第45話  遠方組の集まり 3

エピソード文字数 3,356文字

 ※


 遠方組が向かったのは、駅前にあるショッピングモールの二階。エスカレーターを上るとすぐにゲーセンが見えてきた。


 クレーンゲームがずらりと見えてくると、白竹さんが我先にと向かっていく。

へぇ~こんな場所にあったなんて
僕も最近知ってね。結構広いでしょ

でかいゲーセンがあると言ってた染谷くんの言う通りだ。

ここからだと家まで二十分ほどか。そんな近くにあるなんて、流石都会である。


こりゃ凛も連れて来たらきっと喜ぶだろう。

魔樹! 魔樹! ちょっと~~! こっちでし! 見てください~!
 名だしされた魔樹はささっとおねーちゃんの元へ急ぐ。

 どうやら白竹さんがクレーンゲームに挑戦中だ。



 商品は……高級っぽそうなフィギュアだな。

 でかい箱に入ったタイプで、今しがた魔樹が失敗していた。


これは難しいね

 愛想笑いを見せる魔樹。

 当然俺じゃなくて聖奈に対してだぞ。

あら。これって、アルフレッドじゃない?
ウワサをすれば、こんな場所で所狭しと並んでやがる。
これは難しいね。店がボッタくろうとする気満々だ。
ダメだわ。全然取れないじゃない

 聖奈も挑戦するがダメだな。アームの力が弱すぎる。


 そんな時、染谷くんが名乗りを上げる。

ちょっと離れてて

 言われるがまま台の近くから離れる遠方組。

 そして染谷くんは、周りをキョロキョロしながら、クレーンゲームの側面を蹴り上げやがった。



 ガコンと鈍い音がすると、ブザーのような音が鳴り響いた。


 ちょ! そりゃダメだろ染谷くん。

 すぐに店員が来るぞ。と言ってる間に店員がこちらに向かって来る。

あぁ、すいませんね。よろけちゃって台にぶつかっちまって
 ニコ顔を見せる染谷くんだったが、何故かその店員の肩を持つと、そのまま一緒に何処かへ行ってしまった。
大丈夫でしょか……

 白竹さんも心配そうな顔になると、わりと早く染谷くんとその店員が帰ってくる。


 何を話していたのかは気になるが、戻ってきた店員はそのフィギュアの台を開けると……



 なんと。めちゃくちゃ落ちやすそうな位置にフィギュアを配置してくれたのだ。

ああっ。これなら取れまし!

 目が輝く白竹さん。アルフレッドが手に入るのも目前だ。

 すかさず自分でアームを操作すると、楽勝でアルフレッドをゲットするのであった。

わ~い。ありがとぉです!

 やっぱり白竹さんも女の子ですねぇ。アルフレッドは毎回キャラ投票で一位ですし、彼は俺様キャラを極めてますからね。


 しかもすんげー嫉妬するんだよ。まぁそこが可愛くていいんだけど。


 白竹さんはそーいうキャラも好きなんでしょうか。  

 などと思っていると……

あにょ。もう一つよろしいでしょうか?
どうぞどうぞ白竹さん。もっかいアイツ呼んで来ます

 彼女が指差すのは、予備に置いてある場所にいるニコラだな。


 他のキャラはまだ沢山あるけど、ニコラだけは人気なのか、一個しか無いし。

か、彼が。彼が本命というか……

 だそうだ。白竹さんの好みはそーいう癒し系な人が好きなんですね。


 とにかくひたすら可愛いニコラ。

 母性本能くすぐりまくりで、俺ですらポケットに入れて持ち運びたいキャラである。

すみませ~~ん。商品補充してくれますか?


