第1話

文字数 362文字

人間関係は水とか風のようなものだ。常に流動しており一定ではない。ゆえに、誰それが去っていったからといって嘆き悲しむ必要はないのだ。どうせみな、すぐに死ぬのだから。

と、言ったのは鴨長明だったかと思う。頭では理解できても、前川莉奈は吹っ切れないでいた。

前川莉奈に、橋口謙司からメールが来たのは6月末のことだった。

「別れよう。ごめん」

莉奈は謙司と同じ職場の、誰もが認める仲の良いカップルだった。付き合い初めて1年、熱々ぶりは今年に入っても健在だったが、コロナ渦で3月末からリモートワークになってから、様子が怪しくなってきた。

莉奈がラインを送っても謙司の返事は2~3日経ってからだったり、まったく返事が来ない日が増えた。また、以前は頻繁に交わしていたWebカメラにも、忙しいなど理由をつけて、謙司は出なくなった。
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