナリが飛ぶ。

エッホ、エッホ、エッホ・・・
一台の人力車は暮れはじめの空の下、下町の路地を颯爽(さっそう)と駆けていった。

                         第1節【銀行騒動】終わり
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登場人物紹介


大和撫子(おおわなでしこ)
17歳 出身地-京都

この物語の主人公。この春、瑞穂学園の編入試験にパスし京都から東京に出てきた美少女

親せきの大おじの家に下宿させてもらっている。実家は旧家で格式ばった厳しい家だったらしく、その反動から東京ではハメをはずしっぱなしである。性格は明るく活動的(言い変えればジャジャ馬)思いこんだら即実行するタイプ




ムホーマツ(WE45_HO-MM2)

人力車牽引ロボット〔45年製〕万能タイプ、ハンダオートマトン株式会社マルチタイプモデル2という意味

撫子が所有する個人用人力車の車夫である人型ロボット。ロボットが引くので“ロボ力車”とも呼ばれる。地上でしか使えないが、移動には便利なので重宝する。最高速度は時速30km(それ以上出ないようプログラムされているはずだが、撫子はリミッターをはずしている)アルコール燃料で電動部は燃料電池&太陽光で補う、俥の部分と分離できるので万能タイプといわれる



JJブラザーズ

ジャックとジャンクと呼ばれる二人組みの犯罪者コンビ国際指名手配(わるいやつ)リストDクラス、常にコンビで行動、黒服、黒帽子サングラスを着用、通称ブラックメン、主に金融犯罪を得意とする。ジャックの方は軍隊経験者



鈴木刑事

フツーの警視庁のフツーの刑事、中肉中背、視力体力→平均、身体能力→標準、顔→フツー(自称ややイケメン)苗字も一番多い「スズキ」、可もなく不可もなく・・(もうやめてくれー!本人)



吉田警部

警視庁でノンキャリで叩き上げできた警部、現場主義&実力主義者だけど、身だしなみには厳しいタイプ。身体も大きい、こわいけど部下の信頼は厚い、でも警察上層部からは煙たがられている、まあどんな組織でもそういうものです



矢部総理大臣

歴代長期政権の一つである日本の首相(誰かに似てるかもしれないけど気のせいです)問題はあったけど、雇用と株価を上げたのは紛れもない事実。アイコンがあってよかった!そもそも問題のない首相なんて今までいたっけ?だからこれで“いいんです”(川平ふう)



大泉議員

衆議院議員、将来有望な若手のホープ、のちに環境大臣となる、俳優の兄弟がいる(誰かに似てるかもしれないけど別人ですよ)干されたり落ち目の時期はあったけど、政治家なら皆な通る道、数十年後は世界大統領になれるかもしれないし、なれないかもしれない。


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