 染谷くんは先程の店員を連れてくると、あと一つしか残っていないニコラを出してくれると、さっきと同じように取り易い配置にしてくれた。



 どうでもいいけど。店員さんの顔がさっきから真っ青なんだけど……染谷くんは一体どうやってサービスしてくれるように言ったのだろうか。

うはっ! ニコラさんゲットわ~~い!
アルフレッドについでニコラを手に入れた白竹さんは大喜びだ。
僕が持っておくよ
はぁい~~お願いします

 荷物持ちと化した魔樹だったが、白竹さんが笑顔を見せているのが嬉しいのか、あいつも微笑を浮かべてやがる。



 そう思っていたのだが……

 

 

美優。ありがとぉ!

今の私が欲しいっていう訳にはいかないから……



 まさかとは思うが……

 お前が欲しかったっていうオチは止めてくれよ。


 だけど……ニコラのキャラソン歌えるんだから、ありえるかもしれん。


 不思議君だからな。魔樹は。



 ※

ねぇ。これ。取れる?

 聖奈が指差すのは、五十センチくらいの巨大なクマのヌイグルミだな。


 あ、これ知ってるぞ。ラインのスタンプにある奴じゃねーか。

 聖奈はこのシリーズを俺によく送りつけてくるからな。


 こいつもこんなヌイグルミが欲しいとか、可愛い所あるじゃないか。

う~ん。これはかなり厳しそうだ

 と染谷くんが言ってる間に、既に三回ほどミスった聖奈は徐々に顔色が変わっていく。もちろんエキサイトな方向に。




なによこれ。全然取れる気がしないわっ
さっきの店員呼んでくる
別にいいわっ

 確か……こういう大型のUFOキャッチャーって、上限が設けられてたりして、ある程度金を突っ込まないと取れない仕組みになってるんじゃないか?

 黙々とクレーンを動かす聖奈だが、千円ほど突っ込んでも取れる気配がない。

 

 そして聖奈はちょっと電話と言いながらゲーセンの外へと出て行ってしまった。

美神さん。怒ってたよね?

 逆に染谷くんが気を使ってる始末。

 

 俺はそんな事は無いとハッキリ言うと、この状況を打破するのは俺しかいないと思ったので、ゲーセンの外へ出ようとすると、同じタイミングで聖奈が戻ってきた。

どうしたんだよ。俺が取ってやろうか?
もういいのよ。気にしないで

 ん? 何だか不敵な笑みを漏らす聖奈だったが、何だか良からぬ事態が起こりそうなんだが。


 そう思っていると……




 俺達の元にゲーセンの店員が三人ほど集まってくると「美神聖奈さんですか?」とか名だしで言ってくる。

私ですけど
聖奈は丁寧な口調プラス万遍の笑みを浮かべる。
少々お待ち下さい

 そういったのは店員さんでもえらく年配さんだな。名札を見ると店長と書かれている。そして……



 先程まで金を突っ込んだクレーンゲームのクマのヌイグルミを取り出した店長は「どうぞ」と言いながら、聖奈にヌイグルミを手渡したのだ。




 「え?」と声に出したのはその場にいる全員だった。

ちょっと。袋に入れてよ。こんなの恥ずかしいじゃない
 聖奈のクレームに迅速に対応する若手店員。大き目のビニール袋を持って来たのはいいのだが、
あ、美優もいる? もう一個頂戴
は、はいっ!

 白竹さんにもヌイグルミが手渡されると聖奈は小さい声で「ありがと」と声を掛けると、その店員達は十倍以上の音量で「ありがとうございます」と返してくるのだった。



 その一部始終を見ていた遠方組。

 当然何をどこから突っ込んでいいのか分からない状況だった。

聖奈お前。何をした?
別に。大したことないわ。ちょっとこれ持ってて

 そう言いながら、俺にクマを渡さないでくれる?



 まぁでも……こいつが何をやったのかはある程度予想は付いてる。これは昔、ちっちゃい頃にも見た事がある光景だからな。


 何が何でも欲しいものは必ず手に入れる。


 「お金持ち」である聖奈は、そりゃもう散々喚き散らし、平八さんを困らせた後、何処かに電話すると、不思議と聖奈の欲しいものが手元に届く魔法のようなものだった。



 俺から言わせれば「欲しい~~!」と駄々こねて仰向けに寝転がらなくなっただけマシだと思うのであった。



 まぁ何が言いたいのかと言うと、聖奈は色々と規格外な人間なのである。

 この辺は大して変わっていないぜ。


なによ
いや、お前のそーいうところ。昔と変わってないな、って思って
 あ、やべ。つい口が滑っちまったというか……怒られる。そう思ったが、
ふ~ん
 あれ? 何で笑顔なの? しかもめちゃ嬉しそうだし。

 変わっていない。そう言われて喜ぶのは、一体どういう意味なのだろうか。


 ま、まぁいい。何だかご機嫌っぽいのでそのままにしておこう。



 聖奈の謎スキルが炸裂して、何とも言えない空気になったが……


 染谷くんが急に「あ、そうだ」と閃いたらしい

黒澤くんっ! アレやろうよ。

 染谷くんが指差すのは……ガンシューティングぽいゲームだな。

 

 ちなみに彼は本当に空気が読めると思うんだ。

うん! 俺もやる。みんなでやろっか!
あひ! うんうんっ! やりますっ!

 さぁ今度は銃でバンバンやりましょうか。


 時間を見ればまだ三時過ぎ。遠方組の集いは中盤戦へと突入するのであった。

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登場人物紹介

キャラのプロフィールは、章の始まりにも記載しています。


ここに記載されているのは主要人物です。

その他の登場人物は章の始まりなどに記載しています。


読者視点は神視点。

物語の中の人達が知らないことを全部見る事ができます


また、二章からはキャラの心の声まで聞こえます(フキダシが灰色)

 ★ 黒澤 蓮 くろさわ れん


 本編の主人公。高校一年


 男女入れ替わり体質。
 
 弟の凛と共に、新天地で新たに生まれ変わろうと、楽しい学校生活を送ろうとする。友人作りに重きを置き、人との付き合いにはとても慎重である。


 とても弟思いの良いお兄さん(お姉さん)

 ★ 白峰楓蓮 しらみねかれん


  蓮の女性の姿。白峰というのは偽名。

  黒澤家とは繋がりを見せないように演じる。


  心の中は男の子なので、女の子のファッションやらに興味が無い。

  とても美人なのにあまり自覚がなく、女性の姿はオマケだと思っている。

 ★ 黒澤 凛 くろさわりん


 小学校六年生


 男女入れ替わり体質。

 

 兄である蓮を慕い、とっても素直で女の子のような性格。
 ことある毎に兄に甘えてしまい、いつまで経っても、子供のままなので、蓮は凛の将来をとても心配している。



 ★ 白峰 華凛 しらみねかりん


 凛の女性の姿。

 外部との接触が無いので、彼女の存在を知るのは家族だけ。

 楓蓮と違い、おしゃまさん。


 ★ 美神聖奈 みかみせいな


 高校で蓮と同じクラスとなる。実は小学四年生までの幼馴染。


 容姿端麗。成績優秀。運動神経抜群。リーダーシップ抜群。お金持ち。

 など、全てを兼ね備えている人。


 二人目の主人公。

 ★ 白竹 美優 しらたけ みゆう


 蓮と同じクラスとなる。ピンクの髪が目立つ美人。

 自分の家の喫茶店で働いており、メイド服で接客をこなす。


 学校と喫茶店では、雰囲気がまるで違うのには理由があり……

 

 三人目の主人公。 

 

 ★ 白竹魔樹 しらたけまき


 蓮の隣のクラス。美優は双子の姉弟。


 学校ではとてもクール。喫茶店では男の娘?

 双方を知る蓮にとっては、非常に疑問な人物。


 四人目の主人公

 ★ 染谷龍一 そめやりゅういち


 蓮と同じクラスとなり、前の席という事で付き合い始める。

 わりと積極的。学校ではいつも笑顔で誰にでも優しいが……

 

 五人目の主人公

 ★ 平八 へいはち 


 聖奈専属の運転手。

 黒澤家の秘密を知っており、蓮の親である麗斗(れいと)とは旧知の仲



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